日本の気配 増補版 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 190
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480437594

作品紹介・あらすじ

「個人が物申せば社会の輪郭はボヤけない」。最新の出来事にも、解決されていない事件にも粘り強く憤る。その後の展開を大幅に増補。解説 中島京子

感想・レビュー・書評

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  • 「気配」、いわゆる「空気」よりも曖昧で捉えどころのないもの。外国語には、同様の単語あるいは表現はあるのだろうか。英語の辞書で調べたら、”sign" "indication" "touch" とか出てきた。いま一つしっくりこないかな。ちなみに、この本でも取り上げられていますが、安倍元総理と違いホントに辞書引きましたから。

     この本は、単に単行本を文庫化したものではなく、刊行時からの経過をふまえて増補している。コメント的増補なのだが、読んでて面白い。「察知すべき気持ちの悪さ」がこの本の通底するテーマとある。そう、何か気持ち悪いのだ。読んだ後、じゃあどうしたら良いのかは、読者の「自己責任」で判断すべし。それから、「あとがき」のほうが著者の本音が素直に出ているようで面白い。

  • そう言えば、安保法制について初めて耳にした時、こんなものが成立したらやばい、と怖さを感じたはずなのに、いつのまにかその感情を忘れ、「右から左へと受け流してしまった」。
    武田さんはそういう無関心あるいは怠慢を許さず、とにかく怒る。
    つい世の中の空気に沿って動いてしまうけど、力のある人達に人生をいいように支配されないためには、各自もっと自分の感情ファーストで、ムカつきをしっかり発信していかなければならないのかもしれない。
    本書は、現代の問題を分かりやすくピックアップしているけど、自分はどう思うかをよく考えず、本の内容に引きずられてしまうことも危険だと思った。頭を使わなくては。

    あと、この本を読んで改めて政治家の失言酷すぎと思った。
    政治家自身が、自分も人間だから愚かな真似をすることも、わからないこともあるという意識を持つことが必要なのでは。
    偉そうにせず、もう少し国民に意見を求めてくれたら、助け合えるかもしれないのに。

  • 終わってみれば、ほぼいつも通りの結果だった衆院選。いつも通りだいぶガッカリしながらも、せめて部分的に良かった結果を拾っては自分を慰めてみる。投票に行かなくても、とりあえず今の状況が大きく変わることは無いんだろうし、みたいなのも一種の気配なんかな。声が大きいだけで、実際には何も語っていないんだけど、何となくそれでよし、みたいな気配に、結局支配し続けられるしかないんかな。そんな中でも、武田さんの声が一人でも多くに届けば、少しずつでも変わっていくんじゃないか、って期待を持ちたくもなるんですけどね。

  • 星五つは著者が嫌がるかも知れない。
    忖度するのにうんざりしている昨今。あぁ自分は自分のままでいよう。と、勇気付けられる。

    コミュニケーション能力が有ると自分では思って来たが、どうも最近のコミュ力と呼ばれるモノは自分が思うコミュニケーションの力のことでは無いらしいと気づく。
    最近の書店に積まれている本のタイトルを見る。
    話すのが上手いヒト。ロンリ的に話すヒトが優秀らしい。話すのが苦手な人は無能だと思われるらしい。
    批判的に事物を眺め、変なことを変だと言える事の大切さを感じる一冊でした。

  • 2023.10.13. 蔦屋書店熊本三年坂店にて購入。

  • 100分で名著で解説をしていた武田さん。面白い人だなあと思い、著作を購読。言葉(発言)って、その人の本質的な部分から出てくるものなので、どんなに取り繕っても正体が見えるものだと実感。だとすると、政治家や上司など権力者だけでなく、身近な人の発言にも、もっと敏感になるべきなんだろうと思い直しました。言葉って大事なんだなあ。

  • しばらく武田砂鉄さんの本はもういいかな、と思うぐらい堪能笑 あらゆる事象を鵜呑みにせず、まず疑い、考え、発信するパワーがすごい。
    個人的には、稲田朋美の章が爆笑。

  • 「気配とは何か。周囲の状況から何となく感じられるようす」、この「何となく」を作り出しているのは誰か。「国民の声」と言いながら、多くの国民の声をその場から排除する宰相とその周辺、そしてそれに追従するマスコミ。
    あいまいな日本の心性を再稼働させているのは「空気」ではなく「気配」ではないかと・・。

    政治家の街頭演説中に異議申した市民がその場から排除されたり、それを報道しないマスコミ、いま、出ていくべきと判断すれば前に出て、劣勢と判断すれば一歩く自分のポジショ似んグを第一に考える小池さん、そのパフォーマンスに付き合わされ、逆に活用されるがままのテレビ。
    憲法改正に賛成ですか反対ですかの二択で問うのがおかしくて、そのままでいいよ、と言うのは決して無責任ではない。小説家の赤坂真理さんは、現憲法は「『もらったものだけど、美しく、精神的な支えになっていました』と言えばいい」と言う。
    新型コロナウィルス感染が拡大する中で、医療従事者、スーパーの店員、清掃員、公共機関の従事者などエッセッシャル・ワーカーの存在がクローズアップされ、必要不可欠な仕事とは何かと議論される流れにもなったが、賃金の改善とか抜本的に改善されることはなかった。

    ニュースとワイドショーの際が無くなったというより、すべてがワイドショー化してしまっている。解かりやすくといいながら、視聴者を馬鹿にしたように考えることを最初から排除してしまっている。

    そんなことを、立ち止まって、色々と考えさせてくれる一冊でおます。

  • 作者は事あるごとに憤っている。
    ちゃんと憤れ!反発しろ!それをしなければ気配に飲み込まれる。いまただよっている、もしくは誰かによってただよわされた気配のまま進んでいくぞ、と言う。
    無関心、無気力に私たちの世代あたりはおかされているんじゃないかな、と思う。少なくとも私は、政治とか社会への関心はかなり低い。そして、個々の趣味とか、小さいコミュニティの中で過ごすことに情熱を注いで満足しているんじゃないかな。
    憤ることはしんどい。楽しく穏やかに過ごしたい。
    きっと身近に危機を感じるときしか、政治への反発は起きない。
    それじゃだめんなんだと作者は警鐘を鳴らしている。

  • ムカつくものにムカつくと言うのを忘れたくない。
    個人が物申せば社会の輪郭はボヤけない。
    個人が帳尻を合わせようとすれば、
    力のある人たちに社会を握られる。
    今、力のある人たちに、自由気ままに社会を握らせすぎだと思う。

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著者プロフィール

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年ではラジオパーソナリティーも務める。
『紋切型社会――言葉で固まる現代社会を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞などを受賞。他の著書に『日本の気配』(晶文社、のちにちくま文庫)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。

「2022年 『べつに怒ってない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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