ドライブイン探訪 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
4.24
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本棚登録 : 204
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480438171

作品紹介・あらすじ

全国のドライブインに通い、店主が語る店や人生の話にじっくり耳を傾ける――手間と時間をかけた取材が結実した傑作ノンフィクション。解説 田中美穂

感想・レビュー・書評

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  • 祝・文庫化!えっ?倉敷蟲文庫の田中美穂さんが解説書いてるの?沖縄に新しくできたドライブインが、新たに追加されてるの?そうか‥‥、えぇい!今度旅する時の候補選びの参考に買っちゃえ! 

    ということで、詳しくは2019年5月の単行本のマイレビューを!

    ここからは蛇足的に私の思いを‥‥。
    倉敷市と岡山市の間の国道2号線に、長い間燦然と経営していた「平田食事センター(早島町)」が閉めてからもう7年は経った。おそらくもう本書・増補板では扱ってもらえないと思うので、思い出話を。「トラック野郎一番星」でもロケ地に使われるほど、トラック運ちゃんには有名店だったし、ちょっと古いゲーム機がたくさん置かれて中学生の不良デビューにはちょうどよくて、年寄りと若者のカオスな雰囲気が詰まった場所だった。ここの自動販売機は最後まで100円コーヒーを売り続けた。名物料理はおでんやラーメン、牛丼などの基本料理。皿をとって、清算する。瞬時に会計する名物おばちゃんもいた。1番最初にきたころから、おばあちゃん顔で、いつもそこに立っていた。ほとんど歳を取らないかのように、立っていたのだ。もうない。私のクルマ通勤の時代をまるまる受け止めてくれた。何冊ここで飯を食べながら本を読んだろう。そのまま家に帰りたくない時の深夜のオアシス。コンビニに押されて、そういう店は、私の周りからなくなった。

    書いて見て気がついたけど、ドライブインはオアシスだった。コンビニでは代替できない。

    今春三次の遺跡巡りをしたときに庄原市でミッキードライブインという所で昼食を取った。牛乳が副菜に出てくる珍しい定食を出していて、この本に必ず載っているだろうと思っていたら載ってなかった。この店は流行っていた。地方は、街の郊外と「時間の流れ方が違う」。頑張ってほしい。

    田中美穂さんは、解説で、ドライブインを取材して書く橋本さんの仕事をこの言葉で代表させる。
    「僕にできることは、消えゆくものを惜しむことでも、終わってしまったものを愛でることでもなく、声を拾うことだと思います」
    そして美穂さんは、このように応えるのである。
    「百年後には橋本さんも私も、ここに登場されている方々も、もう誰も生きてはいない。でも古本屋という仕事柄、こうして丁寧に拾われ、留め置かれた言葉が、ひょっこり遠い未来の誰かの目に触れることがあるいうのを実感してきた。楽しみだなと思っている」

  • 橋本倫史『ドライブイン探訪』ちくま文庫。

    全国各地のドライブインに実際に通い、時間をかけた丁寧な取材により描かれたノンフィクション。昭和、平成、令和と時代が変わっても生き残り続けて欲しいドライブイン。

    昭和のモータリゼーション成長期にあちらこちらで普通に見られたドライブインもコンビニやチェーン店の普及で数を減らして来た。

    かつては日曜日の楽しみというと家族でドライブして、夕食に国道沿いのドライブインでラーメンというのが定番だった。

    また、地方ではドライブインで結婚式の披露宴を行うなんていうCMも流れていた。

    本書に紹介される日本全国の特徴あるドライブインも次第に絶滅危惧種となりつつある。沖縄県のアメリカンスタイルのドライブインは映画『ビッグウェンズデー』の冒頭に登場するカフェ・ダイナーみたいな感じだろうか。

    本書にも紹介されている福島県二本松市の二本松バイパスドライブインには何度か足を運んだが、24時間営業でメニューの豊富さに驚かされる。しかも、風呂にも入れて、ゲームコーナーまであるのだ。

    以前は岩手県に暮らしていたのだが、ドライブインの生存率は福島県の方が圧倒的に高いように思う。奇しくも昨日、福島県矢吹町の国道4号線沿いにある朝日ドライブインで昼食に肉野菜炒め定食を食べた。ここは何でも美味しくて、盛りも良いのだが、取り分けナポリタンが美味い。ここ数年食べたナポリタンの中ではピカイチである。

    本体価格900円
    ★★★★

  • ロードサイドでよく見かけるドライブイン。戦後の昭和期に花盛りとなったが、今は衰退の一途。著者は、そんなドライブインを訪ね、話を聞き集め、日本の戦後史に触れてみたいと考えた。ドライブイン巡りを始めたのは2011年、以来、200軒近い店を訪れた。そこで特に印象深かった店を再訪し、話を聞かせてもらってまとめたのが、この「ドライブイン探訪」である。企画・取材・制作を一人で手がけただけあって、著者の熱量が伝わってくる内容となっている。
    ここで取り上げられている店は北海道から沖縄までの22軒。店主からの取材で見えてきた戦後日本の歩みについて印象的なものを以下に列挙する。
    ・80年代、北海道にはバイクで旅する「ミツバチ族」という若者が集まった。そのころは周遊券切符で低予算の鉄道旅をする「カニ族」は下火になりつつあった。
    ・阿蘇のやまなみハイウェイは東京オリンピック開幕に合わせ、湘南道路、京葉道路、第三京浜、名神高速とともに整備された。そのころは「ハイウェイ時代」と呼ばれた。
    ・四国にはドライブインと遍路宿を兼ねた店があるが、観光バスによる遍路は下火になった。
    ・沖縄の「A&W」、平塚の「ペッパーズドライブイン」など、米軍基地があるところでは、今もアメリカンなドライブインがある。
    ・自動販売機だけを集めたオートレストランは1960年代に始まり、群馬県の「ドライブイン七輿」は今も続いている。
    ・福島の「二本松バイパスレストラン」は今も「トラック野郎」のオアシスだが、運転手同士が偶然顔を合わせ談笑する光景は消えた。
    ・青函トンネル、本四架橋のきっかけになったのは、1954年の青函連絡船「洞爺丸」沈没事故1955年の宇高連絡船の衝突事故。トンネルと架橋が実現した1988年には「一本列島」という造語も生まれた。1987年に可決された総合保養地域整備法の影響もあった1990年、岡山の児島に誕生したドライブイン「ラ・レインボー」は高さ138メートルの回転式展望台タワーが目玉だったが、バブル崩壊で閉鎖された。
    この他、鹿児島のユニークな「軍国酒場」から転じた資料館「戦史館」を併設した「ドライブイン薩摩隼人」など、独特のこだわりやオリジナル料理の紹介も面白かった。
    巻末に示されている参考文献の数の多さといい、店主の人生にまで踏み込み、そこから歴史をあぶり出す洞察力といい、著者のドライブイン巡りは伊達や酔狂でやっているものではない。
    あふれ出る熱意を抑え、店主や関係者から淡々と話を聞き取り、考察しながら時代背景を正確に浮かび上がらせる。豊かな文章力とも相まって、親しみやすい素材で昭和史探訪に読者を導く秀逸な作品だ。

  • 道路沿いに建ちドライバーのために食事を提供するドライブイン。現在ではその存在も薄れている。全国各地のドライブインを訪れ、経営者の話を聞くことで、その隆盛の時と現在を見る。そこには家族と地域の歴史がある。

  • 最近あまり見かけることのなくなったドライブイン。(執筆当時)現存するドライブインを実際に訪ね店主の話を聞き取ったルポタージュ。各店主の話はどれも興味深いけど、エピローグに収録された鹿児島の店主のドライブインとは別に経営していたという軍国酒場の話が一番興味深かった。映画の「電送人間」に軍国キャバレー「大本営」てのが出てくるがあの類いの店だろう。この軍国酒場の話だけで一冊読みたい。
    あと、自費出版のリトルプレスとして刊行した雑誌が書籍化というこの本自体の経緯も面白い。

  • 淡々と、さらあっと

    自分の知らない世界に触れられた。仕事は稼ぎだけじゃないんだよねとも思えた。

    久々に購入した文庫本。よかったなー。後書も含めて

    ドライブイン薩摩隼人の話はかなりグッと来た。違う考えを尊重する、それが民主主義。
    夫婦の間でもこうしてくれんねと相談する。
    いろんな人生を歩んだ人がおるわけやから、その人たちと話せば、自分が知らない世界を知れる

  •  かつて日本の道路には数多くのドライブインが点在し、車で旅行する人たちの休憩場所や地域との触れ合いの場となっていました。しかし昨今は高速道路中心の車移動となり、また一般道でも自治体が取り組んでいる「道の駅」が各地で発展したことにより、利用者が減ってしまったドライブインは次々と姿を消していっています。
     本書は厳しい状況の中、現在も営業を続けているドライブインに著者が何度も通い、綴ったルポルタージュです。旅の移動にまだまだゆったりとした時間が流れていた時代の遺産でもあるドライブインの魅力が垣間見える一冊です。

    京都外国語大学付属図書館所蔵情報
    資料ID:634311 請求記号:291.09||Has

  • 当たり前だけど誰にでも人生の物語があるんだ、と実感した。
    面白かった。

  • 高度経済成長期と共に日本の各地で開業され、21世紀に入って年々その数を減らしているドライブイン。今も営業を続ける人びとへのインタビューから、戦後日本の在りし日の姿が浮かび上がってくる。


    読みはじめたら止まらず、一気に読んでしまった。ドライブインが次々開業したのは主に60年代。自家用車の所有率が上がり、「秘境ブーム」を旅行誌が盛り上げ、来たる東京五輪に向けて国道が整備されていくなか、次はこれだ!という山っ気をだして商売を始めた人が多い。そんな話は面白いに決まっているのだ。
    第Ⅱ章だけは少し毛色が違っていて、六本木と沖縄という米軍キャンプのある土地における〈米兵が通う憧れの店〉としてのドライブインが語られる。この章で取り上げられるアメリカへのファンタジーにあふれたドライブインの佇まいは、私にディズニーランドを連想させる。引用されているCoccoのインタビューによれば、A&W(ドライブイン)とブルーシールをはしごするのが「沖縄の子どもたちが喜ぶスペシャルコース」だそうだ。こんなレストランが近所にあったら楽しいよなぁ。
    レトロな光景には唆られるが、店を切り盛りしてきた方々の口から語られるのは、言ってしまえばどうしようもなく〈前時代的な〉お話でもある。田舎の長男・長女問題。親の決めた相手と結婚し、夫が独断で開いた店を、夫に先立たれたあとも守り続けてきた妻。そしてエピローグに置かれた強烈なドライブイン、「軍国酒場」。しかし、最盛期から50年以上店を続けてきた人たちの言葉を読んでいると、単に「時代遅れ」と言って切り捨てることなど到底できない〈昭和の多義性〉とでも言うべきものに想いを馳せずにはいられなくなる。
    インタビューを申し込むまで何年もかけ、何度も足を運んだという橋本さんの文章には押し付けがましさがない。ルポというと自分が説教をしたいがために取材対象から我田引水するようなものに当たることもあるが、本書には説教臭さも過剰な懐古趣味もない。ただ静かに時が過ぎていくという当たり前のことに感じる胸の痛みや寂しさが記されているだけである。
    物心ついたときにはもうバブルがはじけていた世代としては、すべてがレトロフューチャーなファンタジー世界の話のようでもある。私は自分の車を持ったことがないし、ドライブインの名乗る施設で食事をした記憶もない。パーキングエリアや道の駅でも、正直ご飯が美味しそうに思えたことはない。でも本書には無性に食欲が唆られた。昔は沖縄でしか飲めなかった、本物のオレンジでできたバヤリース。自販機で温められたチャーシューメン。〈ドライブインつぼい〉の豚バラ焼きは、近いうち真似して作ってみるつもりだ。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00627932

    道路沿いにひっそりと佇み、食事を提供するドライブイン。それは道路建設に沸き、クルマや観光旅行が普及した昭和に隆盛し、現在は徐々に消えつつある。そんな全国各地のドライブインに通い、店主の話にじっくり耳を傾けると、人の歴史、店の歴史、日本の戦後史が見えてくる―。足を使い、時間をかけた取材が見事に結実した、傑作ノンフィクション。
    (出版社HPより)

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著者プロフィール

橋本倫史(はしもと・ともふみ)
1982年、広島県東広島市生まれ。ライター。本書以外の著書に『市場界隈 那覇市第一牧志公設市場界隈の人々』『東京の古本屋』(ともに本の雑誌社)、『水納島再訪』(講談社)がある。2007年にリトルマガジン『HB』を創刊。以後、『hb paper』、『SKETCHBOOK』、本書の元となった『月刊ドライブイン』などのリトルプレスを手がける。

「2022年 『ドライブイン探訪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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