ジャンパーを着て四十年 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.22
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480438287

作品紹介・あらすじ

世間に溢れる「正装」「礼儀」「エチケット」、形ばかりになってはいないか? 「考現学」の提唱者によるユーモア炸裂の服装文化論集。解説 武田砂鉄

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えるまで時間かかった。今和次郎には突撃ルポ的な情報収集や、めちゃ細かい仕分け図などマニアックを期待したせいか。TVで警官や駅員を不良っぽい格好にする実験などは「ドッキリ」の元祖か?解説武田砂鉄さんとの共通点面白い。

  •  関東大震災のときからで、いつでもジャンパーを着て40年。学校教員としての仕事のとき、講演の演壇でも、冠婚葬祭や国際的パーティでも。
     そこから著者は、服装やエチケット、世の中の習俗というものについて、深く考えることとなる。
     本書では、礼儀作法の由来、服装改良の難しさ、ユニホームの効用、衣裳、服装の歴史を語る。
     「家庭科にもの申す」などは、現在から見ると大部分の人の生活形態が変わってしまったので時代遅れに感じられるところもあるが、著者はあくまでも現実にみる生活様相をしっかり掴むことが大事だと言っている。
     服装のことについての発言は、少し機能主義に過ぎるのでは、と思われないでもない。
     著者の意見に賛成という訳ではないが、芯のあった人だったのだなあとの思いは強く感じた。

  • 1967年に刊行された本のため、時代的に微妙だと思う箇所もあるが、信仰や信念が希薄で、世間や慣習には盲目的に従う日本において、様々な根源や理由を突き詰め、納得した論理をライフスタイルとして実践した著者の芯の強さが伝わる本。

    「無礼者は切り捨て御免」という理不尽が、礼法として法的な効力を持ってしまった江戸時代から、西洋化した明治時代の反動として国粋主義が生まれ、その際に江戸時代の社会を分析することなく「先祖がやっていたから」という理由だけで過去の作法をトレースし、そのような窮屈さが現代でも「日本の心」やら「伝統」とされているという解説が興味深い。

    着物の考察も面白く、士農工商という身分制度からはみ出た人々、すなわち賤しいとされた劇場や遊郭の者たちの服装が、身分の枠に囚われた人々を魅了し、それが明治の懐古ブームの際に「国粋的な服装」として芸者的なスタイルが「伝統」として日本の上流婦人たちに盲目的に取り入れられた、と言われると何だか複雑な気持ちになる…。そんな日本的な美学とされる作法や伝統が、フェミニズムの視点から見るとかなり差別的だなぁと気付かされるし、ジェンダー格差是正という概念がほぼ無い時代に、当事者の女性にとって機能性や生活面で不便なものは変えようじゃないかと指摘する著者の視線は、極めて平等だと感じる。

    昔はドレスアップがオシャレとされていたが、カジュアル化が進み、ハイブランドでもスウェットやジャージが販売されファッショナブルとされる今のご時世は、ジャンパー愛好家の著者にとって多少は理想的な世の中になったのかもしれない。

  • 世の中を服装の視点から考察した本。50年以上前に書かれたものだけど感覚が現代に通ずるところが多く、筆者のものの見方や考え方が柔軟だと感じた。残念ながら今現在も形式に囚われて服装を周りに合わせる雰囲気は健在である。年に着るか着ないかという服を用意しておかないといけない文化、なんとかならないか。筆者直筆の挿絵がかわいくて和む。あとがきがほぼ奥さんに関する文章で泣いた。

  • いわゆる冠婚葬祭にはジャンパーのままと、きめている。もともと、結婚の座は祝福の劇、葬式はかなしみの劇なのだろうから、それにのぞむのに、必ずしも、婚儀屋や葬儀屋できめている形式的な装いをしなければという法はない筈だと考えているからだ。心のもち方からしぜんに湧く表情と言葉だけで済む筈のものだときめているからだ。−16p−
    今暮らしている片田舎では、キャラクターのついた黒地のTシャツで葬儀に参加する人たちを見かける。気持ちがあればそれでいいのだと思う。

  • 「1.ジャンパーを着て四十年」
    「2.礼儀作法の由来」
    「3.きものの伝統」
    「14.服装への提言」
    は興味深く読んだ。
    他の章は時代的なものもあるのだろうけど、ブルーカラーとホワイトカラーの峻別がすごくて驚いた。「大衆」や「工員」「農民」と(おそらくは大卒の)「サラリーマン」では教育のレベルも考え方のレベルも全く異なるので対応を変えなければならないみたいなことをあっさり述べていて「んんん?」という箇所が多かった。

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著者プロフィール

1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。

「2022年 『ジャンパーを着て四十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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