- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480511522
作品紹介・あらすじ
科学・産業が発達しようと避けられない病気に対し人間は様々な意味づけを行ってきた。「医療人類学」を切り拓いた著書による画期的著作。解説 浜田明範
感想・レビュー・書評
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予想と違った展開、落ち着いた分析の口調、ゆっくりだが読み進めている時間が愉しかった。
元は1984年に発刊されており、文庫化にあたって加筆修正がなされたとある。驚くほど、古典なんだと、改めて感銘したが・・・柳田国男、石牟礼道子、森田正篤そして世界に名だたるレヴィ・ストラースの流れを汲んだ本と認識。
医学そのものというより文化人類学の枝葉の中に存する「医療従事者の参考文献の一環」と捉えたら分かりやすい。
一部分では世界トップクラスと任じる向きもあるが、医学界の進歩は宇宙ロケットのスピード・・それでも【発達した社会でもなおみられる伝統的医療や信仰と治療の問題】はまだまだ解明が続く(世界の隅々を見ると尚の如く・・日本では然ることながら)
よく耳にする【何も悪いことをしていないのに】病に罹る問いに現代医学は応えず、ユタ・シャーマン・呪術にすがるというモノだろうか。自分が納得するように、嵌まりの良いストーリーを作りそこへ当てはめていく認識。
読後、ふと感じたのは「より直接的に利用され差別で正当化されて行く構造の補強となっている」社会。
~結核・ハンセン病など
とはいえ小規模、閉鎖空間であるからと言えども【迷信的な疾病概念】が必ずしも発達するとは言えないところも興味深い。
最近読んだ村上春樹の作品に酷似の匂いが共通しているのを覚えた。
最期に最も面白かったのは滝沢馬琴の病日記。息子会社であることで高い知的階級に属していると思われる日常の生活の空気は意外だったり、面白かったり、納得いったり。。 -
病気を理解する上での切り口は、西洋医学のメスによるものだけはない。我々現代の日本人は、病気を単なる「機械の故障」のように扱いがちだが、文化人類学的な切り口から見れば、もっと多くの意味をもつものだった。
本書は1984年に刊行されたものを2022年に文庫化。しかし、古びた印象はなく、その時間の重みが、むしろ説得力をもたせている(学術的には古くなった面もあるのだろうが、素人にはわからない。その点は、文庫版解説でフォローされている)。
過去の日本における痘瘡やコレラに対する対応など、コロナ禍の現在と比べることで、興味深く読める内容も多い。