- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480683779
作品紹介・あらすじ
家族にも教育の機会にも恵まれず、コンプレックスだらけだった500年前の一人の青年が、なぜ名画を遺し、近代文明の夢を描く「天才」と呼ばれるに至ったか。
感想・レビュー・書評
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ミケランジェロに続いてレオナルドダヴィンチの評伝を読んでみました。
もともと絵は断然レオナルドの方が好きですが、
評伝を読んで、人として生き方としても好きだと思いました。
池上先生はレオナルドと誕生日が一緒だそうです。
さてこの本から「池上先生ならでは」と思うことを三つ書きます。
一つ目。ヨーロッパの美術館に行くと、地元の子ども達が授業の一環として作品の前に座って説明をうけます。
池上先生は横でその内容を盗み聞き(?)します。
二つ目。レオナルドについて不可思議なことが多くあり、誰の作品かという帰属問題を抱える絵画について「これはレオナルドですね」とすっきり言わないため、展覧会やテレビの世界で監修や出演から外されたことがあるそうです。インタビューを受けて収録までされたコメントが使われなかったという経験もあります。レオナルド作となると市場価格が跳ね上がり、ニュース性もあるので仕方のないことなのだと。
三つ目。フィレンツェでミケランジェロとの世紀の対決が予定されていてなくなってしまった、という有名な事件がありました。
池上先生の推測では、システィーナ礼拝堂の〈最後の審判〉をレオナルドに描かせる話があったのではないか?と。
そしたらそこでミケランジェロ〈天地創造〉との世紀の対決があったことになる。
それについては池上先生の他の本に書かれているらしく、探してみたいです。
1974年東京で開かれた〈モナ・リザ〉展は、150万人以上の来館者を集め、企画展の単館入場者数の世界記録をいまだに保持しています。
私はルーヴルで見ましたが、写真を撮る人でごった返していて、とても作品を味わう状況ではありませんでした。
でもレオナルドの他の作品はすいていました。
8年前にbunkamuraの「レオナルドダヴィンチ美の理想」という企画展にいったとき、おかしなモナリザがたくさん並んでいてがっかりしたものです。
この本を読んで改めてモナ・リザって本当に凄いんだなあと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯と美術作品とその他の遺産。
また、ルネサンス期のヨーロッパ事情。
巻末に、絵画作品の解説がある。
幼少期の家庭の事情がレオナルド・ダ・ヴィンチを作り上げた。
母への思慕、庶子であるための苦労。
残された作品の少なさ。
パトロンの事情とレオナルド・ダ・ヴィンチの描く技法はおそろしく沢山の時間が必要なこともあり、仕上げることが出来なかった作品が多い。
晩年はフランスでおだやかな二年間を過ごすことが出来た。
ヨーロッパの歴史についての本も読んでみたくなった。
科学者や技術者としての、レオナルド・ダ・ヴィンチも好き。
なんか、憎めない人だったのだろうなという気がする。
新書なので、大きめの美術書で作品を鑑賞しながら、読めばよかった。残念。
作品の来日は、もう無理かなあ。 -
万能の天才と言われるレオナルド・ダ・ヴィンチ。名前の由来はヴィンチ村のレオナルドで、婚外子として生まれ、決して恵まれたとは言えない中で育っていくが、主に絵画を通した人生が詳説されている。
寡作にして遅筆、なぜ絵筆を先に進めないかと問われ、考えている時間にも作品は進行している、という答えに思考の深さが窺える。自然界にはない輪郭線を描かずに、色彩のトーンとグラデーションだけで描くため、スフマートという技法を生み出す。真骨頂が有名なモナ・リザだが、モデルの謎とともに、絵の深みを増している。日本で開催された企画展の入場者数約150万は未だに世界記録として破られていない。巻頭にカラー口絵があり、作品を参照しながら、製作の背景を理解しつつ、歩みを辿れるのがいい。 -
自分が読むには難しかった。詳しく書かれてるからこそかもしれないですが、固有名詞が多く飛び交い読む中で整理するのが大変でした。就寝前に読む本ではなかったです。ただ、色んな絵や写真が載っているので、それに対する理解はしやすいと思います。
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レオナルドの一生涯について、彼が生きた時代の流れに触れながら詳細に語られていて読み応えがあった。
寡作であったから、という点でもそうであるけれど、彼が探究や創作のために捧げ込んだ努力については、わたしたちにとって非常に多く見習うべき部分があるという点で、レオナルドは、美術家の中でも一際その人となりや生涯について学ぶべき人物だな、と思わされた。
著者のレオナルドに対する人物像の評価はかなり好き。
彼を取り巻いた歴史であるルネサンスについてより詳しく学びたくなった。
自身の研究分野についてとても熱意を持っている著者だと文体から感じられたので、この方の著作は色々読んでみたい。
特に、晩年描かれた〈洗礼者ヨハネ〉について語る際に文中で触れられていた『死と復活』『レオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と芸術のすべて』はすごく気になる!
そして、読んでる最中に、この人がちくまプリマーの『西洋美術史入門』を書いた人だと気付いたときは親近感が湧いた。 -
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品と人生に向き合うにあたって、信頼できる著作だ。それが新書で読めることに驚く。
時代を生き抜くために、彼は惜しみない努力をしていたのだ。
後代だからこそ、あーだ、こーだと言えるが、作品そのものはもちろんのこと、その人生から得られる教訓は大きい。