はじめてのニュース・リテラシー (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683984

作品紹介・あらすじ

フェイク、陰謀論、偏向、忖度、感性のズレ――情報はなぜ歪んで/偏ってしまうのか。ニュースの作られ方から、信頼できる情報の見分け方までを平易に説く。

感想・レビュー・書評

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  • 誰でも情報発信できる時代の情報との付き合い方。

    なぜフェイクニュースや陰謀論に振り回されてしまうのか。それはそのニュースが「事実」かどうかを評価するのがとても難しいことだからだ。著者は若い読者に対して情報との付き合い方を伝えようとしている。なるべく一次情報に近いものを得ること、発信元を確認すること、明らかになっていないことに注目すること、未確認情報を適切に扱うことである。

    情報の信頼度を評価するには、発信元を意識し、明らかになっている発信元について調べてみる必要がある。匿名の情報は確認が取れないという面で信頼に欠ける。もちろんインターネットの発展が、自由な発信を保障し、それまで報道の自由がなかった世界に風穴を開けて民主主義の背中を押したのは評価される一面である。でも、匿名の発信に責任はないのだ。そこで人はどんな暴走もできてしまう。

    しかし事実を元にしたからと言って、真実が伝わっているかというとそうでもない。たくさんの事実の中からどの事実を選び出すかで伝わる全体のストーリーが変わる。特にマスメディアには何を報道するか、記者の判断や会社としての判断が関わってくる。読者が求めている(と思われる)情報を伝えようとしても、それが実際の読者の感覚とズレていることもある。また、メディアの特徴によって選ばれる情報が変わることも、伝わるメッセージが変わることもある。

    著者はインターネットが悪いとも、マスメディアが悪いとも言っていない。トランプ大統領や新型コロナウイルスの話題を取り上げ現在に着目しているが、著者が重要視しているリテラシーはそれほど新しいものでもない。発信元の確認、伝達経路の意識、明らかにされていない部分や未確認の情報への想像力、これらは普遍的なリテラシーであると思う。

    ただ、以前の知りたいことも知りたくないことも一定の情報を与えられるマスメディアにニュースの入手を頼っていた時代には、業界人にはともかく個人にここまで情報リテラシーは求められていなかった。しかし今は情報の発信も受信も個人が行える。だから個人がそれぞれ知的負荷の高い情報リテラシーを求められている。情報社会にももちろんメリットとデメリットがある。この時代を良いととるか悪いととるかは、どれだけ個人に情報リテラシーが浸透するかによるだろう。

  • 良い内容だが、大人向け。プリマー新書なので子ども向けを想定して読み始めたが、大人が読む方がいい。
    情報の受け手でありアマチュア発信者であるところの一般市民に向けた本であるかのように始まるが、著者が最も熱を入れて語っているのはジャーナリズムとマスコミの裏事情。大人にとっては興味深いが、子どもたちに見せるのはまだ早い。全体的に著者の思いが入りすぎているところも気になる。

  • 「誰もが情報発信できる現代、ニュースの〈信用度〉を的確に評価することは、さらに喫緊で重要な課題になった。ニュースの作られ方から陰謀論の構造までを精査する。」

    目次
    はじめに
    第一章 誰もが情報発信する時代
    一三〇年前の流言
    新型コロナ感染拡大とインフォデミック
    SNSが変えた情報の流れ
    ある朝、目覚めたら「犯人」に
    市民が「冤罪」をつくる時代
    加害者は「普通の人」たち
    情報の「出所」を見ない人々
    情報リテラシーと批判能力
    手つかずの「情報リテラシー」教育
    第二章 ジャーナリズムとは何か
    人は生きるために「ニュース」を欲する
    「メディア」とは何か
    革命的技術「活版印刷」の登場
    ジャーナリズムの誕生
    ジャーナリズムの使命
    第三章 事実・捏造・偏向
    「事実」とは何か
    「事実」の乱立
    実名発言の重要性
    NHK番組への違和感
    「事実」と「現実」
    一九九二年の「やらせ」事件
    「事実」を並べて「ウソ」を語る
    選ばれる「事実」、削ぎ落される「事実」
    第四章 ニュースの作られ方
    報道されること、報道されないこと
    新聞制作の流れ
    ニュース感覚
    ニュースバリューを決めるもの
    ジャーナリストの使命感
    報道機関の事情
    情報の発出頻度と情報量
    メディアの特質を知る
    メディアとの賢い付き合い方
    「絵になる」と「絵にならない」
    「論理」より「気分」
    テレポリティクス
    賭け麻雀スキャンダル報道
    雑誌の「ニュース」、新聞の「取材」
    当局者への潜行取材
    捜査情報の先行報道
    「特ダネ」と人事
    三つの調査報道
    「権力の道具」だった私
    第五章 「陰謀論」と「不誠実な報道」
    トランプ時代の「情報と人間」
    「どの筋から圧力が?」
    トランプ政権と陰謀論
    情報ランチ定食
    世界全体を説明する方法
    低下したマスメディアへの信頼
    メディアの「不誠実」な内幕
    内幕を暴露
    「定型」の暴走
    パチンコ店を巡る報道
    おわりに──「正確な事実」をつかむために
    情報の「次数」を考える
    一次情報に近づく努力
    「明らかにされていないこと」の重要性
    情報発信者・媒介者を吟味する
    「未確認情報」という判断の重要性
    あとがき

  • 記者経験者によるメディアリテラシーの入門本。一つ一つは事実でも全体として実態と異なる像を結ぶ伝え方があること、これが見破られた時の信用失墜などは自分自身にも関連することだな。記者経験(在外経験あり=国内で高い評価を得た)があるので、メディアの内側事情の紹介もあり。情報が多すぎると処理できない、少なすぎても処理できない。少な過ぎないようにメディアを守り育てる必要がある一方で、メディアからの情報を吟味する力(とりあえず、すぐに反応しない、くらいから)を持たないと不本意に誘導され、加害者や被害者になる可能性がある。情報処理のコストが高いので信頼を得るメディアをAIで作るといい気がする。失敗も全て公開して。人は失敗を隠すし、忘れてしまうから。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00288744

  • 中央公論「目利き49人が選ぶ2021年に私のオススメ選書」20224掲載 評者:鈴木一人(東大公共政策大学院教授,国際政治経済学,中東問題)

  • 社会学部 松澤俊二先生 推薦コメント
    『ネットのうさんくささにも、新聞の生真面目さにも耐えられない人に。そして、陰謀論にはまりかけているあなたにも。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/653091

  • 東2法経図・6F開架:070.4A/Sh86h//K

  • 070-S
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著者プロフィール

1970年生まれ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社でヨハネスブルク特派員、ワシントン特派員などを歴任。2014年に三井物産戦略研究所に移り、欧露中東アフリカ室長などを経て、2018年から立命館大学国際関係学部教授。『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』(東洋経済新報社と朝日文庫)で2010年の日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞受賞。著書に『日本人のためのアフリカ入門』『アフリカを見る アフリカから見る』(以上、ちくま新書)、『はじめてのニュース・リテラシー』(ちくまプリマー新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授を兼任。

「2021年 『はじめてのニュース・リテラシー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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