「死にたい」と言われたら ――自殺の心理学 (ちくまプリマー新書 428)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684530

作品紹介・あらすじ

日本の全死因のうち2パーセント弱を自殺が占めている。なぜ自殺は起こるのか、自殺は悪いことなのか、死にたい気持ちにどう対応するか――心理学の知見から考える。

感想・レビュー・書評

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  • 末木 新 ネットが拓く新たな自殺対策――SNSに溢れる「死にたい」の行き場|社会|中央公論.jp(2023年4月10日)
    https://chuokoron.jp/society/122870.html

    末木新「自殺の予防とSNS・インターネットの活用:理想と実際」|cotree 公式(2021年4月20日)
    https://note.com/cotree/n/n15708f440a31

    「死にたい」と言われたら 末木 新(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480684530

  • 自殺の研究を専門にしている心理学者である著者が語る自殺論。「自殺はダメなの?」から「どうすれば防げる?」まで、死にたい気持ちを心理学の最新の知見をもとに考えていく。

    タイトルを見て、当事者向けの実践的な対策を書いた本かと思いきや、それに加えて自殺についての幅広い知識も詰まった一冊。自殺にまつわる世界や生物の歴史というマクロな視点は興味深かった。さらに死にたくなりづらい世界はどうしたら作れるのかなど、具体的な展望まで書かれている。大学で講義を聞いている感覚の読み心地。ちくまプリマー新書というレーベルがヤングアダルト向けの入門書を目指しているということもあり、授業で読んで考えたり話し合ったりできたらいいかもしれない。

    トーマス・ジョイナー氏が提唱した「自殺の対人関係論」による、自殺の危険因子を表した図がわかりやすい。「自殺潜在能力(死に切る力)」「所属感の減弱(孤独感の高まり)」「負担感の知覚(お荷物感、低い自尊心)」という三つが重なると危険が高まる。なので、反対にそれを排除することで自殺から遠ざけることもできる。

    「印象深かった内容」

    ・ホームドアを設置など物理的に阻む。自殺に使用できる物品の販売方法を手軽にしない。薬剤を瓶ではなく個包装化する。

    ・友人から「死にたい」という言葉が出たら、傾聴して共感する(どう話せばいいかも解説してある)。できれば、チームで関わる。危険を察知したら警察を呼んで保護してもらうことも視野に入れる(相手に確認してみる)。

    ・自傷行為はストレス対処法で脳内麻薬によって短期的には良い効果だが、もちろん依存的になって続くほど自殺のリスクが高まる(かまって欲しいだけで終わらせない)。

    ・子どもの自殺はいじめが原因よりも、学業不振や進路の悩みの方が多い。センセーショナルな自殺報道には要注意。ウェルテル効果で自殺リスクを上げる。(ぼくの意見。下衆の勘繰りで報道した後にいのちの電話の番号を出してお茶を濁すのは全マスコミに止めてほしい!)

    ・不安などのネガティブな感情のポジティブな機能を知り、客観的に考える理性を鍛える必要がある。

    ・小さな親切をしておくと、相談しやすくなる。孤独では救われない。人間関係をいかに築くかが大事。

    ・ボランティアになっている社会資源や、お金が回らない研究についての見直しや検証も必要。経済的に裏付けのない社会保障はあり得ない。

    希死念慮を持つ自分としては、精神疾患は孤独になる病気なので、人間関係が大事!はわかるけどハードルが高すぎる。むしろ、迷惑をかけたくないし、これ以上傷つけられたくないなど孤独へ一直線。このあたりをもう少しやさしく深掘りしてほしかったかなあ。そこだけ残念。

  • 若年層向けに書かれた本で、構成は割とわかりやすい。
    1学術的なもの
    2二人称(死にたいと言われたら)
    3一人称(死にたいと思ったら)
    4哲学的考察
    5インフラをどう整備するのか
    中年の自分がこの本を手に取ったのは、少なからず自殺の現場に遭遇しているからでもあり、自分自身、生に興味がなくなってきているからでもある。
    たいていそうだと思うが、中年になると、あらゆることに興味が薄れてくるし、何かをする気もなくなってくる。気力がないから、死のうとも思わない。
    本を読み、よくよく考えてみると、家族がいるからかもしれない。最大のゲートキーパーになりうるのは、家族なのかなと思う。

  • 著者は祖父を自殺で亡くしたことから、自殺について深く考えるようになったのだとか。長年の研究で得た統計や肌感覚から、自殺に向き合う方法を丁寧に説いてくれます。アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を読みたくなりました。→ 100分de名著を観よう。

  • 現在日本では毎年約2万人が自分で命を絶っているようだ。

    構成は、
    1. 自殺はなぜ起こるのか
    2. 「死にたい」と言われたら
    3. 「死にたい」と思ったら
    4. 自殺は悪いことか
    5. 幸福で死にたくなりづらい世界の作り方

    自殺の危険性は、①身についた自殺潜在能力(自殺企画歴、手段へのアクセス容易性、メディアの影響、アルコール依存、虐待等) ②所属感の減弱(災害、差別、孤立、人間関係の不和喪失等) ③負担感の知覚(経済的損失、偏見等) の3つが合わさったときに最も高くなる。
    従って対応方法は、これらを番号の順でひとつずつ取り除いていくこと。

    リストカット等の自傷行為は、それにより脳内麻薬が分泌され短期的に気分が良くなるために行われ、本当に死ぬ気ではない。しかし、徐々に傷を大きく深くしないと満足がいかなくなり、自殺潜在能力は上がっていく。
    対話を通じて心の絆を作り、孤独を癒すこと。
    実際の自殺行為に入っている場面に遭遇した時は、119番に連絡。そこまでは行っていないが、今にもしそうな場合は110番に連絡 だそうだ。

    自殺をする人の多さに暗澹たる気持ちになるが、著者が最後の章で述べているように、国や自治体がもう少し本気で取り組まなければならないことだと感じた。

  • p.63
    「死にたい」と打ち明けた人間が最も恐れるのは、意を決して行った重大な自己開示が軽く扱われることだからです。
    p.64
    「死にたい」という気持ちに向き合うということは、向き合う(向き合わされる)側にとってもとてもしんどくて恐いことであり、できれば避けたいものだからです。
    p.68
    共感することと、肯定することを混同しているかもしれません。
    p.73
    考えを変えていくためには、頭の中で論理的に考えることだけではなく、「ああそうだったんだ、自分の考えは違ったのかもしれない」という変化に対して感情的に納得できる体験が必要です。
    p.78〜79
    「死にたい」という訴えが強烈で、そこに目を奪われる分だけ、背景にある問題が見えなくなります。
    p.79
    あまり期待をしすぎずに、さまざまな人をとりあえず1回あてにしてみて、あてにならない時はサッと乗り換える、くらいの感じがいいと思います。
    p.153〜154
    仮にこの先も経済と科学技術が発展し続けていけば、今以上に不老長寿に近い状況が達成されるでしょう。その時には、我々は自分自身の人生を満足の上で終わらせ、幸せな死を達成するために、自殺することを目指すようになるはずです。

    面白く分かりやすかったですが、新刊だったので、新しい情報やコロナ前後での比較などがもっとあればいいなと思いました。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/704777

  • 感想
    知性ある生物の宿命。自分の生命を終わらせてしまう。そこに感情を織り交ぜてしまう人間。大切な人の死を食い止めたい。だが少し考える。

  • 自殺は悪いことかという章で、生物の生存するための観点から読み解けたことは良かった。また他にも図で説明しているものもあり、自殺を少し距離を置いて冷静に知識として認識出来て良かった。

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著者プロフィール

末木 新(すえき・はじめ)
和光大学現代人間学部教授

「2023年 『深掘り! 関係行政論 保健・医療分野』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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