悪口ってなんだろう (ちくまプリマー新書 432)

著者 :
  • 筑摩書房
3.76
  • (13)
  • (21)
  • (17)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 660
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480684592

作品紹介・あらすじ

悪口はなぜ悪いのかを問われた時、シンプルに「人を傷つけるから」といった理由が思い浮かぶかもしれない。たしかに子供のころに「そんなこと言われたら傷つくでしょ」といって、悪口をたしなめられることはあるだろう。ただしそれだと悪口の悪さを十全に説明できているとはいえない。たとえば、褒めたつもりなのに、悪く捉えられてしまった言葉は悪口とはいえないからである。
では、悪口とはなにか? それは人のランクを下げる言葉である。ある人のランクを下げて、この人はなめていいですよと合図を出すことで、他の人からも同じような扱いを受けるというところに悪口の問題点はあるのだ。そのため、相手が自分より下ということ、たとえば人間より下ということを指し示すため、ほかの生物を指す言葉が悪口では用いられることが多い。「なめくじ」「ザコ(雑魚)」といった言葉が悪口になりやすいのはそういった理由があるのだ。本書は悪口の根本を問い、それは他と何が違うのかを明らかにする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 悪口ってなんだろう?
    相手のランクを下げて溜飲を下げる。悪口と笑いは似て非なるもの。わかるようでよくわからない。
    ただ、権力者が自分がランクが上と勘違いして横暴を働くような時は、悪口を言おう。これはよくわかる。小さな声でも、それをやめてしまえば世の中は酷いことになるから。みんな平等なんだよとこの本は言っているんだろう。

  • 「デカい主語」「大きな主語」の語りにはなぜ注意が必要か?「総称文」から考える(和泉 悠) | 現代ビジネス | 講談社(2022.03.24)
    https://gendai.media/articles/-/93477

    Topics:社会であふれる「悪口」とは 人おとしめる「ランク付け」 和泉悠准教授が新書『悪い言語哲学入門』 | 毎日新聞(2022/6/13 有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20220613/dde/014/040/004000c

    和泉 悠 (Yu Izumi) - マイポータル - researchmap
    https://researchmap.jp/yuizumi/

    筑摩書房 悪口ってなんだろう / 和泉 悠 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480684592/

  • 悪口とは何か?言って良いのか?悪いのか?受取方、場面、国、状況によって様々な変化がある「悪口」を紐解きます。家庭や職場、学校など悪口を聞かない日はないのかもしれせん。学術寄りではなく平易な表現のため中学生以上であれば問題なく読めます。

    時には悪口がコミュニケーションを円滑に進める事もあり、全てが悪いとは言えません。ですがやはりこのご時世で悪口を平然と良しとするのは慎むべきです。かく言う私も日常的に悪口を言う癖があり、戒めに読んでみました。

    昨今のSNSに関する誹謗中傷に関する事案についてもう一歩踏み込んだ記載が欲しいなと思いました。

  • 悪口は、その人たちが共有している存在のランキングから、その対象のランクを下げて貶める行為である。

    「悪口じゃないよ、意見だよ」
    「率直な批評だよ。」
    「冗談だよ」
    なんと言われようと、そこにランクを貶める効果がある以上、それは悪口だし、受けた側は不快に感じるものなのだ。

    腑に落ちた。
    私がなぜ、悪口を言いたくないのか、なぜ、人から言われたくないと恐れているのかも、納得できた。

    自分のなかに、人の優劣をつける存在ランキングが常にあって、自分がそのランキングのどこにいるのかが気になり、貶められたくないと感じている。

    だから、他人の評価を気にして、悪口言われてないかが気になる。
    貶められている側に共感して同情するから、言いたくないし、聞きたくないのだ。

    悪口が何かの論考を通して、自分の問題にも気づくことができた。

    優劣ランキングをなくす。
    誰も誰よりも劣っていないし(違いはあっても)優れてもいない(違いがあっても)
    感じてしまうかもしれないけれど、感じることと実際にそうかは別物である。

    そうはいっても、悪口には仲間意識を増長させたり、権力者に抵抗したりする側面もある。
    自分のなかの優劣ランキングを排除して、悪口と上手に付き合っていくことが大切。

  • #悪口ってなんだろう
    #和泉悠
    #ちくまプリマー新書
    #YA
    #読了
    悪口を丁寧に分析して、悪口を言う側、言われる側、見聞きする側がどうすればよいのかと結論づける。パートIIの9、悪口ライセンスは納得したし背筋が凍るような気持ちになる。誰もが常にどの立場になる可能性を秘めているなぁ。

  • 誤字があったから星1つ。
    悪口はなぜ面白いのか。それは自分が無能であることに、自覚がある人が他人のランクを落とすことで優越感に浸れるから。こうやって人は同じようなランクの人たちがより集まるようになったのだろう。
    権力者を引き下ろすイコライザーとしての悪口は多いに歓迎というスタンス。でも会社では自分に不利益しかないよね。

    悪口は人間の性でありうまく付き合うしかないというもやついた結論。一貫して悪口はこういうものという説明。悪口を言われないようにするのは無理でも、それとうまく付き合いストレスを感じないようにする具体的な方法までは書かれていない。

  • 悪口について哲学的考察が縷々述べられているが、人が他人と係わる限り悪口の種は尽きないことが再認識できた.人をランク付けすることは避けられないことだが、「弱者を踏みつけるために悪口を使うのではなく、強者に抵抗するために悪口を言うべきだ」との提言は、非常にしっくりくるものと感じた.

  • 悪口の概要が掴めた。これ作者がいっぱい本読んでまとめた的なタイプのやつだから、2〜3回読み直さないと自分のものになんないのか〜と思った。とにかく、悪口とは「何か、誰かと比較し、その評判、社会的ランキングを下げること」ってことでよろしい?
    最初はすごい論理的だったのに、真ん中らへんからちょいちょい自我が入ってくるの関西人だなって感じがした。

  • 分かりやすくて面白かった。自分や周りを上げたり下げたりしてしまうランキング思考から早く抜け出したい。すべてはヴァーチャルなのだから。

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

和泉悠(いずみ・ゆう):1983年生まれ。University of Maryland, College Park, PhD(博士号)。現在、南山大学人文学部人類文化学科准教授。南山大学言語学研究センター長。専門分野は、言語哲学、意味論。特に日本語と英語を比較しながら名詞表現を研究。また、言語のダークサイドに興味があり、罵詈雑言をはじめ、差別語、ヘイトスピーチの仕組みとその倫理的帰結についての研究も行う。著書に『悪い言語哲学入門』(ちくま新書)『名前と対象??固有名と裸名詞の意味論』(勁草書房)などがある。

「2023年 『悪口ってなんだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

和泉悠の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
凪良 ゆう
西 加奈子
マシュー・サイド
高瀬 隼子
小川 哲
ヨシタケシンスケ
夕木 春央
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×