新しい道徳 (ちくまプリマー新書 72)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687739

作品紹介・あらすじ

情報化し、多様化した現代社会では、道徳を感情的に押しつけることは不可能だ。バラバラに生きる個人を支えるために必要な「理性的な道徳観」を大胆に提案する。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもが生きていくうえで大切なナナメの関係

    昔なら、地域社会にゴマンとあった、親族ではないお兄さん、お姉さん、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんとの関係。親にも教師にも言えないことを、そうしたナナメの関係の大人には漏らすかもしれない。親子や教師、生徒といった縦の関係や、友達同士の横の関係では言えないことにも斜めの関係の視線からなら、気づいてあげられる可能性がある。

    生きやすすぎる現代社会が故に、生きにくくなっているということに共感した。

  • 2008年06月09日 09:54

    前杉並区立和田中学校長の藤原氏の著 

    これまでに読んだ彼の著書と一貫して 
    「成熟社会」の日本をどう生きるかのClueが記されている 

    特に大切だと思ったのは、地域社会での子供にとっての「ナナメの関係」 
    両親や先生との「タテの関係」や友だちとの「ヨコの関係」だけでなく、「ナナメの関係」を持つことで子供には「圧抜き」の場所となるという 

    自分の子供がこれから生きていくだろう複雑な世の中の道しるべになれば、と思った

  • 民間初の公立中学校校長として、登用当時話題になっていたのは記憶に新しい。

    教育現場の考察やアイデアは流石に秀逸ですが、これが他の学校でも採用する事は可能なのか、疑問は残る。

    しかし、いじめにはステージがあり、対応はそれぞれ違う事、「いじめはなくならない」という前提で対応策を練る事、メディアの影響よる思考停止、「人それぞれ」と「みんな一緒」の混同など、綺麗事だけでは済まない現場の話は大変勉強になった。

    特にゆとり教育の功の部分はこれまで聞いた事がなかったので、目からウロコ。
    総合学習をこなせる教師が増えるなら、これからの日本には必要な教育だと思う。

    日本は「成長期」から「成熟社会」に。
    古い習慣、伝統と新しい多様性という価値観は共存出来るのか、考えさせられた。
    あとがきで安倍総理にチクリとする記述もあり気に入らないが、概ね良い本でした。

  • 第ニ章迄ざっと読み。情報編集力と納得解。

  • 勉強になりました。

  •  著者曰く、現代の社会は「思考停止状態」である。「古い道徳観」による感情的な決め付けから大人たちが抜け出せないでいる。仕事柄、子どもと接することが多いが、年齢間のギャップというより、人間観のギャップを感じてしまうことがある。それはなぜなのかを著者が以前の「成長社会」と「成熟社会」のちがいからくる道徳観として説明している。
     一昔前までは、国家があり、会社や組合のような組織があり地域社会や家族のような共同体があり、個人があった。我々個人は、家族を含めた3層の構造で守られていた。その中では、「学校でいい成績を取って会社や団体に入ると成功する」という「成長社会」神話を信じた。この間、学校では産業界にひたすら「情報処理能力」が高い人材を輩出することで、個人目標と国家目標の二つに同時に答えることが可能だった。
     それが、「成熟社会」になると状況が一変する。国家や企業は一人の一生を支えきれなくなり、経済社会の押上効果により個人の自由度が増し、共同体の箍が緩み始めた。テレビやネットを中心とした情報化によって子どもにも情報が同時に受け渡され、経済力の向上により、家事の電化やインスタント食品が開発され、家族でしなければならない仕事が激減した。結果、一人一人が動ける条件が整
    い、そしてその価値観も多様化した。そのような社会では、一つの道徳観では成立せず、著者がいう「納得解」が求められる。つまり、複眼的な発想、柔らかい考え方を産み出す「情報編集力」が大事になる。
     一人一人がバラバラに生きていくことは自由になるが、その分孤独も感じやすい。人は孤独に耐えられない。だから、現代人はケータイやインターネットでつながろうとするのかもしれない。また、テレビという存在がもたらした世界の影響も大きい。「二項対立」の図式は、わかりやすくい構図で「善」と「悪」を描いてきた。見る側はすっかりそのメディア作戦に引き込まれてしまい、思考を停止する。人とのつながりを探し求め、思考停止状態で、あるはずもない正解を求め、豊かなサービスを受け、日々生活していく。生きやすい社会を目指していたはずが、いつのまにか生きにくくなったおであろうか。こうした社会を成立させるにも、バラバラな個人が、それでも、守ることを共有する方が何らかの益があると考えるような、理性的なルールが必要である。「感情的な道徳観」から「理性的な道徳観」へのシフトチェンジが必要であり、学校では「正解」ない成熟社会を生き抜くための「納得解」の導き方をおしえなければならない。

  • 中学生か高校生向けぐらいの、倫理や思考の仕方を簡単に述べている本.民間出身の校長先生とのこと.
    メディアに代表される二項対立的思考に警鐘を鳴らしている.
    また、いじめ問題についても言及.いじめを無くすのに一般解は存在せず、著者の提唱している外部の大人を学校に入れる「斜めの関係」やいじめを3つのレベルに分けて、最大レベルのいじめは犯罪として警察対応.真ん中のいじめは判断が難しいなど.現場感覚から来ているのだろうと納得.

  • 新しい道徳というタイトルで、主な内容はいじめと教養の2つのポイントが抑えられている。
    「ゆとり教育」は悪という風潮があったが、この本を読んで考えを改めた。知識を詰め込むことも必要だが、社会にでれば、答えや正解がないことがほとんど。その中で、自分がどういう考えを持ち、どういう判断をするかの能力が今の学校教育ではない。そこで、藤原校長の学校では、よのなか科を設け自分の意見を述べたり、考えたりする能力を鍛えた。結果、各学科の点数も上がっていった。

    ゆとり教育=悪。じゃあやっぱり詰め込み型がOKではないか、という考えでは浅はかすぎる。偏ったメディアの情報を鵜呑みにするのでなく、しっかりと本質を捉えるメディアリテラシーが子供にも必要だと思った。

  • 著者が「毒を入れたかった」とあるとおり、有識者やお偉いさんが見たら痛いであろうことがしっかりと書かれている。
    有識者やお偉いさんがよかれと思っていることを、これだけはっきりと「ウソである」と言い切っているのはない。
    ずっと違和感を感じていたケータイ・テレビ・ブランド品が、どのあたりが問題なのかをずばり指摘してもらうとこちらも気持ちがいいくらい。

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著者プロフィール

藤原和博(ふじはら・かずひろ)
「朝礼だけの学校」校長。1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003~08年、杉並区立和田中学校で義務教育初の民間校長を務める。2008~11年、橋下大阪府知事の特別顧問。2014年から佐賀県武雄市特別顧問。2016~18年、奈良市立一条高等学校校長を務める。

「2021年 『「人生の教科書」コレクション全10冊セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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