「お客様」がやかましい (ちくまプリマー新書 131)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688316

作品紹介・あらすじ

現代の日本社会は「お客様=神様」として扱うが、客の不満はゼロになるどころか、不満は増大し、自主性の欠如や拝金主義、暴力につながっていく。「お客様」社会の問題点と脱却法を考える。

感想・レビュー・書評

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  •  お客様は神様ですと言って大事にしてあるいはスリスリした結果が今回の本に書かれているようなことが起きている。つい最近、電車に乗っていて駅で止まったまま動かなかったのでどうしたのかと思ったら、アナウンスで何とか駅でお客様対応中ですと言っていた。人身事故ならはっきり言うはずだから、乗客同士のトラブルか、駅員に対するドラブルかと思われる。

     「お客様」による暴言、暴力が多いのがコンビニ、電車と著者は指摘している。イライラ、ギスギス、セカセカしている社会の中で暮らしていると、怒りの矛先が店員に向けられることが増えると言える。

     学校でも生徒をお客様扱いするところが出ているというのには、驚いた。しかも体育会系のクラブでも部員をお客様扱いするところが出ている。びしびしするのが体育会系かと思ったら、厳しくすると部員が逃げるのでそうしているとある。外見はマッチョでも中身はひ弱な部員が増えている証拠か。オリンピックでメダルが取れる選手が減る心配があるなあ。

     「お客様」が暴力的になる理由として著者はいくつか挙げている。客は常連と認められたい、貴重な苦情を言ってやっているという意識。店員の中には、あぜんとするような、あるいはムカムカが臨界点に達しそうな人もいるが、恐ろしい。

     おもてなしを売り物にして海外に打って出ている日本の飲食店がいろいろと話題になっている。店員はお客より一歩下がる存在という日本では通用する仕組みだが、海外に持っていくと現地で従業員になる人はどう思うのか。お客様は神様というのは経営者側にとってはよいだろうが、従業員にとっては迷惑な発想だったりして。

  • 私自身も買い物するし、ファミレスで食事するし、病院、スポーツジム、美容院、、、いろんなところで「お客様」として接遇されているんだろうな。読み進めていくと「これって私のこと?」っなるサイコホラー。

  • 現代に蔓延る「お客様」扱いを、お客様扱いする方とされる方の両方から分析している。さらにその問題点や、クレームや暴行はお客様扱いするからこそ生まれることも指摘。なんとなく閉塞的な世の中を、ちょっと解明する本なのかもしれない。読みやすかった割には得るものが多くて良かった。

  • お客様という扱いが、今の日本をダメにしているということを事例をもとにして述べている本。事例を見ていると絶望的な感じになってくる。これらの根本には拝金主義があるのだと思う。拝金主義というところを視点にして、自分はどうしていったら良いか、今一度考えたいと思う。



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    【要約】


    【ノート】
    ・新書がベスト

  • 東2法経図・6F開架 365A/Mo45o//K

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    現代の日本社会は「お客様=神様」として扱うが、客の不満はゼロになるどころか、不満は増大し、自主性の欠如や拝金主義、暴力につながっていく。「お客様」社会の問題点と脱却法を考える。

  • 【目次】
    第1章 「お客様」社会先進国ニッポン
    消費者社会としての日本社会
    「お客様」社会としての日本社会
    広がる「お客様」化
    「お客様」になれば認めてもらえる
    第2章 「お客様」による暴力はなぜ増える?
    「お客様」社会は問題か?
    「お客様」は「荒ぶる神様」
    「お客様」が暴力的になる理由
    第3章 客を客とも思わない店員―労働者から誇りを奪う「お客様」社会
    「お客様」社会の逆説
    スーパーと職人
    スーパー、職人、マニュアル
    失礼なバイト店員が増えた理由
    失礼な職人的店員が増えた理由
    第4章 教育の「お客様」社会化は、学ぶひとを不幸にする
    学校教育の「お客様」社会化
    「お客様」社会化した大学の現状
    「お客様」社会化した大学の問題点
    学校教育の「お客様」社会化マッチポンプ
    第5章 「お客様」意識からの脱却
    不満排除システム
    不満排除の逆説的帰結
    せいぜい「お客さん」
    あとがき

  • 海外から帰ってきたときに感じた違和感の原因が、分かったような気がする。
    “もてなす側”の本が多いなかで、本書は“もてなされる側”に焦点を当てた本。そういう意味でも貴重であり、新しい角度から日本の社会を見つめられる。

  • 【動機】『新書がベスト』経由。書名が秀逸。
    【内容】ひとに認められたいという欲求をビジネスで満たす「お客様社会」を解説している。
    【感想】スーパーから職人が解体される物語が悲しい。自身をクソお客様に貶めないために何ができるだろうか。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県神戸市生まれ。

神戸市外国語大学卒業後、関西学院大学社会学部卒業。同大学院社会学研究科博士課程修了。

博士(社会学)。

現在、皇學館大学文学部コミュニケーション学科教授。

専門は理論社会学、現代社会論、消費社会論。

現在は哲学を勉強中。

著書に『「お客様」がやかましい』『ほんとはこわい「やさしさ社会」』(以上、ちくまプリマー新書)、
『自己コントロールの檻―感情マネジメント社会の現実』(講談社選書メチエ)、
『日本はなぜ諍いの多い国になったのか―「マナー神経症」の時代』(中公新書ラクレ)、『かまわれたい人々』(中経出版)。

共著に『変身の社会学』、共訳に『自己論を学ぶ人のために』(以上、世界思潮社)
などがある。

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「2012年 『どうしてこの国は「無言社会」となったのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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