好きなのにはワケがある: 宮崎アニメと思春期のこころ (ちくまプリマー新書 207)
- 筑摩書房 (2013年12月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480689092
感想・レビュー・書評
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思春期に観て、筆者の心に強烈な印象を残した「海のトリトン」。臨床心理士になった彼女が読み解く「どうしてあのアニメに惹かれたのか」。思春期のこころと物語の関係は・・・?
ジブリアニメの持つ不思議な魅力を取り上げ、どうして繰り返し観たくなるのか。なぜ心に響くのか。そのワケに迫る。
「となりのトトロ」
母性の欠如とそれを求める子の暴走、一体感と温もりで癒されるこころ
「千と千尋の神隠し」
自己意識の芽生え、親がブタに見えるとき、ハクの温かい支えの言葉、名前という「呪」、自己の覚醒
モノをばらまいて関心を持ってもらおうとするカオナシの淋しさ、問題を抱え込んでオクサレサマ化してしまう神や、反抗期や虚しさから暴れるカオナシ・・・
湯婆婆(過保護で子供の自立を妨げる母性)と銭婆(子供の自立を支える母性)が示す人間の二面性
「もののけ姫」
アシタカの受けた死のアザの呪い(思春期のキレやすさ、暗い衝動)、旅に寄り添うヤックル(不安なとき、そばにいて変容を見守ってくれる存在)
「魔女の宅急便」
無邪気で元気いっぱいだったキキが思春期を迎え、飛べなくなり(一時的な死)、ジジとの会話もできなくなる
「ハウルの動く城」
ソフィーの呪い(コンプレックス、こころを閉ざす、自信のなさが外面に影響する、自己への否定的な暗示)
ハウルの呪い(外見を取り繕いすぎる、自意識過剰、城の汚さとの混沌、いくつもの名前やペルソナを使い分ける、こころと体の離脱)
「風立ちぬ」
思春期の夢(憧れ)、自立と自由
自身の思春期について振り返れば、なんだかイタかったなぁという思い出も幾つか。変に親に突っかかってみたり、妙にビジュアル系バンドに傾倒したり(この頃のV系は血、暴力、死を扱う歌詞多し)、黒歴史もたくさん。
思春期ってほとんどの人にとっては自己をコントロールしきれない時期なんですね。。
分析はともかく、ジブリ映画を観返したくなります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふむふむ、何かよくわかるなーとおもったら、河合隼雄の本を読み漁った心理学者らしい。
私もかじったので、知識の定着に役立った。
河合隼雄先生の本よまなきゃなー -
ジブリ作品(千と千尋、トトロ、ハウル中心+魔女宅、もののけ)と思春期の親和性について、臨床心理士の立場から。
ジブリ研究・分析自体は数多あれど、そして本文でも述べられているように必ずしもこの著作での分析だけが妥当な読みではないにしろ、「アニメについて、こういう『読み』ができるんだよ」という切り口の見せ方が分かりやすかったので、むしろ中高生にこそ読んで欲しい1冊。 -
本書は思春期のこころの動きを、宮崎アニメに投影して解きほぐしています。スクールカウンセラーとして活躍されてきた岩宮さんの経験として、思春期の子供たちのカウンセリングの場面で、宮崎アニメについて物語るケースが多いそうです。アニメの深い部分で子供たちの心のゆれと繋がる部分を読み解いています。
「好きなのにはわけがある」。読んでみると宮崎アニメだけではなく、なぜ私たちが子供の頃、ファンタジーの世界に浸っていけたのか分かるような気がします。宮崎アニメがここまで意図して作られているかは別として、私たちが物語りの世界に惹かれる理由が分かります。
幼い子にとっての母性との一体感、それを得られない場合のファンタジーの役割と重要性。
(となりのトトロ)
少し大人に近づいて、思春期の入り口に立つとき、それまで守られてきた母性から外へ出て行くために必要な、自己意識の芽生えと絶対的存在であった親の再認識。
(千と千尋のものがたり)
大人になるための通過儀礼を、個人の心の中でこなさなければいけない場面でそれまでの秩序を壊して、思春期の呪いを解いていく不安定さ。
(もののけ姫)
自分と外部との違いを意識し始めたころの、外見イコール内面の呪い。
(ハウルの動く城)
カウンセリングの時には、多くの子供たちから話に出てくるそうです。「ヤックルが欲しいなあ、ヤックルがいたら一人でもさびしくない」「ハク、超いい。あんなふうに言ってほしい」
不安な思春期を通過できるように、千尋の不安を理解し変化を受容できるハク、出口のない不安にもがくとき、アシタカによりそうヤックルのように、全てをを肯定できるような静かな理解者になれるか?
思春期の心の動きを扱った本として、もう少し読み込んでみたい。 -
「宮崎アニメには思春期を読み解くヒントがいっぱい。物語は、言葉にならない思いを代弁し、子どもから大人への橋渡しをしてくれる。作品に即して思春期を考える。
思春期相談室の現場で、どうしてこんなに宮崎アニメの話が出るのか。そんな疑問から、臨床心理士としてのこの分析は始まった。子どもから大人になるときの、言葉にできないさまざまな想いが、「どうしてそれが好きなのか?」から、スリリングにひもとかれる。」
目次
序章 思春期と喪失―『海のトリトン』をてがかりに
第1章 となりのトトロ―世界との一体感に包まれて
第2章 千と千尋の神隠し1―親がブタになったとき
第3章 千と千尋の神隠し2―世界と自分を取り戻す
第4章 もののけ姫と魔女の宅急便―「思春期の呪い」をとく
第5章 ハウルの動く城―私が私でいるために
終章 思春期がもたらすもの
著者等紹介
岩宮恵子[イワミヤケイコ]
臨床心理士。島根大学教育学部教授。聖心女子大学文学部を卒業後、鳥取大学医学部精神科での臨床を経て、臨床心理相談室を開業。2001年より、島根大学で教鞭を執るかたわら教育学部附属こころとそだちの相談室の室長として、またスクールカウンセラーとしても思春期の子どもたちの問題に向かい合っている。2013年より河合隼雄学芸賞選考委員 -
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閲覧新書 -
高1の娘から借りた本。読みやすかった。
自分の思春期の頃や息子や娘たちの日々の言動と重ね合わせながら、なるほどねーと納得しました。
もう一度見たい宮崎アニメも見つかりました。
大人になった今だからこそ理解できることでも、
思春期には理解できないことがある。
色々なことを寛容に受け入れてやれる大人、親でありたいと、この本を読んで思いました。 -
心理カウンセラーをしている友人に勧められて読んだ一冊。宮崎アニメはほぼ観ているのでとても面白く読めた。著者の岩宮恵子さんの本は子供たちをカウンセリングする中から生み出されたものなので、重みがある。