買えない味

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 219
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480816467

作品紹介・あらすじ

晩秋の柿。冷やごはん。土瓶の番茶。日常のなかに、おいしさはある。

感想・レビュー・書評

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  • 平松洋子さん、ファンです(^-^) 「買えない味」、2006.5発行です。キレのある「食」のエッセイです!

  • 一晩寝かしたお芋の煮っころがし、土瓶で淹れた番茶、風にあてた干し豚の滋味……日常の中にこそある、おいしさを綴ったエッセイ集。

    箸置きや蒸籠、エプロン、器だけでも取り皿、豆皿、大皿など、キッチンに見られる道具たちを一つずつ取り上げているのだが、その道具一つからどんどん世界を広げていく著者の洞察力と想像力に感嘆する。
    そしてどうしても引き込まれてしまう文章。絶妙なリズムの文章とセンスが感じられる言葉に絡め取られ、文字に五感(特に味覚)が刺激され、もっともっとと麻薬の如くページをめくる手が止まらなくなる。おいしいものはいじましくともちびちび味わいたいのに、どうしても繰り返し手が伸びて、気づくと無くなってしまっていた、あの感じ。このエッセイ自体が「買えない味」を体現しているように思う。

  • 家でのちょっとしたことを思い浮かべながら、ゆるゆると読んではにやりとして。
    これから自分も、昔のことをこんなふうに思い出すことあるなぁと思いながら読み終えました。
    少しノスタルジックな気分になりつつ、大きめの蒸籠が欲しくなりました。

  • 印象に残った言葉
    -石は使える(箸置き、漬物石)
    -蒸し器は使える(朝から野菜を蒸す)

  •  実に気持ちの良いエッセイだった。
     「味」というから、食材や料理の紹介かと思ったが、主に道具類に纏わる話が多かった。
     箸置き、土鍋、鉄瓶、布巾、晒し、etc. etc...

     使い込めば使い込むほど味わいが増す。これが、著者の道具選びの肝じゃないだろうか。
     使っては水洗い、布巾で水気を拭って幾星霜、うっすら下地の木目の浮き出てくる漆の器。さび止めの白カビが浮かぶまで何度も何度も沸騰、乾燥を繰り返す鉄瓶。
     道具への愛着が滲み出る、まっつぐまっとうな好エッセイ。そんな愛情の籠った道具で供される料理も、勿論、味わい深いに違いない。

     気風のいい語り口に加え、本書は、擬音語擬態語の類が目についた。というか、耳についた。

     箸置きを置く音、「ぱちん」とか、漆を柔らかな布巾で「きゅっきゅっ」と拭き上げ、鉄瓶に対してステンレスのケトルはで沸かす湯は、テンレスに弾ける音が「ちりちりと不機嫌そうだ」と言う。

     味覚のみならず聴覚も気持ちよい。
     またさらに、それらの道具類、食材の写真が2か所にまとめて掲載されていて見ても楽しめる。
     味覚、聴覚に加え視覚でも味わえる、なかなか贅沢な一冊(「指」という章では「そうか、指も舌なのだった!」と触覚にも触れている)。

    「身土不二」ー 身体と自然環境は分かつことができないという言葉が紹介されているが、日本料理の数々は、いろんな感覚と不可分ということが良くわかる好著だ。

  • この本を読んで、鉄瓶を育て白湯を飲む生活に憧れた。南部鉄器を生活に取り入れたのも、この本がきっかけ。読後随分経つが、未だ鉄瓶にはたどり着けておらず、柳宗理さんの薬缶を愛用中。生活にもっとゆとりができたら、憧れの鉄瓶デビュー出来るかな。。

  • 今年になって図書館で借りた本。文章のテンポもよくて読みやすく楽しい。おひつやせいろが欲しくなった。

  • 20141025読了
    台所に関する、こういうリズムのエッセイは読んでいて心地いいから好き。文体がぴったりくるのと、短い章立てがちょうどいい。幸せを感じる。●漆塗りのお椀、使いこんだらこんなご褒美があったのかー。愛おしみながら物を使う幸せ、穏やかでいいなと思う。●サラダスピナー、気になるんだよな。●干し肉。そうか、陽に干すわけじゃなくて風に干すのか。●真っ白な晒しが欲しかったんだった、と思い出した。

  • 空き箱の話分かる!エプロンの話分かる!晒しの便利さ分かる分かる!
    「そうそう!」の連続にアッパレ。
    表現方法も面白く、頭と心がぽっと温かくなるかんじ。それでいて凛としたかんじが心地良い。

    どのページにもキュンとするエピソード、気の利いたユーモアが溢れている。

    空き箱→捨てたいなら棄てましょう。棄てたくないなら手を組みましょう。ぐずぐずうじうじ、腹が据わらないのが一番みっともない。

  • 食にまつわるエッセイ。
    食材のことはもちろんですが、食器やテーブルクロスや箸置き、布巾に調理道具と、食に関する様々なことがテーマになります。

    登場した中で特に印象深く、欲しいなと思ったのは、蒸篭と陶器でできた飯櫃です。
    あと晒し。
    この夏、ブルーベリージュースを作るために初めて晒しを使ったのですが、思いのほか便利だなと思いました。
    便利だと思ったわりに、その後あまり活躍させてなかったのですが、この本を読んでやっぱり便利だよね、と。
    しまいこんだ晒しを、さっそく引っ張り出すつもりです。

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著者プロフィール

平松洋子=1958年、倉敷生まれ。東京女子大学卒業。エッセイスト。食文化、暮らし、本のことをテーマに執筆をしている。『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。著書に『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『食べる私』『忘れない味』『下着の捨どき』など。

「2021年 『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平松洋子の作品

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