緑の影、白い鯨

  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480831866

感想・レビュー・書評

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  • 初めてレイ・ブラッドベリを読むというのならお勧めできない本。レイのファンになってから読むべきだ。でないと散らかした部屋を覗き込んでいるような印象になると思う。
    レイの書いた他の本の中で読んだエピソードとのつながりも面白い。なんだか不思議な話だけれど、最後には納得できる長い話。

  • メルヴィルがどういう意図で『白鯨』を書いたのか未だに解らないのだが、そのメルヴィルになりきって映画脚本を書いたブラッドベリが、この脚本執筆時の追憶を自伝に書いていることを知ってさっそく読んでみた。
    ちなみにわたしはSF詩人レイ・ブラッドベリがとても好きであり、彼の作品を非常に感動しながら読んだものだ。彼が『白鯨』に何を感じ読みとったのかを知ることにより、文学の本質を理解できるのではないかという期待と非常な興味を持って読み始めた。
    そして期待は見事に裏切られた。ジョン・ヒューストン監督とアイルランドで半年間脚本執筆をするのだが、ほとんどは訳の解らないホラ話で終始している。チャンドラーの粗悪なコピーのような過剰な比喩、なんらユーモアを感じさせない洒落や気取った会話。個性的な人々を表現したいのか、現実的ではないエキセントリックな人々に奇行を演じさせたりしている。途中でこれは自伝ではなく、ほとんどが創作で以前発表した小説を幾つも挿話として組み込んだ構成だと気付いたのだがそれにしても読み難い。
    そして、肝心な『白鯨』はほとんど出てこない。ブラッドベリは何が言いたいのかと思っていたら、最後の1,2章で突然メイヴィルが彼に憑依して、一晩で『白鯨』を仕上げてしまった。何なんだこれはと思っていたが、この作品そのものが『白鯨』へのオマージュなのに違いない。
    と、しか思えないのだが、それにしても『白鯨』は奥が深い。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】

  • どこまでが事実に即しているのかは定かでないが、ブラッドベリ自身の体験を基にした小説らしい。
    これといった大きな事件は起こらないので、ストーリーを楽しみたい人は全く面白くないと思う。
    豊かな比喩表現などをゆったり味わいながら読んだ。
    アイルランド人のハチャメチャぶりが、最初は当惑するけど段々面白くなる。

  • アイルランドという国に少しでも興味があれば、ものすごく楽しめる一冊。ブラッドベリがJ.ヒューストン監督のもとで「白鯨」の脚本をアイルランドで執筆したときのことを自伝的に綴る長編で、450頁を長いと思わずに読み切った。さしはさまれるエピソードのすべてがアイルランド的で、パブの情景がたまらなく良い。時をおいてもう一度出会いたい本。

  •  サッカーのアイルランド代表が好きだ。
     基本的に洗練されたところは何もないカウンターサッカー。4人のディフェンダーを並べて、その前に更に守備的ミッドフィルダーを置くのが基本。ノッポのフォワードがいればそいつを標的に、足の速い奴がいればそいつをひたすら走らせるというロングボール戦法。強豪相手に善戦はするが秀でた特性は少ないので、結局大した成果は上げられない。W杯に出てもベスト16止まり…あ、全試合引き分けのままベスト8までしがみ付いたこともあったっけ。こんな具合に泥臭くて魅力に乏しいチーム。
     それでも、彼らの試合を観た後は、なんだかホッとする気分になる。良いものを見せてもらったなあ、という感慨が湧いてくる。
     それは恐らく、彼らがゲームの中で、勝負という結果を受け入れる以前に、彼らなりのスタイルを全うすることの大事さを観る者に教えてくれるからだろうな。
     彼らのスタイルは勝利至上主義の結果として確立されたものではなく、逆に勝利するために必要ではない、手練手管や駆け引きを排した余計な愚直さの結晶、彼らがプレーのなかで描く「夢」がピッチで体現されたものだと思う。「夢」であるから勝負という「現実」の前では、いつだって垢抜けなくて泥臭い負け犬でしかないのだけど、それでも彼らは観る者に「夢」を見せてくれる。

     ブラッドベリが、アイルランド系の映画監督ジョン・ヒューストンの『白鯨』の脚本執筆のためにアイルランドに渡り、悪戦苦闘する様を描く物語。
     まるでアイルランド代表の試合を観ているようだ。もちろん読後感も。
     寒々しく湿っぽい空間に転がる泥まみれのボールのように、だらしなく破天荒で嘘つきで…なのにどこか愚直な人間ばかり出てくる物語。
     後半の“短距離走”の話は爆笑しつつも、胸に浸みる。
     こんな無駄なことばかりやって、こんな些細なことばかりに気を取られてるから、いつだって成功できないし垢抜けないままなんだよと思いつつ、こういう愚かさと付き合う人生も悪くないと思わせてくれる。

  • やー読むのにめっちゃ時間かかりました。
    それは私が海外の作家を読み慣れていないせいもあるんだろうけど。

    この小説まるまるがっつりアイルランドって感じでした。
    わかりにくいというか捻くれているというか自由というか。
    登場人物たちもみんな厄介だなぁって印象なんですけど、
    でも誰も憎めないんだよねぇ。不思議だ。

    私たちはアイルランドを訪れたブラッドベリの目線から物語を見る。
    アイルランドを見て、人に触れて振り回されて、惹かれる。
    その感覚は面白かったなぁ。
    でも読んだあとはちょっとぐったりしました。

    印象に残ってるのは、ヒューストンを訪ねてきた女性との会話のとこ。
    「「きみに安息を与えるためになにか私に出来ることはある?」
     「ないわ」彼女は言う。「私をぼろぼろにしてしまったのはあなたではないから」」

    他にも会話がいろいろ面白いんだけど、
    ゆっくり咀嚼しないとわかんないから読むのに時間が必要だったのかなぁ。

  • ちいさなエピソードを楽しく読んだ。独立して単体の物語として成立する章もあって何度もおいしく味わえる。アイリッシュの気質がそんなに濃厚だとは。暗い気候、低い空、沼地じっとり、経済壊滅で人々は諦観的で執着しないタイプ。。。とアイルランドの国と人々について勝手に思っていたのだけれど。。。うーん。その思い込みはどこからきたのだ。

  • ブラッドベリが、映画「白鯨」の脚本を書いた時の、アイルランド滞在記。
    ジョン・ヒューストン監督に振り回される様子がおもしろかった。
    川本三郎さんの訳なので、読んでみました。

  • 1953年、ブラッドベリは映画監督、J.ヒューストンの依頼で映画「白鯨」
    の脚本執筆のため、アイルランドに滞在した。J.ヒューストンと「白鯨」に
    翻弄されたブラッドベリの若き日々を描いた、自伝的長編小説。

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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