エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480847539

作品紹介・あらすじ

時代の趨勢を見極め、その先を見通す知性をいかにして獲得するか。現代を代表する論客が、自身の思考の極意を世界で初めて語りつくす。完全日本語オリジナル。

感想・レビュー・書評

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  • フランスの歴史人類学者のエマニュエル・トッド氏による学術書というかエッセイというか、カテゴライズが難しい本だった。

    トッド氏の考えが数々の本から得られたアイディアや知識によりそれらが混合、発酵し、自らの考えになっていくという過程が描かれている。

    このコロナ禍にある世界情勢の中で、「日本に向けた本」ということだけでも本書は読む価値がある一冊。

  • エマニュエル・トッドは、フランスの高名な歴史人口学者・家族人類学者。書評の紹介で本書を知り興味を持った。
    内容は、筆者の学者・研究者としての方法論の紹介が中心。学者を志す学生にとっては、とても参考になるのではないかと思った。
    面白く読める部分がない訳ではないが、アカデミアの世界にいない者にとっては、自分の普段の生活とは少し離れたことが書かれており、時に読むのが難しい。

  • かつてソ連崩壊をいち早く予見し、近年にもイギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権誕生などの予測を的中させてきたエマニュエル・トッド。彼が自らの「知的生産の技術」を余すところなく明かした一冊だ。

    といっても、お手軽なライフハックのたぐいを集めた本ではなく、もっと根源的な「思考の極意」の書である。

    日本オリジナルの語り下ろしと聞いて、「薄っぺらい内容かも」という危惧があった。談話をまとめた本は、多忙な売れっ子の本を無理やり出すための粗製濫造になりがちだから。

    だが、それは杞憂であった。語り下ろしであることが、むしろ平明さという美点につながっている。さりとて内容はまったく薄くはなく、むしろ濃密だ。

    自らの知的来歴を振り返るなかで、研究者・著作家としての特徴、ひいては独自の思考法に、詳細な自己分析を加えている。

    その分析は、トッドがなぜ数々の予測を的中させてきたのかの〝種明かし〟にもなっている。

    著者は本書で、『最後の転落』や『家族システムの起源』などの代表作について、着想・調査・思索の舞台裏を明かしている。
    執筆プロセスを辿ることを通じて、著者の卓越した思考技術の一端に触れることができる。

    著者は自らを、「リサーチャー」(調査者)ではなく「発見者」だと定義する。
    そして、自分にとって思考の本質とは、「現象と現象の間にある偶然の一致や関係性」 を発見することにあると語る。ここに著者の思考術の根幹があるのだろう。

  • 1.表紙をみて何となくの気持ちで購入しました。

    2.歴史学者として名を馳せている著者が自身の思考についてどのように考えているかについて書かれた本です。著者は学者として数々の論文を執筆してきたり、メディアに出演してきましたがあくまでも自分の成果について述べたものです。しかし、今回は自身の思考についてです。普段はどのように思考をしているのか、習慣化しているものは何なのかなど、今までとは違った視点が書かれた本です。

    3.一般的な学者世界からは敬遠されがちの著者がどのような思考をしているのかが気になりましたが、根本的には過去のデータを検証すること、日ごろからストックを増やしておくこと等を習慣化していることに変わりはありませんでした。ただ、一点違うところは過去の先輩たちに負けないところです。自身の論理をしっかりと自信をもって言語化していることでここまでのことが出来るのだと思います。

  • トッド自身のこれまでを振り返りながら、その思考プロセスについて書かれた本。歴史的視点の大切さや読書法、データ・現実を重視する視点など、なるほどと思わせる内容。ただ当然と言えばそれまでだが、フランス人学者である著者のヨーロッパ的な考え方がベースにあるため、やや複雑&同意し難い記述も見られるように感じた。

  • 著者の本は、いくつか読んできて、視点の鋭さと深さに感銘を受けてきました。
    昨年は大分断を読み、次に読もうと思っていた本。

    読者が本書を読んで、再現するのは難しいが、著者の考え方がよく分かる内容。
    一般のビジネスパーソンにも必要な考え方が盛り込まれており、大局観や長期視点を得るために必要な要素が散りばめられている。

    参考になった内容は下記の通り。
    ・直感やアイデアが浮かばない理由
    ①自分の中に無意識でランダムな考え方がない
    ②ある考えが許されない・出来ない社会となっている可能性がある
    ・グループシンク
     小さなアトム化した信条を、拠り所にする人々が溢れている
    ・現実を直視する条件として「外在性」が必要
    ・マイケル・ヤング「メリトクラシーの法則」
    ・未来を見たいなら、歴史的な観察から考察するのは必要不可欠(長期的な傾向を捉える)
    ・相関係数が0.9となったら、重大な間違いを犯しているかもしれないと気づくべき
    (社会科学では不完全な数値が含まれるため、相関関係を弱める)
    ・価値観ではなく、知性の戦いが重要(アウトプットでの戦い)
    ・大学では思考することを学ぶが、同時に、自由に思考することを阻止する
    ・人間というのは不穏な事態に目をそらす能力を備えている
    ・思考から予測のフェーズ
     経験主義→対比→芸術
    ・知識人に必要なのは、プロフェッショナリズムである
    ・芸術的な学者の条件は、リスクを負う、思い切る勇気がある

  • そもそも著者は「思考」という活動の専門家ではなく、歴史人口学の研究者。自身がどのような研究を行っているかを紹介しているのであって、タイトルから期待した参考になる思考地図を得られなかった。

  • たまたま本屋さんで立ち読みして、思考を広げるヒントが得られそうだと感じたので購入。

    響いたメッセージとしては
    ・リサーチャーではなく発見者であれ
    ・アウトサイダーであれ
     I am of the world but not in the world
    ・真実は歴史とデータにあり
    ・創造的知性が本能を解放するとき、芸術性を宿したプロフェッショナルとなる

    フランスの学術界では相手にされないという知性が日本人向けに本を書くとは、またおもしろい。

    研究者の端くれとして、参考にできる部分がたくさんあった。

  • 話題の歴史学者である著者の研究過程を紐解く本作。
    ソ連の崩壊、リーマンショック、EUの破綻(イギリスの離脱)を予見できたのは、どのような思考回路から出てきたものなのか。
    とにかく沢山の書物に触れること。広い視野から湧き出るインスピレーション。そして検証には嘘の無い数値データを用いる。家族制度、識字率、出生率、死亡率等を組み合わせると見えてくるという。
    すごいなあ。の一言。正直、凡人には解りません。

  • ここにある思考地図はよくある分析アナリストの基本のようなものだ。トッド氏の重要視している点は、事実に基づく統計数値データを如何に先入観なくして分析・出力すること、さらに、史実に基づく歴史観比較が付加されることにある。歴史は繰り返すの如く事件事故、災害も過去の史実が参考になる場合も多く、特に政治家の政策などは「前例」を重視する人間が多いのはそこに理由がある。だが、悪い事に過去20〜30年の歴史でも政府の政策で最新技術を駆逐した対処にはなっていないのが残念だ。今回のコロナ対策で、多くの国々が「マスク・対処機器」がほとんど自国以外であったことの誤りが浮かび上がったことは今後の政策にも参考になったと思う。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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