日本文明圏の覚醒

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480864000

作品紹介・あらすじ

間断なく進行する知的レベルの低下、価値観の端末の増加による価値判断の多様化、そして国家理性の欠如と繰り返される共同体へのノスタルジー…東アジアの異時代国家群に囲まれて立ちすくむ日本の現実を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • まだ一章しか読んでないけど、メモ代りに書いておく。日本の儒教の受容に関する考察のところだけでも読む価値ある。論語の全文中、日本でよく使われる文はわずか三割しかないことやそれらの文に明らかな偏りがあることなど指摘していて面白い。

  • まだ一章しか読んでないけど、メモ代りに書いておく。日本の儒教の受容に関する考察のところだけでも読む価値ある。論語の全文中、日本でよく使われる文はわずか三割しかないことやそれらの文に明らかな偏りがあることなど指摘していて面白い。

  • 面白エピソード満載の東アジア思想エッセイ《赤松正雄の読書録ブログ》

     随所で笑えるエピソードが満載された、エッセイ風の日本文明にまつわる学術書。古田博司『日本文明圏の覚醒』は、文字通り難しいことを易しく解き明かしてくれる知的に楽しい本である。古田さんは私より8歳ほど年下の大学の後輩になる。広い意味での中嶋嶺雄先生の門下とも言え、随分前に同先生の紹介でお会いして以来、親しい関係になった。当代一流の朝鮮半島の専門家で、かの地の普通の人たちの生活やら民族柄を語らせて、この人の右に出る人はいまい。

     これまで彼が名だたる賞をかっさらった『東アジアの思想風景』やら『東アジア・イデオロギーを超えて』と比べると、やや読みやすい。何しろ下町の質屋の息子だった頃の阿漕な親父の商売ぶりの描写から始まって、行く先々で「廃墟」に出くわす青年期の風景を経て、ようやく定職にありつく激動の前半生はそこらの面白エッセイよりもかなり上を行く。フリーターの子どもさんに胸ぐらをつかまれるあたりは切ない。あとがきに「以前中学校の同窓会で、『お前勉強できたっけ?』といわれたほど、私は孤独に修養時代を終えたのである」とのくだりを発見して、にやりとせざるを得なかった。私なども同様な責苦にいつも会うが、当方は学者になったわけではない。古田氏の不本意さが偲ばれる。いや、快感を感じているかも。

     東アジアは、プレモダン(北朝鮮)、モダン(中国、韓国)、ポストモダン(日本)が混在する。異時代国家群がせめぎあう空間である。それゆえ、東アジア共同体などといった融合を目指すより、違いを意識しつつ「サラッと付き合う」ことが大切と説く。「アジア主義」との決別と共に、眠れる日本文明を目覚めさせる、骨太の思想の開陳に胸ときめく思いを禁じえない。

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著者プロフィール

1953年、横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部史学科東洋史学専攻卒業、慶應義塾大学大学院文学研究科東洋史専攻修士課程修了。ソウル大学大学院国語教育科に留学。博士(法学)。韓国の延世大学・漢陽大学の日本語講師、下関市立大学経済学部専任講師、筑波大学社会科学系助教授を経て、2000年から筑波大学社会科学系教授を務め、2019年に退官。2003年から2005年には第1回日韓歴史共同研究委員会委員、2007年から2010年にも第2回日韓歴史共同研究委員会委員幹事を務めた。東洋政治思想史や東アジア文化論、韓国社会論、北朝鮮政治を専門にしながらも、西洋の哲学・思想をその独自の視座から読み解く著作も発表。著書に『悲しみに笑う韓国人』(ちくま文庫)、『東アジアの思想風景』(岩波書店。1999年度、サントリー学芸賞)、『東アジア・イデオロギーを超えて』(新書館。2004年度、読売・吉野作造賞)、『ヨーロッパ思想を読み解く』(ちくま新書)、『使える哲学』(ディスカバー・トゥエンティワン)ほか多数。

「2020年 『旧約聖書の政治史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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