美術、応答せよ!: 小学生から評論家まで、美と美術の相談室 (単行本)
- 筑摩書房 (2014年7月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480873743
感想・レビュー・書評
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この本は『美術』に対して寄せられた質問を、美術家の森村泰昌さんが答えたもの。
質問者は美術に関わりのある方から一般の方まで。
質問内容は「裸体作品がハズカシイ」「オリジナルのものって?」「本当にみたまま(の感想)でいいんですか?」「表現者として震災に向き合うのは可能ですか?」「作品が完成するというのは、どういう状態ですか?」など。
いろんな角度から飛んでくる『質問』を森村さんが真摯に誠実に『応答』していく。
質問の意図を的確にくみ取ろうとし、質問者達が置かれている状況を想像しながら、丁寧に言葉を紡いでいるのが好感を持った。まさに『真剣勝負』。
『応答』は「こういう話題がくるのか」と翻弄され、「こういう結論にたどり着くのか」と目から鱗が落ちた。
森村さんは1951年生まれ。
1985年にゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作。以降一貫して『自画像的作品』を作り続けている方。
美術史にも造形が深く、いろいろな画家や作品が引き合いに出される。特にマルセル・デュシャンがお好きなのか3、4回名前と作品が出てきた。
ディエゴ・ペラスケスの絵画『ラス・メニーナス(侍女たち)』の写真を鑑賞しつつ彼の評を読んでいると、私まで感受性が豊かになったかのような錯覚が起こる。
文章にも定評があり、著書も多数。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★▼「美術、応答せよ!」森村泰昌。2014年筑摩書房。森村さんのことは不勉強で全く知りませんでした。知人がこの本を読んで、「オモシロかった」と確かSNSで書いているのを見て、「読んでみようかな」と。
▼とにかく色んな人から美術についての質問を貰って、それにとにかく答えていく、という本。「ちくま」に連載していたものだそう。そして森村さんと言うのは、マリリン・モンローやゴッホにかなり克明に自らが「なりすまして」、それを写真に撮って…というアートで名を馳せた美術家さんだそう。
▼すごく長い時間をかけてちょっとづつ読んだので、細かくは思い出せません。でも、「ああ、美術で食べている、美術の仕事をしているひとは、なるほどこういう疑問や感情や不満や情熱を持って生きてるんだなあ」というのが伝わるだけでも、単純に面白かった。 -
2023.9.1市立図書館
まえに「ちくま」の連載で読んでいたものをまとめた単行本だが、ちょっと思いだして読み返したくなったので、借りてみた。
美術・芸術についても、そのほかのさまざまなことについても、誠実で信頼できる人だなと思える。
好きなのは、4(本当に見たままでいいんですか?)、17(作品が完成するとはどういう状態ですか?)、18(思い通りに絵を描く技術は普及できる?!)、26(南伸坊さんのお仕事と、どこが違うのですか?) -
パラパラとめくって読んでいたら字が多いのに、
なんだか興味を持ちました。
実際に読んでみると、確かに文字は多かったけど
すごく参考になりました。 -
様々な有名人の変装を主にしたセルフ・ポートレート作品でお馴染みの現代芸術家が、小学生から大学教授までバラエティに富む33名から寄せられた芸術・美に関する37の質問に答えた問答集。これが本当に面白く、どの回答も切れば血が流れるような真摯さに溢れていて感動さえする。
例えば、高校2年生から寄せられた「日本にも浮世絵など優れた芸術はあるのに、なぜヨーロッパだけが芸術の都といわれるのか?ずるくないか?」という素朴な質問。
これに対して、著者はまず、芸術におけるヨーロッパのずるさを全肯定する。一方、目線を芸術以外に向ければ、戦争もなく餓えて死ぬこともない日本に対して”ずるい”と思う国・地域もある、という事実も述べた上で、
1.「ずるい」のは相手だけじゃない。
2.「ずるい」ことを避けるため、世界の中心になどならないほうがよい。
という2つのテーゼを引き出す。そして、その結論として、一つの狭い観点だけで特定の地域を崇め奉り、それに対して「ずるい」と思うよりも、多面的な観点で世界の国・地域を相対化することの重要性を説くのである。
質問に対して真正面から答えつつも、論理の鮮やかさによって、質問者に新たな気づきを与えるという問答の理想形ともいえる完璧な回答。そして何よりも、文章も非常に巧い。 -
月刊誌「ちくま」連載。32名からの美術についての質問疑問に回答した美術エッセイ。
質問者は小学生から、美大生、美術の先生、美大生の親、荒木経惟、山口晃、鷲田清一、野村萬斎まで様々。「裸体作品がハズカシイ」「ヨーロッパばかりでずるい」「南伸坊さんのお仕事と、どこが違うのですか」「作品はオリジナルで見てほしいですか」などなど回答が気になる質問が並ぶ。
テレビや本で見る森村泰昌さんには、喋りも文章も上手で飄々とした印象があった。この本の応答を読むと、もちろん大阪人らしくユーモアにあふれているのだけれど、誠実で熱い印象が加わった。回答に寄せて、美術に関わる人すべてを応援する本。 -
美術との関わりかた、接し方。こんな美術の先生がいたらもっともっと興味をもつ子が増えるんだろうなあ。
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去年、横浜のビエンナーレに行ったときに、美術館のショップに山積みになってた本だな。彼がアートディレクターだった。セルフポートレートのイメージしか無い人だったので、どんなことを考えている人なのかなと楽しみに読んだのだけれども、いまいちだった。浅い回答としか思えないものばかりで、残念。
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大阪を代表する芸術家、森村泰昌のエッセイ。(のようなもの?)
様々な分野、様々な年齢の人からの質問に答えるという形式で書かれている。
質問は「美術とそうでないものの境目は?」と言った素朴でありつつ、深く考えを回らせられるものまていろいろ。
森村さんらしい回答もたくさんあるけど、美術史に関するコメントなどは分かりやすく的確で、やっぱり森村さんは美術の人なんだなぁ...と実感。