美術、応答せよ!: 小学生から評論家まで、美と美術の相談室 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480873743

感想・レビュー・書評

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  • この本は『美術』に対して寄せられた質問を、美術家の森村泰昌さんが答えたもの。

    質問者は美術に関わりのある方から一般の方まで。
    質問内容は「裸体作品がハズカシイ」「オリジナルのものって?」「本当にみたまま(の感想)でいいんですか?」「表現者として震災に向き合うのは可能ですか?」「作品が完成するというのは、どういう状態ですか?」など。

    いろんな角度から飛んでくる『質問』を森村さんが真摯に誠実に『応答』していく。
    質問の意図を的確にくみ取ろうとし、質問者達が置かれている状況を想像しながら、丁寧に言葉を紡いでいるのが好感を持った。まさに『真剣勝負』。
    『応答』は「こういう話題がくるのか」と翻弄され、「こういう結論にたどり着くのか」と目から鱗が落ちた。

    森村さんは1951年生まれ。
    1985年にゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作。以降一貫して『自画像的作品』を作り続けている方。
    美術史にも造形が深く、いろいろな画家や作品が引き合いに出される。特にマルセル・デュシャンがお好きなのか3、4回名前と作品が出てきた。
    ディエゴ・ペラスケスの絵画『ラス・メニーナス(侍女たち)』の写真を鑑賞しつつ彼の評を読んでいると、私まで感受性が豊かになったかのような錯覚が起こる。
    文章にも定評があり、著書も多数。

  • ★▼「美術、応答せよ!」森村泰昌。2014年筑摩書房。森村さんのことは不勉強で全く知りませんでした。知人がこの本を読んで、「オモシロかった」と確かSNSで書いているのを見て、「読んでみようかな」と。

    ▼とにかく色んな人から美術についての質問を貰って、それにとにかく答えていく、という本。「ちくま」に連載していたものだそう。そして森村さんと言うのは、マリリン・モンローやゴッホにかなり克明に自らが「なりすまして」、それを写真に撮って…というアートで名を馳せた美術家さんだそう。

    ▼すごく長い時間をかけてちょっとづつ読んだので、細かくは思い出せません。でも、「ああ、美術で食べている、美術の仕事をしているひとは、なるほどこういう疑問や感情や不満や情熱を持って生きてるんだなあ」というのが伝わるだけでも、単純に面白かった。

  • 2023.9.1市立図書館
    まえに「ちくま」の連載で読んでいたものをまとめた単行本だが、ちょっと思いだして読み返したくなったので、借りてみた。

    美術・芸術についても、そのほかのさまざまなことについても、誠実で信頼できる人だなと思える。
    好きなのは、4(本当に見たままでいいんですか?)、17(作品が完成するとはどういう状態ですか?)、18(思い通りに絵を描く技術は普及できる?!)、26(南伸坊さんのお仕事と、どこが違うのですか?)

  • パラパラとめくって読んでいたら字が多いのに、
    なんだか興味を持ちました。
    実際に読んでみると、確かに文字は多かったけど
    すごく参考になりました。

  • 京都・新風館oyoy発見シリーズ『美術、応答せよ!』(森村泰昌)。

    この本読んで、

    「美術を考える事って、生き方を考える事に繋がっているような…」と

    思った次第です。

    その影響を受けた文が以下7点抜粋。(ホントはもっとある!!!!!)

    ❶オリジナリティって、作り出すものではなく、おもしろいものを作ろうと努力していたら、勝手に向こうからやってくるもの

    ❷ みんながアッチを向くなら、私はコッチを向こうかな、世の中にそういうヘンクツ者がいたっていいじゃないかと私は思うのです。そしてこの、みんなと同じアッチじゃなく、誰もが興味を示さないコッチを向く姿勢にこそ、芸術家のあるべき姿を見る思いもするのです。

    ❸ 「これだ」と決め、一生懸命やるのですが、やがて「これではない」と感じるときがやってきます。そしてまた別のことをやる。

    ❹ 私はゴッホになったことが嬉しかったのではなく、ゴッホにもなれるという私の能力の発見に喜びを覚えたのだ。

    ❺ 「迷い」とは、優柔不断で決断力に欠けるネガティブな性格なのではなく、むしろ多様な「私」になりえる才能である。

    ❻ 芸術の「発表/発売」がタイムラグなしに「結果」となって現れるとは限りません。レオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールだって一度は忘れられたのです。

    ❼ ひとりでやらなきゃなにも作れない。しかし同時に、ひとりきりでは、その時代の文化は到底生み出せません。違っていることではなく、ひとりひとり個別に悪戦苦闘していたことが、ふと気がつくと同じ方向をめざしていたという、この、時代精神の共有性が文化を生み出すのです。

    ----------------

    あげればキリがないほど、この本にはつまってました。

    読書において「どこにどんな文があるのかを見つけるのが楽しくて本読んでる」っていうのが目的かもしれませんが、

    自分でもよくわかっておりません。

    読んでて元気でるからかな。

    それから……

    絵についてずっと感じてた疑問の答えがこの本に書いてありました。

    「絵に描かれた人物って、写真より怖い」と今でも思うのですが……

    どうやらこれは、「絵が「ささやいている」からっぽい。

    「絵というものは意外に謙虚な性格で、自分から「私を見なさい、私の言うことを聞きなさい」などと、見る者に鑑賞を強いることはありません。壁に掛かり、そして何事かを小声でささやいているだけ。観る者がひとりもいなくても、夜も昼もささやきつづけている。そのかすかな「ささやき」にふと気づき足を止める者だけが、しかるべき鑑賞者となる。」

    と本書で書かれているのですが、

    絵に対して無関心だったら、コワイもクソも感じないはずで。

    どうやら「ささやき」を聞いてしまったらしい。

    小学校の渡り廊下に飾られたモナリザは一体何をささやいてたんだ……

    いや……

    今なお何をささやいているんだ……

    と、思ったら「ホホホホホ」という笑い声が浮かんでしまった。

    ………というホラー要素を持ち込みたがる悪い癖が出てしまった。

    どっかで展示してないかなぁー!

    ちゃんと話聞くよ(観るよ)!!!

  • 様々な有名人の変装を主にしたセルフ・ポートレート作品でお馴染みの現代芸術家が、小学生から大学教授までバラエティに富む33名から寄せられた芸術・美に関する37の質問に答えた問答集。これが本当に面白く、どの回答も切れば血が流れるような真摯さに溢れていて感動さえする。

    例えば、高校2年生から寄せられた「日本にも浮世絵など優れた芸術はあるのに、なぜヨーロッパだけが芸術の都といわれるのか?ずるくないか?」という素朴な質問。

    これに対して、著者はまず、芸術におけるヨーロッパのずるさを全肯定する。一方、目線を芸術以外に向ければ、戦争もなく餓えて死ぬこともない日本に対して”ずるい”と思う国・地域もある、という事実も述べた上で、

    1.「ずるい」のは相手だけじゃない。
    2.「ずるい」ことを避けるため、世界の中心になどならないほうがよい。

    という2つのテーゼを引き出す。そして、その結論として、一つの狭い観点だけで特定の地域を崇め奉り、それに対して「ずるい」と思うよりも、多面的な観点で世界の国・地域を相対化することの重要性を説くのである。

    質問に対して真正面から答えつつも、論理の鮮やかさによって、質問者に新たな気づきを与えるという問答の理想形ともいえる完璧な回答。そして何よりも、文章も非常に巧い。

  • 月刊誌「ちくま」連載。32名からの美術についての質問疑問に回答した美術エッセイ。

    質問者は小学生から、美大生、美術の先生、美大生の親、荒木経惟、山口晃、鷲田清一、野村萬斎まで様々。「裸体作品がハズカシイ」「ヨーロッパばかりでずるい」「南伸坊さんのお仕事と、どこが違うのですか」「作品はオリジナルで見てほしいですか」などなど回答が気になる質問が並ぶ。

    テレビや本で見る森村泰昌さんには、喋りも文章も上手で飄々とした印象があった。この本の応答を読むと、もちろん大阪人らしくユーモアにあふれているのだけれど、誠実で熱い印象が加わった。回答に寄せて、美術に関わる人すべてを応援する本。

  • 美術との関わりかた、接し方。こんな美術の先生がいたらもっともっと興味をもつ子が増えるんだろうなあ。

  • 去年、横浜のビエンナーレに行ったときに、美術館のショップに山積みになってた本だな。彼がアートディレクターだった。セルフポートレートのイメージしか無い人だったので、どんなことを考えている人なのかなと楽しみに読んだのだけれども、いまいちだった。浅い回答としか思えないものばかりで、残念。

  • 大阪を代表する芸術家、森村泰昌のエッセイ。(のようなもの?)
    様々な分野、様々な年齢の人からの質問に答えるという形式で書かれている。
    質問は「美術とそうでないものの境目は?」と言った素朴でありつつ、深く考えを回らせられるものまていろいろ。
    森村さんらしい回答もたくさんあるけど、美術史に関するコメントなどは分かりやすく的確で、やっぱり森村さんは美術の人なんだなぁ...と実感。

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著者プロフィール

1951 年大阪市生まれ。1985年にゴッホに扮したセルフポートレイト写真でデビューして以降、国内外で作品の発表を続ける。近年の個展に「森村泰昌:自画像の美術史——「私」と「わたし」が出会うとき」(2016年、国立国際美術館)、「Yasumasa Morimura: EGO OBSCURA」(2018-19年、ニューヨーク、ジャパン・ソサエティ)、「M 式「海の幸」——森村泰昌 ワタシガタリの神話」(2021-22年、アーティゾン美術館)等。ヨコハマトリエンナーレ2014「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」では、アーティスティック・ディレクターを務めた。2018 年には大阪・北加賀屋に自身の美術館「モリムラ@ミュージアム」が開館。執筆活動も精力的に行い『自画像のゆくえ』(2019年、光文社新書)をはじめ多数の著書がある。

「2022年 『ワタシの迷宮劇場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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