- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480878625
作品紹介・あらすじ
小津安二郎『お茶漬の味』から『きのう何食べた?』『花のズボラ飯』まで、家庭料理はどのように描かれ、作られてきたのか。
感想・レビュー・書評
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昔懐かしいドラマや料理研究家。映画、小説、雑誌、漫画などを通して家庭料理の変遷がうかがえて面白かった。出版から10年経った。その間どこが変化し、どんな現象が現れたか。変わってない部分はどんなところか。知りたい。
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ふむ
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食
歴史 -
『きょうの料理』のようなテレビの料理番組や、
ドラマ、映画、雑誌、レシピ本、マンガなどのメディアを通して、
昭和初期から現代までのほぼ八十年にわたる
家庭料理の変遷を冷静に分析している。
そしてそのレシピの裏にある、
「女性の意識と社会の変化」を丁寧に読み解いている。
このような社会学視点から社会が抱える課題に切り込んだ
「食」に関する書物は今まで読んだことがなかったので
とても新鮮に映った。
「第四章 食卓の崩壊と再生――2000年以降」からが
特に興味深く、夢中になって読み進めてしまった。 -
昭和以降の日本の家庭料理の歴史が、書籍や映画、ドラマの中での描写を織り交ぜながら、わかりやすく解かれていた。
第二次世界大戦以前と敗戦以降の日本の環境は、台所事情も含めて大きく変わり、食の環境は豊かになっていった。そして、昭和から平成へ。
「食」に限らず平成に入ってから世の中は大きく変わったと、著者と同年代の私も実感している。いいことだけではない、さまざまな問題だってあることも。
雑誌Martのくだりでは、自分が感じたのと似たようなことが書かれていて笑ってしまったが、改めて文章にまとめられた形で読むことで、頭の中がすっきりした。
とてもいい本に巡り合えて嬉しい。 -
383.81
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昭和から平成にかけて日本の食卓の遍歴を考察する。古くから日本のテレビドラマにおいて家族の食卓に和食が並ぶのは古き良き日本のイメージである。それなりに裕福であれば既に食卓は洋食であったであろうと著者は指摘する。
小津安二郎の映画『お茶漬けの味』にみる夫婦間の育ちの格差、テレビドラマ『金曜日の妻たちへ』にみるそれぞれの女性キャラクターの料理スキル、成田美名子の漫画『エイリアン通り(ストリート)』家出少女で料理人の翼が、固いパンをリメイクしたシャルロットケーキをつくるシーン、砂漠に金塊掘りに行く旅のキャンピングカーで具合が悪くなって倒れたとき「冷蔵庫の牛タンを調理しなくちゃ」と彼女が言うシーン。あれは調理場という自分の居場所の確保であった。
NHKの長寿番組『きょうの料理』にみられる日本の家庭の食卓のうつりかわり、婦人雑誌における家庭での女性の立ち位置の指南、電化製品の普及により主婦の調理も変化していく。
70年台になると料理研究家と称する女性が登場。入江麻木(小澤征爾の妻の母)はロシア人の夫を持ち、舅にロシア料理を習う。自宅は芸術家が集うサロンとなり、これが本や雑誌で紹介されることによって、庶民があこがれるセレブのホームパーティの原型となる。
人気となった料理テレビ番組“料理の鉄人”で中華の鉄人・陳建一を家庭料理で破った小林カツ代は主婦と呼ばれることを嫌った。“料理の鉄人”はプロ同士の対決であり、それはプロにも主婦に対しても失礼であると主張するこの潔さ。
90年台に登場する栗原はるみは「主婦である」ことを全面的にアピールすることによって社会との断絶を恐れる主婦からの共感を得る。ここでも夫と子供を喜ばせる幸せな家庭のイメージの演出が高まる。
専業主婦を家に囲うのがサラリーマンの甲斐性とされた時代から、男女均等法により女性も外へ働きに出るようになり、さらに料理をしなければ女じゃないという終わらない葛藤、そして料理男子の誕生へと続く。
近年では、槇村さとる『イマジン』(母と娘)、篠田節子『百年の恋』(キャリア女性とオタク)、水沢悦子『花のズボラ飯』(単身赴任の夫を待つ妻)、よしながふみ『きのう何食べた?』(ゲイのカップル)に見る、台所における人間関係の変化。有名どころの料理漫画はほぼ抑えてある。
例として紹介されている作品を観ていない、読んでないものもここで取り上げるエピソードやセリフの紹介は興味深く、実際にその作品を手に取りたくなる。
終盤は最近の料理映画のタイトルの羅列になっていて、これらも深く掘り下げてほしかったが、文字数の関係だろうか、それでも全体的にかなり読み応えがある情報量。
これを手にする読者自身も、おそらく自分の家族や料理への向き合い方を改めて振り返ることになるだろう。本や映画好き、食べることも好きなひとが喜ぶ良書。 -
文化系トークラジオLIFEの「料理の思想2013」回で激オシされてたので読んでみた。これはおもしろい。私、母、祖母世代の家庭の食事環境の移り変わりとか、その時代の主婦はどういう立場でごはんつくってたのか知れる。
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最近ワンプレートの料理がまとめてチンできるチルド商品を目にすることが多く、食事はここまで楽になったか!と感慨深いものがあります。子供のいる家庭でも料理を全く作らないという選択肢があってもいいのでは。。。と思う私は、筆者の主張と相容れない部分があるでしょう。それでも、料理を楽しむことは豊かなことだと思いますし、今まで読んだ食文化系の本の中では、際立って面白いし、読みやすい本でした。
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昭和前期から21世紀に至るまでの日本の家庭料理の変遷と、生活様式や女性の生き方の変化を交叉させて分析した論述書。
文体は平易で読みやすく、事例も豊富で、世相の動きと連動させた考察がすんなりと頭に入ってくる。
それぞれの世代の料理番組や料理雑誌、映画やテレビドラマ、漫画に登場する食卓の特徴を洞察することで、『情報の受容者』としての主婦像の推移が浮かび上がる。
まさに、料理の向こうに時代が見えるのだ。
女性ならば多くが、台所に立つ母親の姿、少女の頃の食卓、自らが主婦となってからの献立を振り返り、自分が主人公として的確に解説される気恥ずかしさと納得感があるのではないか。
同時に、己の性行が腑に落ちる心当たりに、自身もまた時代の空気を反映し、影響される存在であることを実感せざるを得ないだろう。