一緒にいてもひとり―アスペルガーの結婚がうまくいくために

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487802708

作品紹介・あらすじ

結婚後、夫あるいは妻がアスペルガー症候群だとわかるケースは徐々に増えている。そんなカップルが直面する困難は、お互いのコミュニケーションがうまくはかれないために生ずるほか、人生での価値観の違いなどによる場合も少なくない。著者は、結婚後17年を経て夫のアスペルガー症候群を知り、長年の自身の孤独と欲求不満を説明するものを見つける。そして、持ち前の明るく前向きな姿勢から、これらの困難を乗り越え、求め続けてきた良好な関係を手に入れた。本書は、その体験から得られたさまざまなノウハウを多くの人が共有し、役立ててほしいと願う著者が綴った幸福への手引である。

感想・レビュー・書評

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  • アスペルガー症候群(DSM-5だと現在は自閉スペクトラム症)のあるパートナーとの生き方を綴った内容。当事者としての悲哀、葛藤もなることながらエネルギー理論を実践しながら、少しずつ関係が改善していく様は、障害のあるなしに関わらず、対人関係を構築する上で参考になります。

  • アスペルガー本二冊目。しかし、この本はアスペルガーという特殊要因を抜きにしても非常に面白い。結婚、つまり自分とは違う人間と一緒に暮らすために必要な全てが集約されている。たまたま筆者はパートナーが AS で、外国人で、異性だったために様々な差異に悩まされ、苦労しているが、同じような苦労は定型発達(AS やその他の自閉症でない人のことを、こう呼ぶ)者同士の結婚でも起こり得る話だろう。その差異を理解し、乗り越え、同じ未来に向かって進むために必要な心構えは、万人にとって価値のあるものだ。

  • 涙が出るほどよくわかる。それは別にして、エネルギー戦争とは言いえて妙。うちの場合のエネルギー戦争の薬は睡眠導入剤か。

  • アスペルガーの夫を持つ妻の、改善策を綴った本。
    夫もとても努力したんだと思うけど、何よりこの奥さんの聡明で耐える力に感服。
    ・単純な言葉に託して、パートナーにして欲しいことをそのまま表現する
    ・妻である自分のエネルギーを補充できる活動を見つける
    ・相手が自分に気遣えないことが、結局は自分を強くしている

  • 子供がアスペルガーという大変さと、配偶者がアスペルガーという大変さは、まったく異質なものである。個人的には配偶者がアスペの方が、つらいなぁ。

  • アスペルガーの事が知りたくて早速読んでみた。

    これは結婚相手がという想定だったから、求めていたものとは違うけど、
    なかなか勉強になった。
    というか、アスペルガーのご主人の行動は、うちの主人と似てる。
    相手の事を思わない発言、頭ごなしにおこる、
    自分が1番だと思ってる。
    うちの主人は多分アスペルガーではないけど、
    誰だって一瞬こういう症状になる可能性があるのかなって。

    奥さんは本当によく頑張って結婚生活を続けていたと思う。
    アスペルガーと知る前に別れててもおかしくないし。

    とにかく理解していかないと。。。

  • 定型発達とアスペルガー症候群の結婚を書き記した一冊。
    結婚というものが難しい。
    考えが違う「男女」であることの上に定型発達とアスペルガーという異なる資質(というと語弊があるが)の二重の違いを持つため、もっと難しい。
    が、お互いを知ればそれは難しくはないことが記されている。

    結婚観については個人の観点があるとおもうが、
    定型発達者とアスペルガーでは恐ろしいほど違いが存在する。

    本書では定型発達者である妻は「結婚はつながりをもつこと」と話しているが、
    アスペルガーの夫は「一緒に楽しむ人を見つけること」と
    根本的に価値観が違うことが示されている。
    見ている方向がちがうのだから、意見の食い違いは存在する。

    (注:上記は本書の例である。結婚にはさまざまな背景が存在するため適切に定型発達とアスペルガーの違いを示すことはできない。おそらく書き言葉で表現する以上に溝は大きいものとされる)

    本書では「他人を知ることが人生においてどれだけ難しいか」ということと
    「他人を知ることの意味と喜び」を記している。

    なお、著者の「エネルギー理論」は的を得ているのでこれは定型発達者でも参考にしたほうがよい。

  • 著者の冒頭の詩がとても心に沁みました。

    * * * * *
    遠いむかし、私はバラで、あなたは美しく、強く、頼りになるサボテンだった。
    あなたの姿、強さ、自信がとても気に入った私だったが、一緒に砂漠に住むのは難しいと気がついた。
    自分に合わせて欲しいとあなたは私の緑の葉を切り始めた。砂漠の土は乾いて、気候はきびしく、私は水が欲しくてたまらなかった。生きていくために。
    少しずつ私はしおれ、花は落ち始めた。
    手入れされた花壇の土、肥料、色とりどりの植物、すべてが恋しい。でも、もう花壇という環境にはなじめそうになかった。
    残っていた葉は少しずつたくましくなり、私はまるでサボテンのよう。
    目のくらむ太陽も砂あらしも気にしなくなった。喉の渇きも忘れた。
    何も感じなくなった。砂漠で暮らすにはその方がかんたん。でも、ときには、朝、にわか雨の後に感じる、葉っぱに残ったしずくの気持ちよさや、通り過ぎる蝶のやさしい感触を思い出した。
    砂漠であなたのとなりにいるのは変な感じ。私はあなたがサボテンとは知らず、そんな植物が存在することも知らなかった。
    訳のわからなくなった私はあなたをバラに変えようと一生懸命だった。あなたにはとてもつらいことだっただろう。あなたがバラになろうとし、バラのように振る舞っているかぎり、私とほかのバラはあなたを愛した。でも、あなたがサボテンらしく振る舞えば、みんなはあなたの側を去っていった。
    とうとう、あなたはあきらめて、どの花壇も避けるようになった。
    サボテンの方がずっと自分らしい。みんなの期待するものになれなくて恨みだけが残ったのに、どうして自分は努力しなくてはならないのか?
    自分一人でいるほうがずっと心地よいとわかって、あなたは孤独に戻っていった。
    ほかのバラたちは私から目をそむけ、なかまはずれにした。相通じるものが何もないから。私はやっかいなしおれた植物、一緒にいても楽しくない。バラたちは肥料のことや私には縁のない話に明け暮れていようとした。
    だから私は孤独に暮らすあなたの仲間になり、自信の中にある強さを引き出すことができた。
    やがて、私は色とりどりの花壇にいた頃が恋しくなった。あなたがずっとサボテンであるように、私はずっとバラだから。
    ある日、サボテンの本を見つけた。あなたにも読んでもらうと、そこに書いてあることがあなたにぴったり当てはまると二人の意見は一致した。自分は変種のバラではない、美しく、強く、へこたれないサボテンだとわかってあなたはとても安心したようだった。
    サボテンには別の愛情の示し方があると知って私も大喜びした。寒々しい孤独を感じていたころ、本当はあなたに大事にされていた。私にはわからなかっただけ。
    サボテンの本はたくさんある。でもバラの専門書はない。
    約束しよう、サボテンが何を欲しがり、何を喜ぶのか、あきらめずにわかろうとすることを。私の望みは、あなたがバラのことを知ろうとし、バラの私を認めようという気持ちになってくれることだけ。あなたがあなたでいたいように、私も私でいたい。二人が同じ植物になってしまうより、違いを受け入れられるようになろう。
    初めて会ったとき、私はあなたのサボテンらしい強さに見とれ、あなたはきっと私の色鮮やかな花びらにうっとりしただろう。
    私は前ほど花いっぱいではないけれど、土に根をしっかりおろし、少しの水と肥料があれば、また花を咲かせるだろう。美しいだけでなく強いバラになっているから、もっとたくさん花を咲かせるだろう。
    お互いを大切にしあえば、二人の関係を特別なものに変えられる。そして、子どもたちはバラの野性と、繊細さと、色鮮やかさだけでなく、サボテンの頼もしさと、強さと、人の心を惹きつけるところを併せもって成長するだろう。
    あるがままに日々を過ごし、それを楽しもう。

    カトリン・ベントリー

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