呪いを解く者

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011284

作品紹介・あらすじ

〈原野〉と呼ばれる湿地を抱える国ラディスでは、〈小さな仲間〉という生き物がもたらす呪いが人々に大きな影響を与えていた。16歳の少年ケレンは、呪いの原因を解明して取り除くほどき屋だ。ケレンの相棒は15歳のネトル。彼女は継母に呪いをかけられ鳥にかえられていたが、ケレンに助けられて以来手助けをしている。二人は依頼を解決しながら、呪いに犯された町を救おうと旅をするが……。『嘘の木』の著者の傑作ファンタジイ。

感想・レビュー・書評

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  • ★5 呪いに影響された世界を救うため旅にでた少年達… 闘いの果てに得た善悪の答えは #呪いを解く者

    ■あらすじ
    湿地と森で構成される原野が広がるラディスが舞台、この世界ではクモに似た小さな仲間によって、人に呪いをかける力を得ることができる。少年ケレンは呪いを解くことができる特技を持っており、かつて鳥にかえられてしまっていた少女ネトルと旅を続けていた。
    呪い人が許せない二人は、呪いに犯された世界を救うために冒険を続ける。果たして呪いはなくなり、人々は幸せになれるのだろうか…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    こりゃまた、すごい物語だわ…
    今までに想像したこともなかった世界につれてってくれる。いつも幻想的な世界に誘ってくれるハーディング先生ですが、今回はより一層ダークファンタジー味が強く、もはや別の次元に連れってってくれる傑作。

    理論的な見方しかできない人では正直ついていけません。夢の世界に飛び込む勇気や、経験したことのない世界をビジョン化する想像力が必要になります。なので子どもの頃に戻って、純粋に物語を楽しむのがおすすめ。そうすると、ずっーーと文字をおい続けたくなってくる。そしてそのまま寝ちゃうのが幸せを感じる読み方ですね。

    本作、呪い人VS呪いを解く人の構図で物語が進められる。様々な登場人物たちが呪いに振り回されながら生活をしており、さらにその呪いの原因となる小さな仲間や、統制を目論む政務庁や救済団という組織も絡んでくる。

    そんな複雑難解な世界を、まだ幼い少年少女であるケレンとネトルが、善という信念をもって旅を続けていく。途中で出会う呪われた人々の叫びに対して、彼らはひとつひとつ向き合っていくんですよ…すごくない?もう泣いちゃうんです。またネトルの兄、ヤニックが大好き。カモメの彼は可愛いし、いつも二人を助けてくれる。妹想いの愛情深さが染みますね。

    そして物語の後半あたりからは冒険もクライマックス、闘いの果てに待ち受ける善悪の答えとはなんなのか。この長い物語を読んだ人であれば、シンプルながらも深い意味が胸を貫くと思います。

    ■ぜっさん推しポイント
    我々の世界でも憎む人、憎しみから生まれる武器、そして被害にあう人たちも存在する。一見、憎み攻撃する側が悪いようにも思えるが、果たしてそれが正解といえるのか…何を大事にするかの価値観によって善悪というのは変化する。みんなが幸せになるって、難しいですね…

    ハーディングの作品では、いつも社会を闇を暴いたり救ったりしてくれる主人公は幼い少女や少年たち。彼らの成長は見ていて胸が熱くなるんですが、現実の子どもたちには無邪気でいられる世界であってほしいですね。

    • ひまわりめろんさん
      やっぱり面白かったですか〜
      読みたいリストに入れっぱなしになっている作品です
      うーんそうか秋さん★5か〜
      やっぱり面白かったですか〜
      読みたいリストに入れっぱなしになっている作品です
      うーんそうか秋さん★5か〜
      2024/02/10
    • autumn522akiさん
      ひまわりめろんさん、こんちわです
      品質高すぎ想像力高すぎで★5ですね、こんなの他では読めないですよ。
      まぁすごい本で、ぶっとんだ世界に連...
      ひまわりめろんさん、こんちわです
      品質高すぎ想像力高すぎで★5ですね、こんなの他では読めないですよ。
      まぁすごい本で、ぶっとんだ世界に連れてってくれます。
      あせらずにゆっくり楽しんでください~
      2024/02/10
  • 「誰にでも錨がある。」

    人はみなそれぞれに「闇」を抱えて生きている

    人はみなそれぞれに「怒り」を滾らせ生きている

    人はみなそれぞれに「恨み」を隠して生きている

    「恨み」が隠しきれないほどに大きくなったとき〈小さな仲間たち〉は善意から「呪いの卵」という贈り物をくれる


    「闇」に包まれ

    「怒り」に我を失い

    「恨み」があふれて

    「呪い」をかけてしまいそうなとき

    自分には錨があることを思い出せたら
    踏みとどまることができるはず

    「誰にでも錨がある。」

    あなたの錨は誰ですか?

    • ひまわりめろんさん
      土瓶さんは風の向くまま気の向くままが合ってるわ

      すごい面白かったから『嘘の木』とかも読んでみようと思ってるよん
      土瓶さんは風の向くまま気の向くままが合ってるわ

      すごい面白かったから『嘘の木』とかも読んでみようと思ってるよん
      2024/02/25
    • 土瓶さん
      そんな格好のいいものではないが。


      ( ゚д゚)ハッ!
      いや、カッコイイ、カッコイイもーん。
      そんな格好のいいものではないが。


      ( ゚д゚)ハッ!
      いや、カッコイイ、カッコイイもーん。
      2024/02/25
    • ひまわりめろんさん
      申し訳ありません
      こちらサイドとしてはカッコいいは想定してませんでした
      再度すり合わせが必要かと思います
      申し訳ありません
      こちらサイドとしてはカッコいいは想定してませんでした
      再度すり合わせが必要かと思います
      2024/02/25
  •  4冊目。今迄で一番読みやすい。
    奇才独特の世界観で、白昼夢へと引き込まれた。これぞファンタジー読書の醍醐味。
     彼女でしか味わえないようなイマジネーションの面白さがあります。

    今回のテーマ「負の感情」がおりなす世界の
    妬み、憎しみ、怒り、憎しみ、恨み、嫉み、執着、不実、不信… 
    これらを超自然的な力で呪いとして形にする事を罪とする世界
     少年少女たちは常にこれらに晒され苦しみながらも、闘っていきます。
    闇を抱えながら生きていくという事、
    許しや救いとはいったいなんだろうと読書に投げかけてくる。
     
    目まぐるしい展開が次々とやってきてイメージするのが疲れましたけれど、満足です。
    ラストいろいろ散らかったものが消化されるのですが、児童書っぽくなく、詩的に余韻を残して終わるところもいいですね。

     湿地という場所柄も非常にマッチしていているけれども陰鬱すぎない、何故か美しさを伴う景色と世界を堪能してみてください。

    • シャルたん@読書さん
      編集さんかわったのかな? ガラスの顔みたいに、暴走する箇所がなくなった気がするーーと思って謝辞読んだらそのようです。
      編集さんかわったのかな? ガラスの顔みたいに、暴走する箇所がなくなった気がするーーと思って謝辞読んだらそのようです。
      2023/12/30
    • シャルたん@読書さん
      トリップ感というか、リアルにイカれた部分がある人なのかなと思った事ありますが、オックスフォード大卒なんですよね。73年生まれだし卒業後執筆活...
      トリップ感というか、リアルにイカれた部分がある人なのかなと思った事ありますが、オックスフォード大卒なんですよね。73年生まれだし卒業後執筆活動長かったのかなぁ?
      不思議な人だなぁ
      2023/12/30
  • 呪う人と呪われた人
    継母の呪いにより兄弟は鳥に変えられた
    サギに変えられていた少女ネトルは
    人間に戻れたが、カモメのままの兄
    呪いをほどく力をクモに授けられた少年
    ケレン
    重荷を背負わされた二人の壮大な冒険
    ファンタジー物語
    読みやすかったし面白かった
    人間の心の話だからスッキリはしないけれど

  • 現実世界にも作中の『書記長』がいて法律や契約を反故した者には死の裁きを…という事であれば、現在、市政に関わる多くの為政者は死を免れないであろう。 今まさにトピックされているキャッシュバック騒動に加担している輩は言わずもがな、選挙活動中『国民のために』とうそぶいた奴らもという事になれば、一体どれだけの政治家がサバイヴ出来るのか?
    そして、
    それはこの国に限らない。

    今、世界中で勃発している戦争や紛争を先導、或いは加担している奴らの殆どは指導者では無く、権力者…いや、肥大した自己顕示欲を抱える狂人なのだ。

    そんな輩によって、
    今、世界は憎悪と怨嗟に満ちている。

    世界中に『呪い』が蔓延って、作中の彼をもってしても最早容易にほどくことはままならないだろう。

    いっそ虐げられた者達の呪いが束になって、奴ら全員カモメにでも変えてしまえば良い。
    俯瞰から見下ろせば、キ○ガイどもにも新しい視野が生まれるかもしれない。

    …そんなこたぁねぇか(笑)。



  • 異世界ファンタジー。初めて読む著者ですが、有名な方だったんですね。

    呪いの糸をほぐして解く少年と、かつて呪いを受けて鳥に変えられた少女(少年に呪いを解いてもらって、今は人間)の冒険譚です。

    壮大な話、かつ細部まで描写が細かく、読み終えるのにけっこうな体力がいりました。
    もっとじっくり時間をかけて読めば良かったと後悔しています。この方の他の本も読んでみたいと思います。

  • 人を呪う
    それほどまでの恨み辛み、そして悲しみ
    呪縛を解き放つための赦しもまた、人の心で
    幾重にも積み重なった重いテーマを、小さき二人に背負わせる
    指先のかじかみ、節々の痛み、飢え
    彼らの痛みは痛烈で今作はまた一段と凄まじい超弩級のダーク加減
    最終的には解いた糸が繋がりを持ち始める
    これまでにない没入感
    なんという作品だ

  • CL 2024.1.5-2023.1.9
    ハイファンタジー。
    その世界観をつかむまでに多少の時間はかかる。かなり複雑な構成になっているし。
    主題は呪い。
    呪い人、呪われた人、呪いを解く者。
    虐げられて呪うしかなくなった人もいれば、己の弱い心故に呪う人もいる。
    呪いを解かれてもそこで終わりではない。
    呪い人の憎しみの裏にも痛みやさびしさや恐怖がある。
    簡単に善と悪で割り切れない奥の深い物語だつた。

  • フランシス・ハーディングの作品で男性主人公というのは初めて見たので、少し新鮮。実際はほどき屋の少年ケレンと呪いをかけられていた少女ネトルの双方が主役という印象を受けた。
    呪いを解いてまた次の町へ、という具合にゆっくりと作品世界に踏み入っていく感触が最初はもどかしかったが、人間だれしもが持ちうる負の感情を「呪い」という現象に仮託しつつ、呪われた側と呪った側、それぞれの思いや変化を痛ましくも鮮明に描くところはさすが。今回は脇役たちもとても魅力的なので、よくきれいに1冊にまとめたなと思う反面、もっと何巻も読み続けていたかったような気もする。

  •  呪いが存在するラディスという国を舞台にしたダークファンタジー。
     かつて呪いで鳥のサギに変えられたことのある少女ネトルは、呪いのほどき屋である同い年の少年ケレンに助けられたことをきっかけに、呪いの源泉である〈原野〉へ行くはめになる。
     同じ15才ながら、短気で無計画なケレンと思慮深く何を考えているのかわからないネトルは、ときには反目しあいながらも協力して呪いにかけられた人を道中ひとりずつ救っていく。やがて呪いを解く力を持つケレンは目をつけられ、呪い人を管理しようとする政務庁と呪い人を保護しようとする救済団の争いに二人は巻き込まれていく。

     つらい旅や冒険を続けながら、ケレンとネトルは少しずつ呪いの本質に迫っていくのだが、自ら呪いをかけられ復活したネトルは、呪いをかけた人間を単純に悪人と決めつけず、そうせざるを得なかった人々の気持ちをずっと考えている。そもそも呪いを生み出す人の心の深淵を人が裁けるものなのか。
     また、呪いを解かれた者に強制される態度は、現代の戦争や災害の被害者に求められるものとオーバーラップするものがあり、救済の手が新たな重しになることを感じさせ、単純な冒険譚には無い非常に重いトーンをまとっていた。

    ”力ある人々は紙を一枚振りまわすだけで、その調べに合わせて世界が踊る。呪いが必要なのは力のない人々だ。それなのにわたしたちがやってきて、彼らに唯一残されていたものを奪っていく。”(P.97)

    ”いつまでも被害者のまま、ほかの人の物語--ケレンの物語のほんの断片でしかない。呪いが解かれて、もとにもどったところで、あたしの出番は終わり。あとは感謝しつづけて幸せに暮らすだけ。”
    ”だれかのめでたしめでたしのお話の一部になるのはうんざりだったの”(P.442)

     最初から最後まで、大人たちの狡猾な計画や悲しい裏切りにあってひどい目にあいつづけるケレンとネトルだったが、向こう見ずだったケレンの心に他者を慮る気持ちが生まれたり、ネトルの兄のヤニックがカモメにされたままの姿で何かと二人の面倒をみたり、どれだけひどい目にあっても人の優しさを信じ続けるネトルの気持ちに救われる。

    ”わたしは自分の怒りと闘っては負けつづけてきたけど、それでも闘わずにはいられなかった。ほかの人に対して怒りを爆発させたことは一度もない。復活者のほかの人たちを助けようとしてきたけど、見せかけだけの行為じゃなかった。あの人たちがわたしと同じような気持ちにならないようにしてあげたかった。”(P.445)

     作者の他の作品と同様、悲惨な境遇に落とされた主人公に最後は光が差してきてホッとするが、難を言えば話があっちこっちに飛びすぎた上に長かった。せめて、エピソードごとにスパイクの章、ペルシアの章、チャリティの章など分けてくれると、もう少し読みやすかったのだが。

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