ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 (海外文学セレクション)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488016661

作品紹介・あらすじ

アウシュビッツ絶滅収容所に着いたユダヤ人を、ガス室行きと生存させる組とに選別した医師メンゲレは、優生学に取り憑かれ、子供、特に双子たちに想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュビッツ解放後に南米に逃れ、モサドの追跡を逃れて生き延び、79年ブラジルで心臓発作で死亡する。なぜ彼は生き延びることができたのか? どのような逃亡生活を送ったのか? その半生の真実と人間の本質に、淡々としかし鋭い筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • やっと読み終えた。疲れた。
    逃げた後、自分のしたことを正当化して生きていく。怯えながら生きていく。
    逃げるって、こういうことなんだな。

  • ナチズムへの傾倒と功名心から、アウシュビッツで非道な人体実験を行い、多くのユダヤ人などを死に至らしめたヨーゼフ・メンゲレの逃亡記。彼は最後まで「狂信者」だった。

  • あんな大罪おかしといて自分は南米で自由自適かよった思って読んだら想像以上に地獄だった。

  • ナチスの人体実験に関して、最も名の知れた科学者ヨーゼフ・メンゲレ。
    ユダヤ人輸送の責任者アドルフ・アイヒマンほどの大物ではありませんが、自身の研究と到着後の“選別”によって夥しい死を実行しました。
    自然死するまで逃げ切ったナチスの一人であり、動向に不明な点が多い人物です。
    著者のメンゲレ研究の末、事実と想像を交えた小説の形で世に出た一冊。

  • メンゲレのような「命令に従っただけで自分は悪くない」という言い分が通ると思っている卑小な悪、陳腐な悪は決して珍しいものではない。

  • 戦後、戦犯追及を恐れ、多くのナチ党員が南米に逃れた。残虐な人体実験を数多く行った医師ヨーゼフ・メンゲレもその1人である。アドルフ・アイヒマンのように、その後、居場所を突き止められて断罪された者も多いが、メンゲレは死を迎えるまで、ナチハンターの手から「逃げおおせた」。その潜伏生活については不明な点も多い。
    本書は膨大な資料を読み込んだうえで、「影」の部分を小説的手法で補うという、T.カポーティに倣った「ノンフィクション小説」の手法を採る。
    南米時代のメンゲレの実像に近づこうという試みである。

    ナチ時代のメンゲレは、双子に異常な興味を示し、収容者の生死を選別し、乳飲み子も殺した。だが彼は、異様で巨大な怪物だったのか。
    ここに描かれるメンゲレは、優等生ともてはやされた昔を懐かしみ、故郷に焦がれ、見えない追っ手の手に怯える、どちらかといえば卑小な人物である。
    終わりのない逃亡生活に疲弊し、学位を取り上げられたことに怨嗟し、世間の批判は陰謀だと憤怒し、誰も理解者のいない孤独に悲嘆する。
    自身をモデルにしたとされる残虐な歯科医師が登場する映画「マラソンマン」を見て絶望するし、過去の罪を問う息子に問い詰められて逆上する。
    「悪魔」的な冷酷非情さからはほど遠い。

    メンゲレは誰にも知られずひっそりと死ぬ。
    大勢の前で糾弾されたアイヒマンとは対照的に。
    だが、それは果たして彼の「勝利」だったのか。

    彼の死後も、世間では「メンゲレは生きている」という噂は絶えなかった。死んだことにして、実は追及の手を逃れているのだと囁かれた。
    映画化もされた小説「ブラジルから来た少年」さながらに、南米でも悪魔的な実験を続け、ヒトラー再来・ナチス再建を目論んでいるのだという穿った見方まであった。
    死後何年も経ち、ついには墓が暴かれ、遺骨が鑑定に掛けられるまで、メンゲレの「逃亡生活」は終わらなかった。

    振り上げられた人々の怒りの拳。それは彼の為したことに対して、当然の反応であっただろう。
    だが、メンゲレの真実の姿が、本書に描かれたものに近かったのだとすれば、その拳が破壊すべきものはなんだったのか。
    なぜこうした「俗人」然とした人物が怖ろしい所業を為しえたのか。誰か止めることができなかったのか。止められるとすれば、いつどこでだったのか。
    彼は本当に自分のしたことを悔いたことがあったのだろうか。そしてこれは彼個人の特異な性質のみによるものなのだろうか。

    真の「悪」とは何なのか。
    その問いの答え難さに、いささか茫然とする。

  • 「悪の凡庸さ」ならぬ「悪の卑小さ」

  • まるでフィクション

  • ドイツのユダヤ人作家?による「ノンフィクションノベル」。アウシュビッツで恐れられていた白衣の悪魔メンゲレ医師の南米での隠遁生活。驚愕の新事実とかではなく、メンゲレの狂気と恐れをじわじわと描く。3.0

  • 『スターン』誌じゃなくて『シュテルン』じゃないかと思うんだけど。
    それはさておき、戦争責任って難しいんだなあと思う。勝ったか負けたかで立場は全然変わるし、命令を下した側が罰せられるのはともかく、命令を受けて行動した側は、じゃあそれを拒否すれば良かったのかというと、それは勝ったか負けたかという結果が出てから言えることだし・・・もしあの戦争でドイツが勝っていたらメンゲレが行っていた実験等々は責められるどころか褒め称えられてたのかなと思うと、恐ろしい話しだよなあとつくづく思う。

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