最後の三角形: ジェフリー・フォード短篇傑作選 (海外文学セレクション)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488016838

作品紹介・あらすじ

アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。エメンタール系輸入チーズの味が三角形として感じられる一方で、指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった。そして初めてコーヒー味のアイスクリームを口にした瞬間、見たことのない少女が僕の目の前に現われ――ネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」ほか、繊細な技巧と大胆な奇想に彩られたフォードの多彩な世界14編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • Review: "A Natural History of Hell" by Jeffrey Ford | Weird Fiction Review
    https://weirdfictionreview.com/2016/07/review-natural-history-hell-jeffrey-ford/

    Speculiction...: Review of The Empire of Ice Cream: Stories by Jeffrey Ford
    http://speculiction.blogspot.com/2016/02/review-of-empire-of-ice-cream-stories.html

    Web東京創元社マガジン : 【新年特別企画】2023年 東京創元社 SF&ファンタジイ ラインナップのご案内
    http://www.webmysteries.jp/archives/31171429.html

    最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選 - ジェフリー・フォード/谷垣暁美 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488016838

  • 短編集。ミステリもどきのSFやファンタジー。表題の三角形は素晴らしかったが、私はタイムマニアがすきだった。キングのホラーを思わせる展開もぞくぞくした。

  • 『白い果実』三部作がとても面白かったジェフリー・フォードの短編集。ジャンルとしては一応SFにカテゴライズされるものが多かったかしら。妖精ファンタジーもあったけれど。基本的に突拍子もない奇抜な着想のものが多く、毎回驚かされた。ジェフリー・フォードは、幻想文学やSF,ファンタジーがベースにありつつも、難解にならずキャラクターが魅力的で娯楽度が高いのがすごい。以下、備忘録かねてネタバレぎりぎりの簡単なあらすじ。


    〇アイスクリーム帝国:共感覚のために人と違う感受性を持ってしまった少年ウィリアムは、ある日コーヒーを飲んだときだけ現れる少女アンナと会話できるようになる。異次元とのコンタクトなのか、それとも自身の脳が生み出した幻覚なのか。アンナのほうはアンナのほうでウィリアムを自分の幻覚だと思っており…。どちらも実在なのかどちらかがどちらかの幻覚なのか、オチは予想はつくけど切ない…。

    〇マルシュージアンのゾンビ:近所に住む奇妙な老人マルシュージアンと親しくなった男は、恐ろしい打ち明け話を聞かされる。彼は人間の脳を操作して、なんでも命令に従うゾンビに改造する実験をかつてしていたと言い、その実験体の一人を元の人生に戻してやりたいので協力してほしいというが…。

    〇トレンティーノさんの息子:トレンティーノさんの息子のジミーが溺死したが遺体はあがらず、彼の幽霊が海に現れるようになる。嵐の日、主人公は助けを求めるジミーの幽霊に出くわし、思わず手を差し伸べるが…。この手の幽霊には連れていかれそうなものだけれど、親切にした主人公が助かり、逃げた別の男が犠牲になる勧善懲悪型は珍しいかも。

    〇タイムマニア:幼い頃から霊感が強く、魔よけのために「タイム(時間のことではなくハーブの名前)」のお茶に依存してきた少年エメット。町中のタイムを食べつくす勢いで恐怖と戦ってきたが、井戸から死体を発見してしまう。変人扱いされているエメットに、グレーテルという少女だけは親しく接してくれるが…。タイムを摂取してるあいだは霊が見えず、切れると霊が現れる、というシンプルなルールを利用したトリックが最後に効いてくる。

    〇恐怖譚:実在の詩人エミリー・ディキンソンが主人公。ある日死神に拉致られた彼女は、寿命を延ばしてもらう代わりに、ある仕事を頼まれる。それは死すべき運命の我が子を生きながらえさせるために呪術を使っている夫人の家に潜入し、その呪文を探り出すというものだった。さらにエミリーは、その呪いを解くための詩を書かねばならず…。収録作でこれが一番好きでした。

    〇本棚遠征隊:ピンくらいのサイズの妖精が見えるようになった男。ある日妖精たちは彼の本棚を登攀しはじめ…。微笑ましい妖精ファンタジー。

    〇最後の三角形:ホームレスでジャンキーの男がたまたま入り込んだガレージの持ち主の老婦人ミズ・バークレーの親切で更生するうちに、夫人から奇妙な頼みごとをされる。最後の三角形と呼ばれる魔術を行おうとしている者がいるので、彼女はそれをつきとめ阻止したいらしい。半信半疑で彼女の指示に従ううちにある男が現れ…。魔術ものとしても面白いけれど、ミズ・バークレーのおかげで主人公が更生していく人間的な部分も好き。

    〇ナイト・ウィスキー:その村では動物の死骸からしか生えない「死苺」を醸造して作られる「ナイトウイスキー」を年に1度だけ、くじ引きに当たった8人だけが飲むことができる。それを飲むと酔っぱらって木の上で眠り、夢の中で身内の死者と再会することができる。翌朝、その酔っ払いを木から上手く落として起こす役目は「酔っ払いの収穫」と呼ばれ、ボランティアではあるが受け継がれる名誉職。主人公の少年はこの役目に選抜されヴィットリーじいさんに弟子入り、ついに役目を果たす日が来るが、酔っ払いの一人が夢の中から死者を連れ戻ってきてしまい…。

    〇星椋鳥の群翔:顔をずたずたに裂かれ脾臓のなくなった死体がみつかる猟奇殺人が秋~春の間だけ起こる町の警部は、「野獣」とあだ名される犯人を突き止めようと何年も捜査を続けている。3番目の犠牲者としてある博物学者が野獣に殺され、その娘ヴィエナが犯人を目撃したと思われたが、彼女は母親が亡くなって以来口を利かなくなっており、ペットの星椋鳥モーティマーとしか意思疎通をしなかった。ヴィエナをマークする警部は、その星椋鳥が仲間の群れを自在に操りさまざまな形を描き出すことができるのを目撃する。その後も殺人は起こり、警部の部下も犠牲になり、退職後ついに警部は犯人に辿り着くが…。最初は鳥が犯人ってオチかと思いきや、もっと江戸川乱歩的な犯人だった。

    〇ダルサリー:縮小光線が発明され、あるマッドサイエンティストが瓶の中に超微細な都市ダルサリーを作った。やがて滅びかけているダルサリーを救うため自ら縮小されてその年に入りこんだ科学者は、その中でさらに微小な都市を作り、入り込むことを繰り返し…。内側に縮小していくマトリョーシカ構造の世界、あまりにも小さい都市はもはや細菌みたいなもので…。

    〇エクソスケルトン・タウン:昆虫系異星人の惑星と交易を始めた地球人。彼らは地球の古い「映画」を好み、催淫作用のある「糞=フレセンス」と交換するように。訪問する地球人は古い映画俳優の外見の全身スーツのようなものを装着して、昆虫たちの好感度をあげて取引している。一儲けしようとエクソスケルトン・タウンにやってきた男(ジョゼフ・コットンの外見をしている)は、煙の麻薬に溺れて元手を失い、市長に脅されて、あるレアな映画を持つ女性のところへ潜入することになるが…。

    〇ロボット将軍の第七の表情:異星人との戦争のときにつくられたロボット将軍。戦争が終われば不用品となり、恩給で生活している。このロボット将軍の装備が結構アナログなのがコミカル。お尻から噴射して空を飛べるとか(笑)しかし彼には見た物を洗脳できる「第七の表情」を持っている。しかしその表情が通用しない暗殺者が現れ…。

    〇ばらばらになった運命機械:引退した宇宙飛行士ジョン・ガーンは、過去を回想している。ある星で出会った異星人の女性ザディーズと恋に落ち結婚、彼女を一緒に宇宙に連れていくがコールドスリープ中に亡くなってしまい、別の星で彼女の遺体を降ろした。彼女を死なせてしまったことをずっと後悔して生きてきた彼。しかし彼女は実は蘇生していて…。壮大なラブストーリー。

    〇イーリン=オク年代記:人間の子供たちが作った砂の城にだけ住み、城が崩れると消える妖精トゥイルミッシュ。その一人イーリン=オクの手記が発見されたので紹介された内容が本作。砂の城は、カニやネズミの攻撃にさらされるが、イーリン=オクはちょっとした魔法を使って切り抜けたり、海の上の船に住む種族の妖精メイワとその息子マグテルを助けたことで一緒に暮らすようになったり、さまざまなことが起こる。種族の違うメイワたちは海へ帰っていき再びイーリンは孤独になるが…。可愛らしい妖精ファンタジーだけれどその一生に人間と同じくさまざまな機微がある。

  • 大好きジャンルの幻想小説。
    不勉強ながらYahooで書評を読むまで存じ上げませんでしたが、この方は世界幻想文学大賞に7回、シャーリィ・ジャクスン賞に4回、MWA賞、ネビュラ賞など数々の受賞歴を持つ作家さんらしいのです。
    表題作は幻想奇想的でありながら、中盤以降のサスペンス味も楽しい作品。
    個人的に心に残ったのは「ナイト・ウイスキー」。
    この設定からして奇想味満点なんだけど、生物の死骸に生える「死苺」という植物があって、その果実から作られるナイト・ウイスキーは飲むと亡くした大切な人と夢で会えるという不思議なウイスキーなんですよ。
    これを飲むと、なぜか樹に登って眠り、その夜の夢で今は亡き人との逢瀬が楽しめるんだけど、翌朝、その人達を回収する専門業者(?)がいて、その見習いの少年がこの物語の語り手。
    本来は今は亡き大切な人と夢の中で会うだけの筈が、その愛の深さ故なのか、愛妻を亡くした男がなんと病死した妻を黄泉の国から連れ帰ってしまって…。
    というのがあらすじ。
    このお話、よかったなー。
    あとは「イーリン=オク年代記」。
    こちらは浜辺で子供たちが作る砂の城に棲む妖精の話なんですけどね、この妖精の寿命は城が作られてから満ち潮で城が壊れるまでの間。
    この妖精の一生が綴られた日記が後世に見つかって…という話。
    この短編集は2冊目みたいで、1冊目の「言葉人形」もぜひ読んでみたいと思いました。


  • 作品紹介・あらすじ

    魔法は破られるようにできているの。
    でも、約束はそうじゃない。

    世界幻想文学大賞に7回、
    シャーリイ・ジャクスン賞に4回、
    MWA賞、ネビュラ賞など数多の賞に輝く
    現代幻想文学の巨人による
    郷愁と畏怖と偏愛に満ちた14篇

    アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった――コーヒー味を通してのみ互いを認識できる少年と少女の交流を描くネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」、エミリー・ディキンスンが死神の依頼を受けて詩を書くべく奮闘する「恐怖譚」、マッドサイエンティストが瓶の中につくりあげたメトロポリスの物語「ダルサリー」、町に残される奇妙なしるしに潜む魔術的陰謀を孤独な男女が追う表題作ほか、繊細な技巧と大胆な奇想に彩られた全十四篇を収録する。

    *****

    名前だけは聞いた事があったけれど作品を読んだことがなかったジェフリー・フォード。書店に最新の短篇集があり、面白そうだったので購入。
    最初の「アイスクリーム帝国」は共感覚を扱った作品。共感覚の持主同士が対峙し、どちらが幻覚でどちらが実在か、といった割とありそうな内容なのだけれど、これがかなり面白かった。なので期待して読み進めた。

    ミステリーあり、ファンタジーあり、SFあり、ホラーあり、と結構幅広い内容の短篇集になっていて、ジュブナイル的作品も2本。どの作品も「おお、面白いじゃん」と時間を忘れて読み進めることが出来た。特に「アイスクリーム帝国」「タイムマニア」「最後の三角形」「ナイト・ウィスキー」が好き。

  • 「見ることは信じること、よ」

  • SFが読みたい!2023より購入しました。

    素晴らしい!の一言です。

    文学の詳しいことはわかりません。
    なので、私観的ですが
    SFが読みたい!を十分満足させてくれたと同時に
    SF サイエンスフィクションに入るのかどうか
    は別として、満足させてくれます。

    まず、言葉が、(訳が素晴らしいのもありますが)
    想像に難くない表現で
    とても読みやすく、
    一話一話、ひたっていられる感覚です。
    が、ついつい次々読んでしまいました。

    そして、全話偏りない
    なんでこんなに色んな話が書けるんだろうと
    才能に驚きます。
    短編集は、あまり好きではないのですが
    短編なのに、最後の数ページで
    あーそーなるのかっていう展開や、
    途中からわかってる感じもあるものでも
    最後の一文までしっかり読ませてくれます。

    原書を読めないので、
    訳者さんの努力には、本当に感謝しかないです。

    出会えてよかったです。

    ちなみに、まだ同作者の、言葉人形は読んでませんが
    幻想小説が主だということなので、
    それが私の思ってるようなものなら
    読むのをためらうし、
    でも、この作者のものなら
    読みきれそうな気もするし
    検討中です。

  • 幻想小説というのだろうか、この類は。

    苦手だわ。
    理屈も何もあったもんじゃなく、なぜ、と考え出すと訳がわからなくなる。結局なんなん?

    一つの物語が終わって、その次が始まると、何が起こっているのか理解するのにまた時間がかかる。

    グロもあって気持ちわるいし。

    が。

    読み続けるのが負担だったが、止められなかったのも事実。
    絵画を見たときのような、えも言われぬ感覚に囚われる。
    散文と詩の中間みたいなものか。
    優れた小説だというのは間違いないし、好きな人は好きだろうと分かる。

    読後感は、しんどかった。

  • 奇怪なお話ばかりでいてとても読みやすい
    よい短編集だ

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000260096

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