ヴィリエ・ド・リラダン全集 第2巻

  • 東京創元社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (595ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018528

感想・レビュー・書評

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  • 「未來のイブ」
    ハダリーが精巧な機械であることがわかればわかるほど、興味と愛着を感じ、女性らしさを表せば表すほど機械であることを不思議に感じる。

    しかし最後は、船の事故で海の藻屑となってしまう。
    生身の人間が津波や瓦礫に飲まれると同じように、ある日あっけなく。

    永遠の美や不老不死にあこがれても、所詮終わりはあるものであり、終わるからこそ物語になる。そうでなければ人はその存在意義を考えないのだろうと思われる。

    「至上の愛」
    始まりは処刑の話。なぜこれが至上の愛か。

    「アケディッセリル女王」
    物語を楽しむより、飾り立てられた文体を鑑賞するためのように読むであるように思う。

    扉繪(扉絵)にあるヴィリエ・ド・リラダン家の紋章の銘句「VA OULTRE(超えてその彼方に行け)」は、どこかで使いたい素敵な言葉。

  • 内容未来のイヴ 至上の愛 アケディッセリル女王

    旧字体なので、余計に美しい。
    焼絵玻璃というものがたまに出てくるけれど、これはステンドグラスらしい。きれいだ……
    ひたすら文章が美しい。
    日本語に訳したものだとしても、日本語で、こんなに美しい言葉が、文章が、書けるのか……鏡花とは違う、麗々しい美しさ。


    「未来のイヴ」
    当時、盛名を誇ったエディソン博士、彼が恩ある青年が恋に苦しんだあげくに命を断とうとするのを止めるために人造人間を作って、魂を移し入れて……という話なのだが、この時代で、キリスト教世界だろうから、女性蔑視的な雰囲気が各所に見られるのは仕方ないとあきらめて。

    ハダリー、魂の存在、理想の女。
    彼女は非常に美しいが、彼女がミス・アリシャ・クラリーの女神かともまがうような美貌と肉体を手に入れて語り出す長く修飾された台詞にはちょっと疲れる。金属の女でいたときの方が、謎めいていていいな。

    ラストは、ああ、これ以外にはあり得ないという悲劇。
    人は万物を手に入れられない。


    「至上の愛」
    内容はどうでもいい、と思ってしまうくらいかな。ストーリーは感じられない、一シーンを切り取ったもの。


    「アケディッセリル女王」
    一節を引くと。

     聖なる都が、金色の靄の奥深く、紫色に見えていた。古りし世の夕まぐれである。宇宙の不死鳥(フェニックス)とも申すべきスルヤー星の死は、ベナレスの都の圓屋根から幾千萬の寶石珠玉を奪い去ってゐた。
     東方の丘陵には、檳榔樹の蜿蜒たる森が、暮色蒼然たる金色の葉むらの影を、ハバッドの谿谷の上に揺り動かしてゐた。――それと反對側の斜面には、むせかへるやうな微風に無數の花冠を波打たせてゐるバラの苑生に隔てられて、神秘的な金殿玉樓の數々が、夕焼の炎の中に、段々をなして聳り立つてゐた。彼處、苑生の遠近(おちこち)には、吹上の水がすらりと空へほとばしり、その沫(しぶき)は火の色の雪かとばかり霏々として舞ひ落ちてゐた。


    これが、冒頭。この言葉の美しさを追うのに夢中になって、ストーリーがまったく頭に入らない(笑)

  • 2巻までくると旧字体を読むのも大分慣れてくるのではないでしょうか。
    「未来のイヴ」、「至上の愛」、「アケディッセリル女王」を収録。
    「至上の愛」の「黄金燭台社」が個人的にとても素晴らしいと思います。風刺が効いていて。
    他の話も純愛だったり風刺だったりホラーだったり哲学だったり。

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