- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024383
感想・レビュー・書評
-
父の古い友人である、浅木さんに招かれた六甲山の別荘での1952年の夏の話。
浅木さんの息子である同い年の一彦と、東京から来た進はすぐに仲良くなる。
一彦に連れられて向かった、ヒョウタン池で香という同い年の少女と出会う。
六甲の避暑地で過ごす、14歳の少年達のひと夏の思い出と、初恋。
少年達の日常と、昭和10年の彼らの父親の時代の話が交互にあり、時系列を把握しながら読み進めた。
香の叔母の夫が犯人かと思いながら、六甲の女王が、真千子だと思っていたらすっかり騙された。
恋愛の縺れが絡んだ、殺人事件だが、どろどろ感は無く、純文学を読んだような読了感になった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1952年、六甲山の別荘で夏休みを過ごすことになった寺元進ら少年少女達の淡い初恋物語を軸に、進の父らが戦前にベルリンで出会う女性のパートと、戦時中に起きた事件のパートが絡むプロット。
甘酸っぱい三角関係の恋物語だけでもノスタルジーにひたれて面白いが、上記3つのパートが収束する終盤で明かされる真相は衝撃度大。まさに“文芸とミステリの融合”だ。レッドヘリングが多すぎるきらいもあるが、ミスリードにまんまとやられてしまった。ネットのレビューを読んで改めて張り巡らされていた伏線の数々に驚愕。伏線を回収してスッキリしたい人は、「裏旋の超絶☆塩レビュー」のネタバレ解説がオススメ。含みを持たせる最後の一行といい、タイトルといい多くを語らず行間を読ませる上手さが光る。とある登場人物のモデルが現実世界で成した事業がトリックに関連する、という隠し味も小気味良い。
著者は本書の刊行を最後に2009年に失踪しているという。今もどこかで健在でいることを切に願う。夏休みに読みたい一冊。
週刊文春ミステリーベスト10 8位
このミステリーがすごい! 7位
本格ミステリ・ベスト10 18位
ミステリが読みたい! 4位 -
みずみずしい青春小説だなぁと思って読んでいたら、 実はミスディレクションだらけで 超絶技巧が施された作品だあったことが最後に明らかになる。 こういう作品は過去に類例がないわけではないが、 ミステリとしてのカタルシスより ほろ苦い初恋物語としての余韻が最後に勝っているところこそが、 超絶技巧なのではないかと思う。 それだけ青春小説としての意匠のレベルが高すぎる! 多島は「汚名」あたりから作風が変わってきて。 純文学寄りの、匂い立つような文章を書くようになった。 本作も、ヒロインの少女がとても魅力的だし、 この少女をめぐる2人の少年の揺れる心情の書き方がうまい! うっとりと読みすすんでしまった。 もともとアイデアと構成力は抜群の人なのだから、 これに文章力がついたら、鬼に金棒ではないか。 (しかも、その文章力をミステリーのトリックに使われるのだよ!) どうやら、多島斗志之は最強の小説家になったようだ。
-
主人公の進と一彦と香が中学生時代の夏休みに過ごした「六甲山の別荘での出来事」をメインに、ドイツで出会った「相田真千子の話」と、香の叔母である「日登美の学生時代の話」が合間に挿入され、同時進行していきます。複線の張り方やミスリードがとても巧妙でした。
インパクトが弱いのが難点ですが、一旦頁を開くと最後まで止められなくなる不思議な魅力がある作品だと思います。 -
このミスに載っていたから。
ミステリーというよりも深い文芸作品のようでした。 -
ミステリー×文学
時間が飛び跳ねる
誰が誰?ってなる。人物相関はなんとなく分かるけど、時系列もメモ取りながら読むと書ける。あー、そういうことか。ってなる。
題名の黒百合はかなり攻めた付け方に思える。 -
相関図は埋まっていくんだけどはっきり思い出せなくてなんかボヤンと… 事実が淡々と述べられてるだけなのに展開が気になって。で、黒百合は何だった笑
-
始めて読んだ作家だったからちょっと調べてみたら、なにこれ!この作家自体がミステリーじゃないの。とてもおもしろかった。私が子供の頃NHKテレビで少年ドラマシリーズというのがあり、それを思い出しながら読んだ。そんな感じの少年少女をめぐる軽いミステリーかと思ったら、とんでもなかった。この、場面の移り変わりと登場人物の絡み合い、そしてレッドへリングにどんでんがえし。読了後、部分部分を読み返しましたよ。北原白秋にボードレールと詩情もたっぷり、最後もあとひく。そしてタイトルの妙。私の好みの小説でした。まいった!