冬雷

著者 :
  • 東京創元社
3.88
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本棚登録 : 370
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025540

作品紹介・あらすじ

大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町(おのみやまち)の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。『雪の鉄樹』で最注目の新鋭が濃密な人間ドラマを描く、最高傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。鷹匠と神社、閉鎖的な小さな港町の古い慣習と因縁。後半の展開が怒涛すぎた。

  • ☆3.6

    代助は千田家の後継ぎとなるため十一歳で養子になった。
    千田家があるのはとても田舎で、そこで行われる神社の大祭に特別な役目があるため、神社の加賀美家と共に重要な家として扱われていた。
    代助は後継ぎの役目として鷹の緑丸の世話をし、鷹匠の訓練をし始めた。
    神社の加賀美家は大祭で舞を踊る巫女を代々勤めており、今代は母親を早くに亡くした真琴がその役を担っている。
    特別な家の二人は周りに遠巻きにされ、同い年の代助と真琴は日頃から一緒に過ごすことが多くなる。
    そのうちに自然とお互いに大事な存在となってゆくのだが……

    とても重いお話で、いろんなものを耐えて耐えてそれでも顧みられることのない二人がとても可哀想だった。
    二つの家にある関係や田舎につきものなしがらみに強く縛られ、羨ましがられることもあるけれど自由なんてない。
    諦めることがイコール大人になることな世界で、どれだけ彼らに抵抗できただろうか。
    どうか、どうか、この先の彼らの未来が笑顔でいられるものであるように。

  • ほぼ1日で読了。

    関西地方の港町。
    古いしきたりの残る町。

    施設から冬雷閣という両家に引き取られ、跡取りとなることとなった代助。
    その町の歴史ある神社の娘の真琴。
    冬雷閣と神社は豊漁を祈る祭りで重要な役割を担う。

    そして、この二つは不思議な縁を持つ。

    ページをめくる手が止まらない。
    遠田ワールドの名作

  • 凄まじい人間ドラマを描いたと言って差し支えないだろう。
    幼い頃、施設から田舎町の名家千田家の跡取りとなった代助。千田家とともに田舎町を守る鷹櫛神社の巫女真琴。
    決して結ばれる事のない真琴と大助をめぐる人間関係が動き出す。
    小さな田舎町を守るためならば、なんでも許されるのか。ドロドロとした田舎町の濃密な人間模様が繰り広げられる。

  • 先生らしい作品で今回も面白かった
    親子、血のつながりをテーマにしながら古くから続くしきたりに支配された住民達の異様性がなんとも恐ろしかった。

  • 上手。
    よかったです。
    愛美が可哀想だった。
    あとお兄ちゃんの龍も可哀想だった。
    真琴も可哀想。
    代助も可哀想。
    みんな可哀想。
    これからみんな幸せになれるといいな。

  • 遠田潤子さん3冊目
    読む前からもう苦しい話だとわかってるんです。
    でも図書館でどれにしようか…と悩むわけです笑
    遠田潤子の前後に楽しい本読めばいいか♪
    と借りてしまうんですね〜。

    このやめられないのが遠田シンドロームと言われるやつなのかΣ(-᷅_-᷄๑)

    出だしからある女性の遺書で始まります…
    ある田舎の町で鷹匠をしていたらしい主人公
    過去に何かがあって町から逃げ出したらしい…
    うわーまただわ…らしいらしいともうダメ!
    気になって仕方ない(*_*)

    今回もなんて辛い運命の主人公なの…
    因習に囚われた町、身勝手な町の人々、鷹匠に神楽、そして生贄のような存在…
    もう横溝正史の金田一のような町とラストの全員揃っての謎解き笑笑

    続けて読めない遠田潤子…面白かった(〃ω〃)

  • 遠田作品の主人公は必ず重いものを背負っている。
    本作も遠田ワールド全開でした。

  • 孤児だった代助は、古い港町の名家「冬雷閣」に引き取られる。代助という名は親に捨てられた赤ちゃんが夏目漱石のそれから、の文庫本だけ持たされていたことからつけられたもの。

    現在は害鳥撃退用の仕事をしているが、12年前に失踪した義弟、翔一郎の遺体が発見された事で、町に戻り告別式に参加したいと伝えるが拒否される。
    失踪事件の容疑者と決めつけられた代助は恋人の真琴と別れ、町を追われた。

    代助が引き取られた、冬雷閣は代々鷹匠を務め、鷹櫛神社のひとり娘の真琴は冬雷閣とは切っても切れない縁の、巫女で神楽の名手である。そして、遺体の第一発見者は真琴だった。

    代助の回想で上述の港町の事情及び代助と真琴の事由が分かるが、大きな出来事は義弟の翔一郎が産まれた=冬雷閣の正しい跡継ぎ誕生。孤児院から貰われてきた代助の立場がなくなる。養父母だけでなく町中の疑いの目が、代助に向かい町を出る。


    翔一郎の死の真相を追うことにより、町の伝統の秘密、遺書の便箋の鳥のイラストのズレ、日記の記載内容に違和感を覚え探偵のようにはまっていく。

    今度こそ代助は真琴と一緒になってほしい。

  • 鷹匠とか巫女とか、はじめは馴染みのない世界で入りにくいかと思ったが、読むほどに引き込まれていってイッキ読みしてしまった。
    遠田さんの作品2作目。明るい感じではないけど、終わり方が好き。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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