流浪の月

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028022

感想・レビュー・書評

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  • 本当のことを言っているのに、誰にも永遠に受け入れてもらえない。
    失望感、絶望感、無力感。

    更紗や文みたいな人は、現実にもきっとたくさんいるだろうなと思った。
    周りに言えないだけで、周りが知らないだけで、たくさんたくさんいるだろうなと思った。

    世間的にはだめなことでも、本人にとってはとても救いになるようなこと。
    自分にとっては全く違うような印象が、ネットで、噂で、マスメディアで操作されて。
    そのうち自分自身も分からなくなって不安になること。
    まさに「聖域」。信じているそのものなのに、近づけないもの。届かないもの。
    「事実と真実は月と地球ほどの隔たりがある」。

    自分の痛みを人に完全に伝えられないように
    人の痛みなんて絶対にわからない。
    どんな痛みもいつか誰かと分かり合えるだなんて嘘だ。
    代わってもらえないし、決して捨てられない。
    痛みも、つらさも、孤独も。


    気持ちが分かりすぎてしまってつらかった。
    だけどきっと私自身も彼らのことを完全に分かることはできていないのだろう。
    ただの自己満足だ。

    読み返したくない。またつらくなるから。
    こんな感情はもうなりたくない。
    けれど、この本はずっと手元に置いておきたい。読み返さずに、ずっと。
    心が混乱している。
    こんな本は初めてだ。

    2人がいまも、この世界のどこかで、
    どうか幸せに、平穏に暮らせていますように。

    • アールグレイさん
      事実と真実は月と地球ほどの隔たりがある
      何だか、考え込んでしまいました。難しいです。多分、あんな感じかな・・・なんて思いました。う~ん ...
      事実と真実は月と地球ほどの隔たりがある
      何だか、考え込んでしまいました。難しいです。多分、あんな感じかな・・・なんて思いました。う~ん 凪良ゆう、ただものではないゾ!
      2021/05/15
    • 衣紅*海外在住さん
      これは個人的には読んでて本当につらくなりました。わかってもらえないこと、受け入れてくれないことのつらさがひしひしと伝わりました。だけれど大い...
      これは個人的には読んでて本当につらくなりました。わかってもらえないこと、受け入れてくれないことのつらさがひしひしと伝わりました。だけれど大いに感情を揺さぶられ、大切な作品です。
      2021/05/15
  • 初の凪良 ゆう作品。筆者の経歴や作品のあらすじも、全く予備知識を収集することなく、単に本屋大賞受賞作品というだけで手に取った作品。

    世の中に数え切れない程の沢山の書籍が出版されているけれども、肌の合う作品に出会うのはごく稀で、本書はその1冊となった作品でした❗

    愛ではないけれども、彼と彼女しか分かりえない関係を、主に彼女の視線で綴り補足的な感じで綴る彼の視線は、作品に大きな深みを感じさせます。正に本屋大賞受賞も納得の作品でした❗少し切ないけれども、温かいオススメの作品です。

  • 不遇な少女時代は読んでいて辛く苦しい。文の元で落ち着いた心でいられることがどれほど嬉しいだろうか。
    本来は外敵から自分を守るための幼い子供というガラスケースは、更紗の声を外に出さない事もしたようだ。
    二ヶ月の生活でここまで文に固執する更紗の心の状態を作り上げた環境がとても暗く見えてくる。
    登場人物にも話の中の反応にも共感ができなかったかなぁ。一貫して暗くて読むのが辛い本だった様に思う。ただし、こう言う気持ちにさせる著者の文体はさすがなのかと言い聞かせて読了。

    続けて映画も観たが、演技、演出のおかげで暗さだけを感じる作品ではなくなった。星一個追加笑

  • 家内更紗は父と母との一風変わった生活を楽しんでいたが、8歳の時に父が他界し、母が家を出て行き、叔母の家に引き取られる…。叔母の家では従兄にわいせつな行為を強要される中、当時19歳の佐伯文と出逢い一緒に暮らすことに…文は更紗の思うとおりの生活をさせてくれ、更紗の自由奔放な生活に文も癒やされていたが、世の中は「家内更紗ちゃん誘拐事件」として、2ヶ月後文は逮捕され、更紗は児童養護施設に行くことになった…。2人はどんな形であれずっとお互いを想い続け、2人は大人になり再会する…。再会後も過去の「家内更紗ちゃん誘拐事件」のことがつきまとう…。
    読み終えてみて、すごくよかった~とひと言に尽きてしまう…そんな感覚です。更紗の母は更紗をおいて家を出てしまうけれど、終盤の更紗と文の会話とか、更紗の父と母の会話ではないか、やっぱり親子なんだなぁ~とか感じちゃったくらいです。それと、この作品の装丁、アイスクリーム、これすごく好きです!

  • 小学生の頃、家族と別れることになりおばの家に住むことになった更紗。更紗が遊ぶ公園でロリコンと噂されていたいつも読書している一人暮らしの大学生・文。おばの家での生活にたえきれなくなった更紗はある日、文の家に行くことにする。世間は誘拐事件として報道されてゆくが、事実と真実は違うものであった。大人になった更紗はフミと再会する。そこで二人が待ち受けるものも過去と同じであった。
    予想以上に入り込み、一気読みしてしまった。恋でもなく家族でもなく…しかし、二人互い互いに居場所があるという二人の関係。周りは非難するが、一緒にいたいという切実なる思い。こういった二人を今まで見たことがなかったかな…奇跡的な二人の出会い、あり方でした。孤独感、苦しさ、真実とか差別とか心に突き刺さったなあ。誰にも理解されない、思うままに生きれない、更紗と文。その様子、凄まじい筆力。程度はあるにせよ生きづらい世の中になっているのかな。孤独は嫌だとか、弱さである証拠としての一方的な暴力が多い世界。二人の苦しみは誰にでもふりかかるものかもしれない。圧倒的な一冊であった。今後もこの作家さんからは目が離せない。

  • ちょっと泣けた。これは読まないと分からない。
    ハッピーエンドと言うことなんだろうけど、これからも二人はたくさん苦しむと思う。でも、二人にとってこの世界は心地よい世界であると思える時があったらいいなと思った一冊。

    続きとか、あったらいいのに・・・。

  • 事実と真実は違う。

    世の中に「本物の愛」なんてどれくらいある?

    よく似ていて、でも少しちがうもののほうが多いんじゃない?

    みんなうっすら気づいていて、でもこれは本物じゃないからと捨てたりしない。

    本物なんてそうそう世の中に転がっていない。

    だから自分が手にしたものを愛と定めて殉じようと心を決める。

    それが結婚なのかもしれない。

  • ぐいぐいと物語の世界に引き込まれて、わずか一日で読了。久しぶりに物語に鷲掴みにされたような感覚を味わった。
    あらすじは書かない。この物語はそういった前情報を何も得ないまま読み始めることが正解だと思う。なぜなら、哀しいかな、この物語に登場する多くの人と同様、私たちはさまざまな先入観を持っているから。先入観のメガネをかけずに読み始めるといい気がする。
    私たちは、人間関係、しがらみ、世間の目から完全には自由になれない。その中で折り合いをつけて生きている。恋愛や結婚という形も、その折り合いの産物かもしれない。この物語の2人の主人公を完全には理解できない。でも、他者を拒絶しつつ、どこかで寂しく、本質的なつながりを求める2人の思いは理解できる。

  • 2020年本屋大賞は伊達じゃない!

    取り憑かれたように一気に読み終えました。

    「真実と事実は違う」この一言に本作は集約されている気がします。

    そして、やはり人は1人では生きていけないということを再認識させられる。

    本作の主人公は間違いなく更紗と亮の2人。

    世間から見ると幼女時代に誘拐され2ヶ月もの間監禁されていた被害女性と幼き幼女を誘拐し、監禁していた変態ロリコンの加害者。

    15年の時を経て2人は再会する。

    一見すると大人へと成長した女性(更紗)が一方的に加害男性(亮)へ付き纏う。

    そう、世間一般でいうまさにストーカーである。

    これが、世間が認識している事実。

    しかし、2人にしかわからない世界の中での真実は全く違っていた。

    そして、物語のラストで明かされる一見すると単なるロリコンに隠されていた秘密。

    人を好きになることの辛さ、大切な人と一緒にいることの苦悩。

    ここに描かれているのは本当の意味での純愛物語。


    説明
    内容紹介
    2020年本屋大賞受賞
    第41回(2020年)吉川英治文学新人賞候補作
    せっかくの善意をわたしは捨てていく。
    そんなものでは、わたしはかけらも救われない。
    愛ではない。けれどそばにいたい。
    新しい人間関係への旅立ちを描き、
    実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

    あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
    内容(「BOOK」データベースより)
    あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
    著者について
    2007年、長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的デビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には初の非BL作品『神さまのビオトープ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『わたしの美しい庭』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    凪良/ゆう
    滋賀県生まれ。“小説花丸”2006年冬の号に中編「恋するエゴイスト」が掲載される。翌年、長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 美しいもの、楽しいことに満ち溢れた、両親との暮らしから一変。
    つらく、耐えきれそうにないできごとが続く、伯母の家の暮らし。

    それを救ってくれたのは、文だった。

    2020年本屋大賞受賞作。

    引きこまれる物語。

    更紗の、きれいなものや楽しいこと、自由への感性。
    文の、育ちの良さからくる立ち居振る舞いと、相手を拒絶しきらないやさしさと、距離感。

    どちらも透明感のある美しさで、独特の世界。

    決して逃れられない世間の目と、デジタルタトゥー。
    もがき、苦しむふたり。

    最後は清々しかった。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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