とらすの子

著者 :
  • 東京創元社
3.86
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本棚登録 : 557
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028749

作品紹介・あらすじ

「とらすの会」にはマレ様と呼ばれる世にも美しいひとがいて、悩みや不満を話すと、その原因となる人物は無惨な殺され方をするのだ――。多発する惨殺死体について調査をするライターの美羽は、取材相手からそのような話を聞き出す。よくある妄想だと話を切り上げようとすると、取材相手が破裂するようにして死んでしまう。異様な出来事にショックを受けながらも「とらすの会」に潜入する美羽だったが……。『ほねがらみ』『異端の祝祭』で話題の著者が贈る、新世代のカルトホラー!

感想・レビュー・書評

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  • 題名、表紙から読み取れる情報は何も無いです。少なくともほんわかではない事ぐらいか。
    カルト宗教ものなのかなと思いましたが完全にホラーでした。
    悪魔という概念は西洋のもので、純粋な悪という存在は少なくとも古来日本の中ではあまり聞いた事が無い。なので悪魔が自由自在に人を殺害してくというある意味情緒の無い現象はホラーとしては非常に西洋的で、そこに理由が無いだけに救いも無いです。
    しかも攻撃がとても物理的でパワー系なので、もはや霊現象や呪いなどのか弱い存在感は皆無です。
    そういう色々な事を通過したうえで、エンターテイメントホラーとしてとても面白かったです。

  • 都内無差別連続殺人事件が発生する。
    殺害された人々には共通点がまるでない。
    あるとすれば、皆、通常の亡くなり方ではないこと。
    その全てに、「とらすの会」と呼ばれる集団が関わっているようだが…

    マレさまと呼ばれる人物に願えば、自分が気に食わないと思った人物が死ぬ。
    そんなことができるのは、人ではない…
    勘のいい人なら、この言葉ってアレからきてるよね、と気づくかもしれない。
    けれども、知ったところで物語は止まらない。
    止まるはずもない。
    だってこれは人智を超えた怪物の話。

    ホラーを期待するなら、不気味な遺体の描写力にややかけると感じるかもしれない。
    不条理小説と読むのならば、我が意を得たり。
    ミステリーとして読むのなら未解決事件(犯人が捕まって、それからも求めるなら)としての終わり方に物足りないと感じるかもしれない。
    悪魔は死なない。
    人間がいる限り。
    その結末をどう捉えるかによって自らの内にある悪魔を見ることができるかもしれない。

  • どう考えても人じゃなさそうなほど美しいし、人の気持ちがわからなくて学習しながら相手が望むように振る舞う。川島の親は(といっても血は繋がってない)一生懸命人らしく育てようとしてたのでそれには感謝してるっぽいし、井坂くんのことは好意まではあるかどうかわからないけどとりあえず一緒にいて1番良いと思ってそう。魔女というか悪魔な感じがするけれど、横の女のほうが造型が悪魔だから魔女なのかな。
    川島家尊いです。川島通泰の日記部分に惹き付けられました。「Got it.」って返す子ども、怖い。
    川島のご両親も井坂くんも老い過ぎてて、希彦から生命力取られてるんだと思いました。「お父さん」、井坂くんだったんだ。
    神仏に縋っても救われなかったという絶望感持った人は居なくならないだろうから、悪魔も居なくならない。希彦はもっと上手くやっていくだろうな。。白石さんも消したことだし。
    正しさがキツい人もいる、というのも現実的です。自分の歪みを直視させられるのは。坂本さんが自分の名前をマレ様に言ったのは半分はこれだろうけど、もう半分は「白石さんならとらすの会を無視しない」というのもあったんだろうな…それで、お礼。坂本さんも充分強かったです。。
    芦花公園さんの作品は初めて読みましたが勢いがありました。人の裏表が入れ替わっている、とか、内臓が滅茶苦茶な位置に捻転しているとか……うえぇ。竹輪を見ると思い出しそう

  • 最初の1ページから最後の一行まで「嫌」の濃度が濃い!
    凄惨な事件も美しすぎる「マレ様」も非現実的なのに、それを目の前にした人々の心の動きが妙にリアルな質感でぞわぞわする……。

  • 怖かった。
    続きが知りたくて一日で一気読みした。
    だけど怖いだけで終わってしまった。

  • 以前に試し読みだけして気になっていた作品。さくっと読めて面白かったです。ある意味ハッピーエンドですし、人間(化け物?)の怖さを煮詰めたような作品です。

  • 怖面白すぎる。
    この著者は、不快な美しい絶対悪を描くのが本当に上手。
    途中からすっかり希彦に魅了され、結末が知りたくて知りたくて、一気読み。
    きれいすぎる景色を見ると、怖くなる感覚を知っているけれど、希彦もそんな感じなのだろうか、と想像しながら読んだ。

    そして、この著者の醍醐味、不条理な怖いものが出てきてがっつりホラーに加え、人の暗く醜い悍ましい性根の怖さがひたひたと物語全般にあって、今作も終始ぞわぞわした。
    希彦の容貌も相まって、映像美が秀でた映画を見ているような物語。
    「ミッドサマー」とはまた違う、美しさに“ぽ〜”っとなりながら、地に足がつかないまま怖さを噛み締める読後だった。

  • 宗教観はよくわからないが、100%の悪は恐ろしい
    確かに悪が芽生えても良さそうな状況を善で固めた人は眩しくて、後ろめたい気持ちのある自分は辛くなることもある
    その眩しさを是とするか非とするかで、善と悪も分かれていくのかもしれない

  • いつもの『得体の知れないものが恐い!』というのではなく、『生きてる人間の心理ってほんと恐い!』の方だった。だから恐いと言うより、苦痛の方が強く感じたかもしれない。坂本と白石の交流に対して、途中まで上手くいってたじゃん…!という悔しさを抱いたけれど、まぁそう上手くいく展開ではないよな…とも思った。悲しい。そういうマイナス感情を高々積み重ねた挙句、ラストページで明かされた『苗字』にゾッとしたので、本当にこの作者は恐ろしいものを書くなぁと改めて思い知った。

  • 芦花公園さんの十八番ともいえるオカルトホラー。
    ほねがらみ、異端の祝祭などに出てくる物部家の方も出でくるのでファンとしてはニヤッとするポイントも良かった。3人の視点でそれぞれ物語が進み、どう交わって行くのか気になって一気読み。珍しくハッピーエンドか!?でも芦花公園さんだし‥是非結末はご自身で確かめて下さい!

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著者プロフィール

東京都生まれ。2020年、カクヨムにて発表した中編「ほねがらみ‐某所怪談レポートー」がTwitterで話題となり、書籍化決定。21年、同作を改題した『ほねがらみ』でデビュー。古今東西のホラー映画・ホラー小説を偏愛する。

「2023年 『聖者の落角』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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