赤毛のレドメイン家【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488111069

作品紹介・あらすじ

六月半ばの日暮れどき、ダートムアの採石場で、スコットランド・ヤードの敏腕刑事ブレンドンは、絶世の美女とすれ違った。それから数日後、ブレンドンはその女性から助けを請う手紙を受けとる。夫が、彼女の叔父のロバート・レドメインに殺されたらしいというのだ……。レドメイン家をめぐる奇怪な事件は、美しい万華鏡のようにその姿を変化させつづけ、やがて驚愕の真相へ――。江戸川乱歩が激賞した名作が満を持して新訳で登場!

感想・レビュー・書評

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  • 2024/4/18~
    スコットランド・ヤードの刑事ブレンドンは休暇のためダートムアを訪れ、釣りへ行く途中で絶世の美女とすれ違った。
    そんな折町でペンディーン殺人事件が起き、その妻からの捜査依頼の手紙が届く。その妻こそが例の女性であった。彼女の話によると夫がバンガローで殺害されたらしいと言う、バンガローには多量の血痕が残され、死体も発見されず犯人と目されたロバート・レドメインは目下逃走中とのことであった。
    ジェニーはベンディゴー・レドメインのもとへ移り、その居を訪ねたブレンドンはその帰路ロバートを目撃者する。

  • あの江戸川乱歩がミステリーベスト10に入ると絶賛した本作。期待値が大きかっただけに、そこまでの衝撃は受けなかったが、発表されたのが1920年代ということを踏まえると、歴史に残る小説だと感じた。前半の探偵役ブレンドンと後半の探偵役ギャンズの対比も物語の深みを増していると感じた。

  • フィルポッツ『赤毛のレドメイン家』1922
    江戸川乱歩のベスト10で、第一位に入っている作品なので、読んだ。著者はアガサ・クリスティにアドバイスをしたという先輩作家。
    ブレンドンという刑事が〝被害者〟の妻に一目惚れしまい、いろいろと狂っていく話なのだが、こういう捜査側の人間らしさが痛ましくも興味深い。悪人もギラリと光る邪悪さが明らかになるか、ニーチェなどに傾倒していてやや理屈っぽい。第一次世界大戦の戦争神経症や毒ガス中毒など、戦争批判などもこめられているように思う。ギャンズが刑事にいろいろ訓戒をのべるところはなかなか名句があると思う。最初はロマンス小説のように感じたが、最後に邪悪がみえてやはりミステリーの名著だと思う。

  •  原著1922年刊。
     本格推理小説黄金期(の前期?)の名作の一つとされ、特に日本では江戸川乱歩の絶賛以来評価が高いらしい。
     冒頭の1,2章はちょっと読みにくさを感じ、あまり面白くないかなと思ったのだが、次第に物語に没頭させられた。
     ちょうど私は1泊2日の検査入院で、その空いた時間を本書がとても楽しませてくれたと思う。
     巻末の解説によると作者フィルポッツは普通小説の作家でもあったそうで、なるほど、本作は恋愛心理も追っていてそんな感じかもしれない。
     エラリー・クイーンのような謎解きパズル小説とは違って、かならずしも結末前に全ての情報が読者に開示されるわけではない。が、そんなに不満が残る訳でもない。
     後半は確かに心理戦のようなスリルがあって、面白かった。とにかく入院中の私を楽しくさせてもらい、たまたま持っていったこの本に、満足している。

  • 戦争の後遺症。精神に影響。国や愛する人のために戦ったのにも関わらず。
    被害者を最小にして犯人逮捕。
    お金。
    慌てなくても、遺産はそのうち入るだろう、でも。

  • 余談ですが、今からちょうど100年前に書かれた作品。そんなに古い作品を読めるとは、今更ながら、文字ってすごいなぁと改めて思いました。作品自体は、驚くほどのどんでん返しがあるわけではありませんが、堅実な本格ミステリーだと思いました。アンソニーホロヴィッツの作品が好きな人にはオススメです。最後の犯人の手記は、当たり前のことながら、犯人視点なので、それだけ読むと倒叙もので、一冊で2度楽しめてなんか得した気分。主人公の刑事の無能ぶりが暴露されていて面白かったです。

  • 超古典でありながら現在まで読んだことのなかったこれを
    新訳が出たのを機に読んでみた。

    中盤あたりで犯人の見当がついてしまったけれど、
    これが書かれたのが約100年前であることを思えば
    当時は斬新だったのだろうなあと思った。

    ついでにこれ探偵役がエルキュール・ポワロだったら
    最後の被害者助かってたかもなあと思った。
    ポワロなら味方を騙して犯人の裏をかくぐらいのこと
    やりそうだから。

  • 恥ずかしながら、江戸川乱歩には明るくない。
    当然読んではいる。学校の図書室にあるようなものは、読んだ。
    しかし、ある時、中高生の時だっただろうか、ちょっと「あわないな」と思ってしまった。
    たとえるならば、牛脂多め、照り過剰なすき焼きのようで、私の好みには濃いと感じてしまったのだ。
    その後、色々さまよって、横溝正史にたどり着くのだが、それはまた別の話。

    とはいえ、江戸川乱歩がミステリ界において、否、文学史において大きな存在であることは知っている。
    だから、彼が万華鏡にたとえ絶賛したという『赤毛のレドメイン家』は、ぜひとも読みたいと思っていた。
    長らく絶版状態だったが、この度、新訳が出たことによって、ようやく手にすることができたのである。

    著者はイーデン・フィルポッツ(1862~1960)。
    『赤毛のレドメイン家』が書かれたのは1922年。
    著者60歳の時、今からおよそ100年前の作品である。

    読みながらたびたび既視感があった。
    なんだか、見たような場面、知っているような人物が頭にちらつくのである。

    象徴的な一族、
    謎の復員兵、
    事件の中心に美女、

    これは・・・・・・?

    『犬神家の一族』『獄門島』『真珠郎』『悪魔が来たりて笛をふく』『女王蜂』『百日紅の下にて』etc.etc.etc...

    横溝正史だなと。

    当然だ。
    江戸川乱歩が絶賛したのだから、数多の作家がこれを読んだに違いない。
    そして、それに感電、共鳴した彼らは、次々にその痺れを生かした作品をものしていったのだ。
    なにより江戸川乱歩自身が、まさにこの翻案作品を書いている。
    横溝正史も、翻案こそしなかったものの(先を越されてしまったからか?)、その余韻、反響の中にいくつもの作品を生み出したのだろう。

    「今読むと古く感じる」「使い古された話である」などという評価が見られるが、それはいかに多くの感電、共鳴があったかの証拠である。
    江戸川乱歩が絶賛した文章は巻頭に掲げられている。
    この文章とともに読むのが、この万華鏡の物語を味わうのに望ましい形なのだろう。

  • 乱歩が絶賛したことでも知られるイーデン・フィルポッツの長編が新訳版に。
    そういえばこれ、旧版を読んでいなかったんだよなぁ。読んでいたら比べられたのだが……。ただ、余り今時っぽくない訳文は、時代の雰囲気に合っていて良かったと思う。

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