- Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488118082
感想・レビュー・書評
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掟破りの真相、この作品を一言でいえば、そうなるのだろう。
無銭旅行後の無銭飲食、その後の死体発見と逃亡、という冒頭のエピソードから読者を作品世界へと引き込み、次々と不可解な謎が提示され、事件に関する捜査と議論が繰り返され、事件を巡る人間関係が明るみになっていく構成は、満点と言えよう。
しかしながら、「え?そんなことが可能なの?」と思わざるをえない真相は、事前の説明が不足で、故意の隠ぺいとしか思えず、本格的視点から見ると零点だろう。
ホテルの事件での犯人の侵入経路に関しても、図は示されているものの、意図的に議論が伏せられている。
また、途中で示された「12個の不可解な謎」の内で、鍵が鍵穴に差し込んであった謎について、十分な説明がなされていない点も不満。
作中で、ニセの手掛かりをばら撒いている可能性があることや、犯人が必ずしも合理的な思考をするとは限らないこと、こういったことを登場人物に語らせている点に興味を引いた。
タイトルの意味、死者とは誰なのか、真相を知るとわかる仕組みになっているのが面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フェル博士もの。無銭旅行中のケントはホテルの客に見せかけ食い逃げを働く。しかし、見せかけた客が泊まる部屋に案内してほしいと言われたケントはしかたなしにその部屋へと向かうがそこには死体が冷たく横たわっていた――。面白かった。派手さや興味を引くポイントは少ないものの、全体として何故? が多く、適度なかけひぐよかった。犯人の意外性は多少あるものの、ややアンフェアな気もする。できないこともないけれど、偶然に頼ってる部分があると思う今回のトリックも芳しくない。作品としては普通の面白さかな、と思いました。
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カーのミステリー。この筋書きはありなのか…?とも思える展開で、カーらしい作品になっています。
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フェル博士シリーズです。
本書はあまりカーの特色は強くありません。
ケントという青年が知人の実業家ダンとの賭けで自力で南アフリカからロンドンまでの旅を決行しますが、約束の期日の前日にロンドンのホテルで食い逃げをしようとして、偶然に顔を潰された女の絞殺死体を発見してしまいます。
そんなケントはフェル博士に助けを求めます。
本書の見所は意外な犯人でしょう。
この意外な犯人の為にカーはいろんな努力をしていますが、これはアンフェアギリギリのものだと思います。 -
これでいいのか・・・・・・?
カーの魅力で一応★三つだけど、これを現代の作家が書いたら、というかカー以外が書いたら認められなかっただろ・・・・・・。
謎自体はなかなか魅力があるんだけど、その解明は拍子抜けというかなんと言うか。
あの大トリック(といっていいものかどうか・・・・・・)も、そんなのわかんねーよ!といった印象で。 -
意外すぎる真犯人に驚きを禁じ得ませんが、一応伏線を張っているとはいえ反則と言われても仕方がない印象が拭えません。
また、捜査や推理が思うようにいかずモタモタした展開や、「12個の不可解な謎」に対しての答えに納得いかないものがあり不満が残ります。 -
怪奇性を前面に押し出したような題名だが、中身はそんなオカルト趣味に走っていなく、むしろカーの作風の1つ、ドタバタコメディタッチの色合いの方が濃い。調べてみるとどうやらこの題名は必ずしも正確ではなく、ハヤカワ・ミステリ版の『死人を起す』が正解らしい。
友人との賭けで無銭旅行を南アフリカからロンドンまでしてきた青年が、空腹でホテルの前で休んでいたところ、上からホテルの朝食券が降ってくる。天の恵みとばかり朝食にありつき、ホテルの従業員に勘違いされて、券に書かれていた番号の部屋に案内される。しかしそこにあったのは顔をつぶされた女の死体だった。
本作はこのように巻き込まれ型の事件を扱っており、そのシチュエーションはカー独特のウィットに富んでいて面白い。実際、私は『曲がった蝶番』を読んだ後でカーに対してさらに好印象を持っていたものだから、期待が高まっていた。
が、しかし結論から云えば本作は駄作といわざるを得ない。なぜならほとんどの謎がアンフェアに解かれるからだ。メインの謎が実は××だった、おまけに犯人もあまりに意外すぎて、唖然としてしまう。恐らくカーはこの着想を思いついたときは思わずほくそ笑んだことだろうが、独創的すぎて誰も付いていけないというのが実情だろう。逆にこれだからこそカー!と讃えるファンもいるだろうが、あいにく私はそこまで寛容ではない。もしくはルパンシリーズに触発されたのかとも思ったが、それは勘繰りというものだろう。
しかしカーという作家はどうしてこんなに作品の完成度に差があるのだろう。『帽子収集狂~』で面白さを知ったと思ったら、続く『盲目の理髪師』、『アラビアン・ナイトの殺人』は凡作。どうせ次も同じだろうと思って読んださほど有名でない『曲がった蝶番』が意に反して傑作と、非常に高低差がありすぎる。しかもこれらは1933年~38年という5年間に書かれており、『帽子収集狂~』が33年で『曲がった蝶番』が38年である。つまりほぼ時系列に読んでこれほどの違いがあるのだ。例えばエラリー・クイーンは初期は作品を発表するごとに出来が良くなり、『Yの悲劇』や『エジプト十字架の謎』あたりを頂点としてそこから下り坂に差し掛かり、再度『災厄の町』で盛り返すという、作品のクオリティについて大きな波がはっきりしているが、カーは景気不安定な時の株価指数や為替相場のように作品ごとにそれが乱高下している。
やはり異色の作家だ、カーは。この作品は自身のカーマニア度を測るのに、リトマス試験紙的な役割を果たす作品かもしれない。 -
フィル博士