白い僧院の殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118464

作品紹介・あらすじ

ロンドン近郊の由緒ある屋敷〈白い僧院〉でハリウッドの人気女優マーシャ・テイトが殺害された。周囲は百フィートにわたって雪に覆われ、発見者の足跡以外に痕跡を認めない。事件前マーシャに毒入りチョコレートが届くなど不穏な雰囲気はあった。甥が〈白い僧院〉の客だったことから呼び寄せられたヘンリ・メリヴェール卿は、たちどころに真相を看破する。江戸川乱歩が「カーの発明したトリックの内でも最も優れたものの一つ」と激賞した本格ミステリの名作。

感想・レビュー・書評

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  • 分かりそうで分からない、盲点を衝くトリック。犯人・被害者の心理や、ロジックを総動員しての解決編は圧巻。やや無理のある部分があるのは確かだが、個人的にはこれは大傑作。


    ↓(自分用のトリックの記録も兼ねる)

    二つのダミーの説も面白い。(特に二つ目)
    ・テイトはジョンを待っているはずなのに、1時半に来た人物を3時までいさせるはずがない
    ・ジョンが帰ってくることを恐れ、レインジャーは足跡を処理しながら本館へは向かえなかった
    ・ジョンの足跡の上を辿り、足跡がぼやけたとしても、それを理由にジョンに罪を着せられる
    ・煙突に隠れていた際に、時計を見るためにマッチを何本も擦った

    などなど「あっ」と思わされる箇所がいくつも。
    だが真の解決はその更に上をいく。

    ジョンの帰宅を待ち望んでいるテイトは、本館のジョンの部屋へ。(暖炉の灰、使っていない客間と同量)そこで犬に出くわす。(テイトは犬の存在を知らない!!)
    ジョンの部屋にいることを知られたくはないため、廊下側のドアに鍵をかける。車の音が聞こえ、外へ(実際はエメリー!)
    エメリー、車のモニュメントで殺害。→死体、ジョンの部屋に。
    屋敷の勝手を知らないため、ルイーズにぶつかる。
    ジョン、二つの死刑の板挟み。
    朝、死体を別館に運び、発見者のフリ。別館で殺したように見せかけるため、デカンタやグラスを割る。(ブラインド閉めても光漏れるため、マッチを擦る)

    ジョンが犯人ではない根拠(どうせ偽るなら、帰宅時刻をテイトの死亡推定時刻より後にするはず)
    エメリーが犯人である根拠(犯人、外から入る 屋敷の勝手知らない エメリー別館で事件があったこと納得しない)
    なども非常に面白い。

    H.M卿の事件再現の目的にも驚かされるし、何よりH.M卿のキャラクターが好み。
    一気にカーにハマった。



  • カー史上最高のトリックと聞いて読んでみた。
    今回は怪奇要素はほとんどない。だが、その分トリックに力が入っている。
    雪の密室、いわゆる足跡のない殺人なのだが、トリック自体は単純ながら、登場人物たちの何げない会話や挙動が一つの真実を指していてよくできている。
    解説にもあったが、足跡のない殺人を複数あるトリックの一つではなく、がっつりメインとして扱う長編はなかなかないかもしれない。

    気難し屋のメリヴェール卿が意外にも情深く、そこがまたいい。

  • 第1作「黒死荘の殺人」がおもしろかったので、ヘンリ・メリヴェール卿シリーズ#2。
    古いお屋敷×密室。ロンドン近郊の由緒ある屋敷(白い僧院)で人気女優が殺害される。あたりは一面の雪。発見者以外の足跡はない。
    黒死荘に比べるとおどろおどろしさは少なめ。幽霊はでそう。ワトソン役のマスターズ刑事がいい味だしている。

  • 雪の密室殺人。
    謎が謎を呼び謎だらけでしたが、伏線もしっかり回収されて面白かった。

  • 雪の中の不可能犯罪。トリックはわかってしまえば単純だが、それ一本で長編を書いてしまう技量は凄い。

  • 周囲に雪の積もった僧院で人気女優が殺された。僧院の周りに残された足跡は死体発見者のものだけ。完全な密室。ヘンリーメルヴィル卿が解決に乗り出す。推理のパズル本などにも出てくる有名なトリックですが、たしかにうまいトリックです。

  • 『火刑法廷』と同じ作者。足跡系?
    ミステリは普段動機が分からないが、これは大体全員の動機が見えている(けど犯人は違っていた)。

  • 古典ミステリ読もう企画

    進みは悪かった。
    あまり面白みのない殺人一件をとても引っ張ってる感じがした。キャラも全然覚えられなくてしんどかった。
    謎解きからは面白いと感じた。

    足跡のない密室殺人。
    謎解きは論理的。

  • ・謎もシンプル、トリックもシンプルなのに最後まで分からなくて楽しめた。
    ・トリックがシンプルであるが故に、謎解きも納得感があった。
    ・最後の再現については、もうちょっと違うやり方もあったんじゃないかとは思わなくはないけど…
    ・読み終えた後にタイトルを改めて見ると、なるほど!と思える。
    ・これに関しては、訳者あとがきでも触れられていて、後書きを最初に読む人もいるからの文面なんだろうけど、読後に読むと、この翻訳者さんって(ミステリ的ないい意味で)意地悪な人だなと思う。その点も良かった。

  • 密室は犯人により綿密に計画されるもの、という先入観を見事に打ち砕かれた。物語中、複数の登場人物から様々な魅力的な密室解決案が提示されるという贅沢な内容で、謎解きにぐいぐいと引き込まれる。正直、没案も面白い!けど、真相はさらにそれをひっくりかえしてくれる。人物描写、館の描写は怪しげな雰囲気満載なのに読後感が意外とスッキリ、ホッコリしているのも良い。

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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