白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488119034

感想・レビュー・書評

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  • 足跡の雪密室の傑作と名高い本作。はっきりいって、古典的トリックとしての取り出し方に価値はあるものの、評判ほどのものか?と疑問を抱く。
    それが、間違いであった。読み終えた瞬間、大傑作だったと満足。

    名探偵HM卿の独壇場。もはやコントである。強烈すぎる。突拍子もない発想に、マスターズ警部も、ほとんど壊れているようだった。笑った笑った。

    毒入りチョコレート事件にはじまり、名女優の密室殺人。それぞれの思惑と疑惑が混在した時、HM卿の不可解な実験が始まる…

    アンフェアギリギリの綱渡りではある。だが、手掛かりからひとつひとつ崩していく推理が、なんとも腑に落ちる。ある強固たる事実。見逃していた自分が恥ずかしい。

    ハウダニットの美しさといったらもう、犯人、いや、HM卿の企みには、頭が上がらない。

  • どうして解らなかったんだろう!
    こんなに簡単な事だったとは。

    カーの代表作としてあまりにも有名な本作。確かこの雪の足跡のトリックは数々の推理ゲームの本にも取り上げられていたと思うが、まんまと引っかかってしまった。
    18章の最後の一行は靄の中を訳も解らず歩いていたら、すっと一筋の光が差し込んできた感じがして、思わず声を出して唸ってしまった。

    そして今までキャサリンかルイーズかどちらか解らない女性が別館を訪れる件も整然と説明され、久々に本格の美しさを感じた。

    犯人役は正直納得行かないが―エマリーは入院していたのでなかったのか?ここら辺がまだ十分理解できていない―、それを補って余りあるロジックの美しさだ。これほどシンプルな内容を11人の登場人物で捏ね繰り回して複雑にするとは、カーは根っからドタバタ喜劇が好きなようだ。

    しかし、やはり文章は読みにくい。しかしそれは訳文が悪いというよりもカーの文体それ自体が、回りくどく、しかも改行が少ない1ページ当たりの文字密度の濃さによるところが大きいように思った。

    世にはびこる傑作・名作は数あるが、これは確かに傑作の部類に入る。カー最盛期の作品はやはり凄かったと今回認識を改めた。

  • 周囲に雪が積もったブーン家の屋敷〈白い僧院〉の別館で、女優のマーシャが殺された。雪の上に残された足跡は発見者のものだけという有名なトリック。ヘンリメリヴェール卿がたちどころに謎を解く。江戸川乱歩も激賞した黄金時代の名作のひとつですね。

  • ミステリ。雪の密室もの。H・M。
    舞台設定もトリックも、わりとシンプルな感じ。
    1934年刊行の作品らしいので、以降の雪の密室もののミステリに影響を与えたものと予想。
    序盤、前日譚を登場人物の語りで済ませる構成は、個人的に頭に入りづらく苦手。
    H・Mが現場に登場してからは、明らかにテンション上がる。
    最後の事件解説は、H・Mの天才っぷりが分かって良い。

  • ハリウッドの人気女優が殺害された。
    現場は歴史ある邸宅の別館。
    しかし、別館へ続く道には
    第一発見者の足跡以外残っていない。
    犯人は痕跡を残さず
    どうやって犯行をなしたのか。
    不可能犯罪に挑むのは名探偵H・M。



    H・Mシリーズ2作目。
    雪景色の館の雰囲気が
    謎に包まれた事件との相乗効果で
    非常に美しい情景を描いていた。
    事件の謎ももちろん面白いが、
    H・Mの甥ベネットの登場、
    若い男女の恋模様、
    館の主人モーリスの
    何とも憎たらしいキャラクター等、
    読み物としても魅力溢れる作品だった。
    不可能と思える事件は論理的で
    意外な犯人、見事なトリックと、
    満足のいく真相が準備されていた。
    加えて、事件を複雑化させた様々な
    サイドストーリーも巧みだった。
    古い翻訳なので慣れるまで少々
    読みにくいのは仕方なかったが、
    ユダの窓、火刑法廷と並ぶ満足度。
    これぞ本格推理といった傑作。

  • お手本のようなミステリ。地味だが、すんなり納得のいく推理には感心した。ただこの手のきれいすぎる推理は、始めから犯人やトリックを知っている人が後から考えて書きました~、という感が何となく強いように感じる(作者がその様に作品を作るのは当然のことではあるが)。

  • 「足跡のない殺人」で真っ先に思い当たる作品です。被害者の死亡推定時刻は雪が止んでいた午前三時。しかし、足跡が発見者のものだけという設定でシンプルですが、盲点を巧みに突いたトリックは切れ味抜群です。
    しかし、そのトリックを成立させる為にあちらこちらでご都合主義と思える箇所があるのと、お話が地味でだらだらし感じで今一つな印象です。

  • 満足。
    こういう本格もの、大好きです。
    子供のころによく読んでいた(児童向けのものだけれど)あのワクワク感。
    最近の、科学的にもきちんと辻褄の合っているミステリも嫌いではないんだけれど、…何かが足りない。そんな寂しさを払拭してくれました。

    時代なのか翻訳なのか、文章的にちょっとだけ話に入り込むのに時間がかかったけれど、後半、止まりませんでした。(おかげでちょっと寝不足。)

    カー・クロフツ・チェスタトンなどなど、もう一度きちんと大人の翻訳で読み返してみよう。

  • すごく面白かった。

    雪の密室。
    不可思議な状況。
    しっかりとした解決。
    そして意外な犯人。

    こんなに面白い話が
    80年ほど前にかかれていて
    なおかつ
    80年ほどたったいまでも、こんなに鮮やかに解決されるなんて
    本当に驚きです。

  • 久しぶりのミステリ。
    久しぶりに読むと、読み方忘れる。
    というか、入るまでに時間がかかる。
    だからなのか、何なのか、HM卿が事件に乗り込んでくるまでは、結構読むのがしんどかった。
    訳も読みにくい気がする。

    が、ハマってくると一気に読めちゃいました。
    完璧に出来てるんだろうね、読後も特に疑問は抱かなかったし。
    最近のぬるいミステリとの格の違いは流石です。キリっとしてます。
    (でも読みにくい)

    なんだろう、デブだしハゲなんだけど、やっぱ魅力あるね、HM卿。

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カーター・ディクスンの作品

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