ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))
- 東京創元社 (1977年4月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488120085
感想・レビュー・書評
-
「三時」「命あるかぎり」など、とても緊迫感を感じて読んでいてびりびりした。「ニューヨーク・ブルース」の独白文体は独特の雰囲気があり、物語に引き込まれる。
「三時」
妻はどうも浮気をしているようだ。そっちがそうならこっちは報復するまでだ。時計屋の夫は地下室に時限爆弾を作ってセットしに入ったが・・ 思わぬハプニングが・・ 爆弾の時間までの緊迫感がすごい。2重のどんでん返し。いや3重か。
「自由の女神事件」
たまには博物館に行って彫刻でも見て教養を高めたら、と妻に言われた刑事の俺。ならでかい彫刻を、と自由の女神を見学に。すると登りにはいた太った男が帰りにはいない。休暇の間に一件落着した刑事。
「命あるかぎり」
ローマで目と目が会い電撃の出会いをした二人はニューヨークで結婚生活をスタートした。だが夫はサディストだった。逃れるべく妻は車で逃げ出すが・・ 残酷な終わり方。ウールリッチは終わり方がハッピーエンドとバッドエンドと両方ある。
「死の接吻」
腐れ縁のギャングと女。女はどうにかして男に報復したい。ある夜男は何かよからぬことをやって戻ってきた。そこで女は・・
「ニューヨーク・ブルース」
女をスカーフで殺したらしい男がホテルの部屋にひとりでいる。そこに警察がやってくる。つかまるまでの男の瞑想?
この男はウールリッチの分身かと思うような気がする。独白の文体と言葉が夜のニューヨークに漂う。午前0時から3時くらいの時間。
ホテルの部屋にひとりの男。真夜中、酒が友でリアルな友はいないようだ。私のポケットには赤黒いしみのついたスカーフが入っている。これはあの女のものか・・ 「何度となくともに過ごし、何度となく愛し合ったふたりではないか、・・・あれはただ、愛情が裏返しに出ただけだった。孤独が外へ向かって出ただけだった」おりしも男のルームナンバーを訪ねる警察の声が階下でする。
「特別配達」
赤ちゃんの誘拐事件が起きた。その赤ちゃんは特別な配合のミルクが必要だ、と親は新聞に出した。俺は夜中から朝にかけて愛馬のマミーでミルクを家家に配達する仕事。が・・ 今日の配達の家は? 牛乳配達屋と愛馬マミーの「特別配達」とは?
「となりの死人」
配達の牛乳を飲んだ金のない若い男を思わず殴ってしまったハーラン。動かない男を隣のあきべやに押し込めた。おりしもへんな臭いがアパートじゅうに立ちこめ、せっぱつまったハーランは・・
「毒食わば皿」みたいな、やらなくてもいい殺しをしてしまうはめに陥る、追い詰められた状態、を描く。
「ガムは知っていた」
殺しをした男は指紋を消すために、ホテルの上と下の階のドアノブを取り換え、これで逃げおおせたとおもったが・・ ホテルの掃除係のいつもの習慣が・・
「一滴の血」みたいな、ごくわずかの痕跡で御用。
「借り」
不注意から車を家の前の湖に落とした刑事。そこには幼いわが子が乗っていたが、男が湖に飛び込み救ってくれる。何年かたち、ある殺人犯がその町に逃げ込んだとしてその刑事は張り込みをしていたが・・ 苦しい選択。
「目覚めずして死なば」(コーネル・ウールリッチ短編集2)
「さらばニューヨーク」(コーネル・ウールリッチ短編集別巻)
「ハミング・バード帰る」(コーネル・ウールリッチ短編集別巻:セントルイス・ブルースとして)
「送って行くよキャスリーン」(コーネル・ウールリッチ短編集3)
初出
「三時」three O'Clock(ディテクティブ・フィクション・ウィークリー1938.10.1号)
「自由の女神事件」Red Liberty(The Corpse in the
Statue of Liberty)(ダイム・ディテクティブ1935.7.1
号)
「命あるかぎり」For the Rest of her Life(エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン1968.5月号)
「死の接吻」Collared (ZOne Night in Chicago)(ブラック・マスク1939.10月号)
「ニューヨーク・ブルース」New York Blues(エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン1970.12月号)
「特別配達」Mamie 'n'Me(オール・アメリカン・フィクション1938.5.6号)
「となりの死人」The Corpse Next Door(ディテクティブ・フィクション・ウィークリイ1937.1.23号)
「ガムは知っていた」Stuck with Murder(Stuck)(ダイム・ディテクティブ1937.10月号)
「借り」L.O.U-One Life(L.O.U*;Debt of Honor)(ダブル・ディテクティヴ1938.11月号)
「目覚めずして死なば」If I Should die Before I Wake(ディテクティブ・フィクション・ウィークリー1937.7.3号)
「さらばニューヨーク」Good bye,New York(Don't Wait Up for Me Tonight)(ストーリイ1937.10月号)
「ハミング・バード帰る」Humming Bird Comes Home (The Humming Bird)(ポケット・ディテクティブ1937.3月号)
「送って行くよキャスリーン」One Last Night (
I'll Take You Home,Kathleen)(ディテクティブ・ストーリー1940.5月号)
1977.4.22初版 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アイリッシュの作品は主人公の孤独感、焦燥感がひしひしと伝わってきて、どの作品も大好き。
-
2014/04/26/Sat. 購入。
2017/04/05/Wed.〜7/16/Sun. -
「ニューヨーク・ブルース」
2004年7月頃