最上階の殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488123093

感想・レビュー・書評

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  • こんなキュートな作品とは。古き良き探偵物の見本みたいなはじまり。お金を貯め込んだ小うるさい女性が殺害。単純な事件と思われたが‥。ロジャーの推理を裏付ける調査の様子、秘書とのラブコメっぷりが楽しい。阿津川さんの解説も良い。

  • 住宅街の四階建てフラットの最上階で、女性の絞殺死体が発見された。現場の状況から警察は外部犯の強盗と断定、容疑者を絞り込んでいく。一方、捜査に同行していた小説家ロジャー・シェリンガムは、フラットの住人の誰かによる巧妙な計画殺人と推理し、被害者の姪ステラを秘書に雇って調査に乗り出す!

    ロジャー・シェリンガム・シリーズの第四弾。1931年に発刊されたミステリの傑作が、2024年に新訳で復刊!帯にはぼくの大好きな阿津川辰海先生が「私は本書を通じて、バークリーの魅力に開眼したのです。」と文章を寄せていて、それをきっかけに手に取ることに。ぼくにとっての初のバークリー作品。ちなみに以前のシリーズを未読でも問題なく読める。

    フラットの最上階の一室で、一人暮らしの偏屈な高齢女性アデレード・バーネットがロザリオのネックレスで絞殺された。部屋は荒らされ、人々の間で噂されていたタンス預金がなくなっていた。窓からはここから逃げましたと言わんばかりのロープが垂らされている!警察はモーズビー首席警部を中心に強盗の線で捜査!しかし、ロジャーはそれが見せかけだと推理し、内部にいた住人の線で調査!ロジャーVSモーズビーの推理合戦のゴングが鳴る!

    物語はロジャー視点で進む。探偵自身の推理の進め方が丁寧に描かれていくのが新鮮。何度も要点をまとめてくれたりするのもありがたい。そんな中での見どころは、ロジャーの人間観察!激辛な人物批評と、自分のプライドの高さが面白い。

    「ロジャーの彼女に対する評価はようやく定まった。要するにチャーミングで無邪気。おつむが軽くて、いま以上に発達する見込みもまずない。」

    「ロジャーは笑みを漏らした。彼自身モーズビーをからかうのは好きだったが、モーズビーが悪党にからかわれているのをはたで見ているのはさらに楽しかった。」

    あまりにもあけすけな心理描写が滑稽で笑ってしまう。そういう自分は抜け目ないつもりが、事件関係者のステラに今回の事件ファイルをタイプさせてしまうといううっかりミス!人のこと言えないだろと(笑) 感情を表に出さない仕事第一のステラとの凸凹コンビもよかったし、事件解決に一貫して真摯に取り組みつつも、ロジャーとの駆け引きに長けているモーズビーもしたたかで好き。

    推理VS捜査の階段を最上階まで駆け上がった先に見えた光景とは?!クライマックスの構成は挑戦的でありながら、ぼくが今まで読んできたミステリの中でも出色の面白さ!読後感の良さが素晴らしい。ロジャーは名探偵か?!それとも迷探偵か?!ぜひこの推理劇の幕引きを見届けてほしい。


    p.220
    通説とは逆に、人は学校でほんとうに学んだことはけっして忘れないものだ。

  • 新訳の魅力もあってかシェリンガムの描写が最高w
    「なんだよ、もう」で最初から持って行かれた。この愛すべき?面白ダメ主人公が終始生き生き(個人的にはツナ〜って歌いそうと思ってる

    お話も登場人物と読者が同じ顔になってそうな終わり方、いいですね!

  •  名(迷)探偵ロジャー・シェリンガムの名推理が炸裂する本書。
     
     四階建てフラットの最上階で、小金を貯めていると噂のある女性が絞殺死体となって発見される。予期せぬ殺人と物盗りの犯行と考える警察に対し、現場の状況からフラットの住人による計画的な犯行と推理するシェリンガムは独自の調査を進める。果たして、その真相は……という内容。

     住人それぞれに対し、その動機やアリバイ、殺人を敢行する胆力の有無などを調査するプロセスが面白いし、住人の性格や人物像が良く描き分けられている。また、被害女性とは絶縁状態にあった姪が登場するのだが、美人だけれど心惹かれるもののない不思議な感情を抱いたシェリンガムは、彼女を秘書に採用する。決して打ち解けることのない彼女とシェリンガムのやり取りが、また笑えてしまう。

     驚きの結末が何とも言えないが、バークリーが本書でやろうとした探偵小説としての試みについては真田啓介氏の、本書の面白さについては阿津川辰海氏の解説においてそれぞれ詳しく説明されており、大変参考になった。

     自分がミステリーを読み始めたころは、アイルズ名義のものを除けば『毒入りチョコレート事件』くらいしか読むことはできなかった。ほぼ全作品を読むことができるようになった今こそ、バークリーの革新性が分かるようになってきた。
     

  • 2024/04/07読了

  • バーグリーに限らず、コメディって昔からダメなんだ。みんなが笑うところで、むしろしかめっ面になると言う。それでもクライマックスには大笑い。ヴァンダインと同時期にこれをやってれば、ミステリ史的に特筆される理由はよく分かる。

  • おもしれーー! バークリー ってやっぱ面白いわ。単純に出てくる人と会話、その描写が面白いなと思って読み進めていくうちに、主題の殺人事件の真理にちょっとずつ近づいていて、理解がスムーズな上に結末も通り一遍でない。なんて素晴らしいんだ。私の理想の推理小説かも。

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