兇悪の浜 (創元推理文庫 132-6)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488132064

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  • 水泳クラブのマネージャーのクラレンス・バセットから身辺警護の依頼を受けたリュー・アーチャーだったが、その場に現れたバセットを狙うジョージ・ウォールの話を聞き、失踪したジョージの妻ヘスター・キャンベルの捜索をすることとなる。ヘスターはすぐに見つかるがそこにはレーンス・レナードという評判の良くない男が一緒にいた。ヘスターにあと一歩というところで逃げられ、さらに捜索を続けるが、次に見つけたのは彼女の死体だった。

    ここにハリウッドのプロデューサー、暗黒街の顔役がからみ、さらに、二年前の女の殺人事件とも結びつく。

    二年前の殺人事件、ヘスター・キャンベル、暗黒街の顔役カール・スターン、三人ともクラレンス・バセットにより殺された。バセットの元恋人で現在はプロデューサーのサイモン・グラフの妻であるイソベルが精神的に不安定なのを利用し、イソベルに二年前に死んだ女を撃たせる。その時点では死んでいなかったが、イソベルは自分が殺したと思い込む。女はバセットが殺し、イソベルによって殺されたとして彼女の銃を証拠にサイモン・グラフを脅迫する。その銃をヘスター・キャンベルに盗まれたため彼女も殺し、さらにヘスターから銃を奪ったカール・スターンをも殺害した。

    捜査中の水泳クラブのアルバイトの大学生との会話や、イソベル・グラフとの会話など印象に残るものだった。今まで読んだアーチャー物の中では最もよかった。(動く標的、魔のプール、象牙色の嘲笑)

  • 1956年発表、リュー・アーチャーシリーズ第六作。次作に「運命」を控えた過渡期の作品で、書評などで取り上げられることもない作品だが、前進し続けたロス・マクドナルドが力を緩める筈はなく、徹底的に練り上げたプロットと、深味を増した人物描写、さらに洗練された文章を存分に堪能できる秀作である。

    本作では、色と欲に蝕まれた人間の業による愛憎が、恐喝から殺人へと転がり落ちていく様を、複雑な人間関係を解き明かしつつ描いていく。観察者兼質問者のアーチャーは、初見から関係者を切り刻み、関係性を把握する。

    特に事件の重要な鍵を握る女の表現は流石で、

      ……切りはなされた影のように彼女はその(夫の)あとを追った。

    などの鋭利な描写を惜しみなく表出する。あとに、この女は精神を病んでおり、犯罪者の偽装工作に利用されていることが判明する。物語は、人間不信と烈しい暴力に満ち、怒りと悲しみが次の悲劇へと転回させていく。



    「行為する人間というより質問者であり、他者の人生の意味がしだいに浮かびあがってくる意識そのもである」

    著者は、愛する主人公を上記のように表した。

    やがて、自我を忘れて透明な存在へ成り果てる男、リュー・アーチャー。終幕は退廃的で、また一歩、孤独な探偵を達観の境地へと導いていくかのようだ。

  • リュー・アーチャーのシリーズは初読。
    謎解き要素はあまり期待せず、ハードボイルドとしての雰囲気を味わう目的で読んだ。その点は堪能できた。
    しかし曖昧な言い方になるけれど、全体的にバランスのとれた良い点数の小説という感じで、飛びぬけてここが良いという読後感が持てなかった。そつがない仕事を見た、そんな印象。

  • ハードボイルドのプロトタイプの型にかっちり嵌め込んで作られた印象が強く、従って妙に何も残らなかった。文章は今までの一連のロス・マク作品の中では最も読みやすく、あれよあれよという間に事が進んでいった。事件の手掛かりが容易に手に入るのも気になったし、登場人物各々があまりに類型的過ぎた(トニー・トーレスは若干異なっていたが)。

    思うに、ハードボイルドは読みやすくてはいけない文学ではなかろうか。癖のある文書の裏側に潜む作者の主張を一字一字丹念に読み上げることで理解してこそ、探偵の生き様に味わいが増すのではなかろうか。

  • リュー・アーチャー・シリーズ

    海岸でガブリエル・トーレスが射殺されて2年後。水泳クラブの支配人バゼットの依頼でバゼットに付きまとうジョージ・ウォールの妻ヘスターを探すアーチャー。ガブリエルの父親トニーとの友情。トニーの息子レナードと駆け落ちしたヘスター。レナードの遺体発見。2年前のガブリエル殺害事件との関連。事件に介入した暗黒街のボス・カール・スターンの死。殺害されたヘスター。水泳クラブの会員サイモン・グラフと妻イソベルの秘密。イソベルとかつて婚約していたバゼット。バゼット以外を愛したことがないと告白するイソベル。トニーの復讐。

     2011年10月24日読了

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