カッコーの歌 (創元推理文庫 M-ハ 27-2)

  • 東京創元社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488151089

作品紹介・あらすじ

「あと七日」笑い声と共に言葉が聞こえる。 わたしは……わたしはトリス。池に落ちて記憶を失ったらしい。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、わたしが偽者だと言う。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」。わたしに何が起きているの? 大評判となった『嘘の木』の著者が放つ、サスペンスフルな傑作。英国幻想文学賞受賞、カーネギー賞最終候補作。

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジー小説は自由でいてほしいと思う。

    現実を忘れ、物語に没頭すれば、そこに広がるのは、私たちが知らない世界だ。

    この物語はある一家の物語であり、そこへ紛れ込まされたカッコーの少女の物語だ。

    読み終えるまで、私は彼女と共に冒険をした。
    とても楽しい旅だったと記しておきたい。

  • 彼女のワードセンスによる独特な映像表現は面白い。

    例えば
    あまり大きな音をたてないようにドアを閉めると、部屋の外の音がつぶされて細いリボンになっていった。
    アニメで描くような風の線をこう表現していた。

    歪んだ家族関係がファンタジーの中で絡み合う物語。
    けして善良でない、健全でない親子関係。
    善と悪の間でゆれるアイデンティティ、繋ぎ止めるものたち、新しい命。

    ガラスの顔のほうが冒険活劇としてのストーリーや色彩は豊かで好きだったけれど、
    こっちのほうが映像が想像しやすく、読みやすくはありました。

  • ・あらすじ
    嘘の木が面白かったので同作者の最新邦訳作を読んでみた。
    ファンタジー、サスペンスちょいホラー風味の冒険小説。

    1920年代の英国が舞台。主人公トリスが事故から目覚めると記憶の欠如、異常なまでの空腹、喋りだす人形…違和感と謎だらけ状況のなか自分の正体を探っていく。

    ・感想
    カッコー、妖精でピンとくる人はいるかも・
    前作よりファンタジー色強めだからか苦手な比喩表現が多くてちょい苦労したけど主人公の正体が判明してからは一気読みした。
    前作ともに抑圧された環境にいた主人公が事件を通じて本当の自分を開放させるという展開と曖昧な境界、善悪二元論で収まらないキレイに分けられるものなんてないというテーマを感じ取れる。
    「きっぱりと分ける」アイテムとしてハサミを使うアイデア面白かった。
    最後は結構斬新で予想外な終わり方で面白かった。

  • 大人のためのファンタジー、冷静でちょっと落ち着いたダイアナ・ウィン・ジョーンズみたいな感じ(笑)。
    本来取り替えっ子ネタは、取り替えっ子から自分を取り戻すというのがわりと鉄板だと思うんだけど、その取り替えっ子が主人公。「あと七日」…謎の囁きに怯えながら、自分を探し、見つけ、そして受け入れる。そんな王道テーマがしっかり冒険ストーリーと共に面白かった。英国幻想文学大賞も納得です。

  • 子供の頃の児童文学を思い出しながらも、大人になったからこそワクワクだけで終わらないファンタジー。

    事故から目覚めると記憶が曖昧で、何故か妹にひどく嫌われている。事故前のこと、家族のこと、自分のこと、少しずつ思い出すものの、妹は自分を「少しずつ違う」という。

    初めはどこかのミステリー小説で読んだことあるような設定で全体的に陰鬱だなぁという印象でしたが、起承転結の承から大きく物語が舵を切り、一気にファンタジー要素が広がるため全く未体験の感覚に。

    手に汗握るバトルというよりは、魔法の世界にワクワクするタイプのファンタジーです。
    しかしながら、翻訳書ならではの詩的な例えがなんとも印象的。解説でも言っていましたが、世の中には絶対的な悪というより、悪だということに気づいていない悪があるのだと、そしてそちらの方がタチの悪いこともあるのだと思いました。

  • フランシス・ハーディング、一気読み。一番面白かった!次点で「嘘の木」かな。
    本物でない偽トリスが主人公。自分が本物と思っていたのに、いきなりアイデンティティが壊された偽トリス(トリスタ)。記憶も自身の身体も借り物だと知ってもなお、それでも私は生きている!と、命ある限り本物のトリスを助けようとする。借り物であるがゆえに、いびつな家族関係を客観的に理解し、父親ピアスにはっきりと意見をいうところは良かった。
    最後は偽トリスが儚く消えて終わりかと思いきや、しぶとく生き続けるラストも意外で良かった。第一次世界大戦後、信仰への揺らぎ、女性の社会進出など、今までの価値観がすべて覆され、自分たちも変わりつつ、逞しく生きようとする少女たちを応援したい。

  • ハーディング3作目。
    ジブリでアニメ化されそうなファンタジー。『嘘の木』『影を呑んだ少女』に比べて、YA色が濃いように思える。


  • とても良いダークファンタジー
    まるで子供の時のような気分で読み込んでしまった

  • 序盤は妹に虐げられてばかりでなんだこの妹は!となり、トリスの視点からなる描写もところどころ何言ってるんだこいつ?となり読んでいてずっとこれが続くのか…とちょっとげんなりしたがなんてことはない。中盤から怒涛の展開で序盤の妹の態度と謎の描写の理由もわかり、後半はもうスピード全開。ジブリ映画を一本観たような感覚になれるし、映画化も全然いけるレベル。文庫版もあるのでフランシス・ハーディングを初めて読むならこれがオススメかも。

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