冬そして夜 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488153090

作品紹介・あらすじ

11月の深夜、警察署へ呼び出された私立探偵ビル・スミスは、甥のゲイリーと思わぬ再会を果たす。なぜニューヨークへ来たのか話さぬまま、再び姿を消した甥を捜すため、甥一家が住む町ワレンズタウンを訪れたビルと相棒のリディアは、アメリカン・フットボールの盛んな町が抱える歪みと醜聞に、否応なく直面するのだった。私立探偵小説シリーズ第8弾、MWA最優秀長編賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 久々のこのシリーズ。積読3年モノ。

    読み始めると一気に進んで、どうしてこれを今まで積読にしていたのか、と思いました。
    単純にミステリ、というには重い話。コロンバイン高校の事件の背景などが下敷きになっているようで、さもありなん。ただ、それはコロンバイン高校のみならずアメリカのいろんな地域で起こっていることらしい。
    この話が、事件を起こした張本人が捕まって痛快な幕切れ、というのではないのも、そういう現実があることを踏まえたものなんだろうと思う。ビルたちが奮闘したところでそれが簡単に打ち壊せるものじゃない現実。

    シリーズを読んだのが久々すぎたせいか、ビルとリディアの関係ってこんな感じだったっけ?と不思議に思う。
    もっとビルはリディアをからかって、リディアはそれに憤慨しつつやっぱりビルが気になって、だけど二人の距離はなかなか近づかないと思ってたんですが。
    まぁ前巻でリディア自身が一歩前に進んだし、今回の話はビルの奥深いところに踏み込む内容だったから、今までどおりには行かないんだろうけれど。

    さて、次の巻が出る前にもうひとつ積読の短編集を読もうと思います。

  • 〈ビル&リディア〉シリーズ。これまでもこのシリーズの存在は知っていたけれど、手に取ったことはなかった。新刊が発売になっていたことをきっかけに読んでみたけれどすごく面白い。探偵のコンビの造形や語り口、事件がどんどん奥へ奥へ広がっていく展開とよみどころがたくさん。既刊シリーズが絶版状態になっているのがとても残念。再販してくれないかな。

  •  シリーズ8冊目はビル・スミスの番。ドタバタなリディア・チンものと違って、だんだん哀愁をたたえたハードボイルドみに磨きがかかって期待大だ。本作は、長らく音信不通だった妹の息子すなわちスミスの甥ゲイリーがニューヨークにあらわれる。警察にやっかいになったところを請け出したものの、一途に思いつめた大事な仕事があるといって姿を消す。心配して探しに出るスミスが、妹の住む郊外のワレンズタウンを訪れたところ、そっちで高校フットボール選手がらみの事件に巻き込まれるという筋書き。突っ走る純粋な少年と酸いも甘いもかみ分けたアウトサイダー中年という鉄板の組み合わせは、これまであまたの名作が書かれてきた。福井晴敏しかり、ミステリならシカゴ・ブルースしかり。そこへビル・スミスだ。わくわくしないわけにはいかない。だがしかし、惜しいかなゲイリーとスミスのからみはほんの一部なのが残念。あまりに中途半端だ。本線は胸糞の悪くなるようなフットボール至上精神のしみついたワレンズタウンの事件のほうで、こっちはこっちで過去の悲劇との関連とかミステリ的要素は用意されているのだが、月並みといえば月並みだし、町ぐるみの隠ぺい体質などにはげんなり。ゲイリーとスミスを主軸にプロットを立ててほしかったな。

  • ビル・スミス&リディア・チン、2人の私立探偵を主人公としたバディ物のシリーズ8作目。昨年に読んだ「南の子供たち」が、年間ベスト5に入る素晴らしさだったので、2003年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作の今作を読む。途中までは、これが最優秀賞に値するのかと、疑問を持ちつつ読み進めたが、中盤、ケイト・マイナーから話を聞いた下り以降、物語が加速し始め、後半から終盤に至って、これは、最優秀賞に値すると、変わりました。
    ビルの甥ゲイリーの「正しいことをする」と言って、失踪した事件をきっかけとして、ビルとリディアの2人は、ニュージャージー州のワレンズタウンという町の暗部に踏み込んで行く事になりますが、それは、アメリカ全体の問題、暗部で有るとも言えます。
    提示されている謎・疑問は、全て解決もしくは、説明されています。個人的には、ビルの義弟スコットが、何故、それ程、ビルを憎んでいるのかという疑問に対する、リディアの解釈に痺れ、感心させられました。
    テーマの重さ、ラストのやるせなさから、後味の良い読後感には、なりえませんが、間違いなく傑作です。
    他の作品も乞う再販。☆4.9
     

  • ここまで訴えかけてくる作品も珍しい。シリーズベストかも。

  • 隠されていた過去、というほどおぞましい物ではなかったが、
    触れられてこなかったビルの子供時代に
    踏み込んでいく話。

    解説によると、
    アメリカ、コロラド州コロンバイン高校での
    銃乱射事件を参考にした作品だとか。
    アメリカの高校生活をかいま見れる点でも
    興味深かった。

    しかし、コロンバイン高校の事件でも問題となったシューティング・ゲームを
    日本製にしたのはなんでかなー。
    (実際にはアメリカ製)

    リディアとの関係が深まった気がする。

  • 意味アメリカの絶望の一番根源のあたりの話なんじゃないだろうか。初めて読んだ時のやるせなさはすごかった。打ちのめされた。

  • リディアとビルのシリーズ8作目。
    ビルの事件です。
    やっとビルの過去、というか家族の話が出ました。
    事の発端は甥っ子ゲイリーがニューヨークで補導され、
    夜中にビルは訳も分からず呼び出されたことからでした。
    その後自宅に引き取ったのもつかの間、
    すぐにゲイリーは逃げ出してしまいます。
    それまで妹一家とは疎遠だったので、
    現住所さえ定かではなく、
    ニューヨークに来た目的も皆目見当がつきません。
    プロに調べてもらうところから始めて、
    妹一家の住む郊外の町へ向かうことになります。
    でも今回は本当にフラストレーションが溜まりました。
    亡くなった娘のことがあってか、
    ビルは子供が、それも特にトラブルを抱えた子供が係わると、
    平常心ではいられないようです。
    ゲイリーがトラブルに巻き込まれているのではと、
    いてもたってもいられず情報収集を開始しますが、
    たった一人残った家族、妹のヘレンとは分かり合えず、
    ヘレンの夫スコットには過剰なまでに敵意を持たれ、
    更にはなにやら町自体もおかしな感じで、
    なかなか思うように進展しません。
    ビルも過去の記憶を刺激されてイライラしてますが、
    読んでるこちら側も同じ様にイライラしました。
    今回の事件はその郊外の町で起こります。
    ビルが事件の謎に徐々に迫る過程は今まで同様面白かったですが、
    アメリカの一町の現状を垣間見るようで、
    そのあたりが『アメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長編賞』
    に輝いた理由かなと思いました。

  • 小さなコミュニティに潜む歪んだ恐怖。
    実際に起きたコロンバイン高校の学生による銃乱射殺害事件を模している。現代の壊れたアメリカが手に取るように掴める内容だった。一気読み必至。

  • まいった。いささか冗長ではあるが、プロットはよく練られているし、アイルランド人男性&中国人女性探偵のコンビというキャラクター造型もいい。これまで読んだことがなかった不明を恥じて、過去の作品をすべて読み通してみたいね。

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