- Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488197544
感想・レビュー・書評
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2017/08/31
探偵と記述者という、ある種ホームズとワトソンを彷彿させるようなペアを総合して管理する探偵社。
ある日主人公のアンウィンは記述者から探偵へと昇進させられる。
自分に新しく充てがわれた部屋に行くとそこには先輩の死体が……
後半には夢の世界と催眠術が出てきて、純粋な推理小説ではないかなと感じた
レコードで過去起きたことを観察できるのは面白い詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜに、象?
(注:引用) -
タイトルといい帯の煽り文句といい、どうかしてるなぁ、いい意味で。
「カリガリ・サーカスって!」と、ページを捲る前から黒い笑いが込み上げてきた。
探偵が失踪したため、事務方だった主人公が否応なく格上げされ、
探偵必携のマニュアルを頼りに覚束ない足取りで捜査に乗り出す、
推理ものというより夢現をさまよう不条理な幻想小説なのだけど、
一応、殺人が起き、終盤で犯人と動機が明らかになるので、
ミステリの一種には違いない……かな?
主人公が巨大組織の末端構成員で、所属先の全体像も把握しきれていない点は
イスマイル・カダレの『夢宮殿』に似て、
夢遊病者たちと彼らを支配する「カリガリの旅回りサーカス」
=サーカスを隠れ蓑にした窃盗団の存在は、ちょっと野阿梓「眼狩都市」を連想させるなぁ、
なんて勝手に思ってしまうのは私だけですかそうですか。
やっぱり物語には wonder と wander が必要なのだと痛感。
これを「バカバカしい、でも面白い~!」って言ってくれる人と仲良くしたい(笑) -
※今作の感想はフワッフワしてます(謎)。いつにも増して意味不なこと書いてんな…どうした…な文章になっていると思われます(´・ω・`)ごめんなさい
んでも、雨が降る深夜にこの本を読めた私、勝ち組( ^ω^ )うほー←
“ファンタジック・ハードボイルド・ミステリー”という、ちょっと前例を思い出せない怪作です。村上春樹作品を連想した人もいるんじゃないかしら、この不思議な世界観は…。
でも、何でしょう、この物語世界から受けるイメージ、前中後で乖離してる印象がすごく強いです。「ファンタジー世界の中でハードボイルドに犯人を追いながら謎解きする」んじゃなくて、「ミステリーの後に何だか唐突に不思議な世界に迷い込んじゃいました」みたいな…。やっぱりうまく説明できないな、ごめんなさい(´・ω・`)
多分、タイトルから「本格物」と早合点した私の先入観に拠るものなんでしょうが、この唐突にスイッチを切り替えたような感覚は、ちょっぴり船酔いみたいな感じがありました、話の輪郭が見えてくるまでは…。説明文込みのミスディレクションを狙ったのかも知れませんが、ちょーっと落差ありすぎて戸惑った感じ。
とまれ、読んでる時の印象が、前半部と後半部で全く別の作品を読んでるような心地を味わえたというのは初体験でした( ^ω^ )←
我ながら、褒めたいのか批判したいのか分からんな…
とにかく、犯人を筋道立てて推理し指摘するという王道の推理小説ではありません(断言)。
『解決事件を記述するだけの役割を与えられていたワトソンが、ある日突然降って湧いた探偵役という役柄に不満を覚えながらも、失踪中のホームズに代わって過去の事件を再捜査しつつホームズを捜す』という、王道に飽いて変化球を楽しみたい玄人向け(?)です。とはいえ、ファンタジー要素は好き嫌いがかなり分かれそうなので、かなり読む人を選ぶ作品かもしれません。
探偵社で記録員として働くアンウィンに、ある日突然、探偵への昇格辞令が下った。何かの手違いだろうと上司の部屋を訪れた彼は、そこで上司の死体を発見してしまい、不在の探偵に代わり捜査を開始することに。
突然眠り込む助手、美しく奇妙な依頼人、そしてアンウィンがかつて記録した事件の関係者達。様々な思惑が交錯する中で、彼がたどり着いた『探偵術マニュアル』に秘められた驚愕の真実とは? -
自分を読書の世界に引き込んだのはコナン・ドイルのシャーロック・ホームズで、その奇想天外なホームズだけが見事に解き明かすことのできる謎に対する推理の面白さに子供ながらにはまったのである。今の子供たちがアニメのコナンにはまるのと同じ構図かも知れない。だからミステリーの面白さは言うまでもなく謎解きにあると言いたいのだけれど、もしミステリーの面白さが謎解きだけにあるのだとしたら、ミステリーは前例の無い謎解きのケースを競い合う、ちょっと想像しただけでも無味乾燥な世界に矮小化しかねないと気づく。だから(というのも変な言葉の接ぎ穂だけれど)ミステリーの面白さは謎解きの他の部分にもある筈だ。そんな「他」の部分の魅力が溢れているのがこの「探偵術マニュアル」である。
本の章立ては、話中で語られる「探偵術マニュアル」と同じ構成ということになっている。ただし物語の中で言及されるマニュアルには17章までしかないのに対して、この本は18章が存在する。そしてその理由が徐々に明らかとなる。もっともその章立ての意味合いは物語の連なりとはそれ程強く相関があるわけでも無く、例えば「果てしない物語」のような、入れ子の物語が展開するというわけでもない。夢という装置がタイムマシーンにおける時間のような役割を果たし、何十年も前に流行った映画のような時間の流れの無限後退の罠に陥るような(タイムマシーンに乗って未来へ行き酷い目に会って過去へ戻ってそれをリセットしようとすると丁度タイムマシーンに乗りこむ直前の自分たちの世界に戻ってしまい、時間に追いつかれて消滅してしまう前に再びタイムマシーンに乗りこんで、、、、という具合に物語がどんどん入れ子のマトリョーシカのように無限に一所を廻る)場面もあるのだけれど、そんな舞台装置の面白さだけが本書の魅力という訳でももちろんない。
主人公のチャーリーは、ひたすら真面目に報告書をまとめ上げる仕事に従事しその仕事を中心に世界を構築している。その世界から逸脱しそうな出来事を正すため仕方なくやったことのない大冒険に乗り出すのだが、そこで報告書は完全な物語ではあり得ないことに徐々に気づいていく。報告書を書くだけの生活に戻りたいがために事件を追いかけ解決しようとしていたのに、何時の間にかその事が彼自身を変えていくことになる。報告書は勧善懲悪の一つのメタファーだ。
世の中、勧善懲悪の物語ほど解り易くて右手の拳を簡単に宙に向かって突き上げることができるものもないけれど(愚か者は自分自身の真上に向かって銃を撃ち放つ。その行為の帰結が何であるかも想像しないで)、きっとそんな単純な物語はどこを探したってありはしない。政治や宗教や色々なイデオロギーを盲目的に信じている人なら兎も角、多様性の重要性がこれ程叫ばれている中で、一方的な価値観というのが現実(それを真実と呼ぶのは、また別の意味で躊躇われる)をきちんと(正しく、と言いそうになって、止める)捉えられはしない、というのが公平な見方だろう。その意味で本書は正しく勧善懲悪な物語ではない。そして個人的にはそのことが本書の一番の魅力だろうと思う。
登場人物たちは、誰もが何か一つは特別に得意なことを持っている。しかし、誰一人として人格的なバランスのとれた人物はいない。そのアンバランスと特別に得意なことのせいで、この物語はジム・キャリーの主演したアニメと実写が一体となった映画のような雰囲気がある。登場人物の誰もかれもが少々ステレオ・タイプ的な(ということは表面的で平べったい)のである。ところが、その一見すると薄っぺらな登場人物たちが、物語が進むにつれて急に二次元的存在からむくむくと膨れ上がって立体的な存在となってくる。ミステリー読みの癖から、こいつは悪い奴に違いない、などと思っていた奴らが悉く一癖も二癖もある裏表どころか清濁合わせて呑み込んだような人物に見えてくる。その広がりがこの本の面白さだと思うのである。 -
このタイトルに惹かれた方は要注意。
この小説はたぶんあなたの想像とは違う方向に飛んでいきます。
期待していた分裏切りが大きいので余計に好き嫌いがわかれてしまう小説だと思います。
ちなみに
『ハードボイルド寄りの探偵小説』
のつもりで私は読み始め、いい意味で裏切られました。
設定に馴染めれば探偵小説として充分楽しめると思います。
ハードボイルド風味もちゃんとあります。
読みながら頭に浮かんだのは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
でしたけど・・・ね。 -
再読だけれど、これはもう、すごく良いです。次から次へと、おもしろい展開がやってくる。ただの探偵小説とは違う。雨が降り続ける名もない都市が舞台の時点で、かなりぐっときます。たぶん、訳も良いのだと思う。最初から最後まで、好みでした。表紙の絵もきちんと内容と合っていて素敵。
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出だしは探偵小説を思わせるミステリアスな感じもあったが、ファンタジー?な展開に。7割ぐらいまで読んだけど興味続かず途中棄権。
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ファンタジーとミステリが融合した、摩訶不思議な探偵小説。
雨が降り続ける名前のない都市で〈探偵社〉に勤める几帳面な記録員が突然、失踪した敏腕探偵を探すことになる。殺人犯の濡れ衣を着せられながら、『探偵術マニュアル』を片手におぼつかない捜査をするうち、夢か現実かわからない世界に迷い込んでいく。
過去に起きた”十一月十二日を盗んだ男の事件”や”最古の殺人被害者の事件”など、題名だけでもケレン味たっぷりだが、最後はそれらのエピソードの真相も含めて、すべて謎が強引に解明されるところはなかなかのもの。
処女長編だから仕方ないのかもしれないが、人物がもう少し書けていると、もっと良かったかな。 -
推理+幻想小説。雨が降り続ける都市、<探偵社>、謎のサーカス団、優秀な探偵の失踪、そして最終章が失われた“探偵術マニュアル”。
序盤はちょっと読み進むのに時間がかかったけれど、サーカス団の魔術師の狙いが明らかになってからは一気に進んだ。巻き込まれ主人公のアンウィンの奮闘ぶりと、謎の多い3人の女性たちがそれぞれ魅力的だったのが良かった。
ミステリはどちらかと言えば苦手寄りで、普段あまり手を出さないのだけれど、予想以上にファンタジックな部分が大きかったので楽しく読めた。
個人的に黒原氏の訳の作品にハズレが無い。