何者 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488401153

感想・レビュー・書評

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  • 「何者」
     最終章の題は "Thou art the man" で、出典はサムエル記。
     「他でもない、あなたがその人だ」の意で、E.A.ポオ「お前が犯人だ」の原題でもある。
     陸軍少将邸で、その一人息子が盗賊に銃撃され、入院先で安楽椅子探偵となるが……。
     第六章タイトル「算術の問題です」を目にして、
     これはもしや――と、中井英夫『虚無への供物』を開いたら、
     第二章に「算術の問題」というパートがある!
     はて、ここは何の話をしている部分だったっけ?
     と、久々に目を走らせたら、
     奈々村久生のセリフが「またそんな〝何者〟だなんて」(講談社文庫旧版p.270)
     だったので笑ってしまった。
     ちなみに「算術の問題」とは、こちらの本家「何者」では、
     容疑者が二人いて一方が潔白だとしたら、残る一人が犯人に決まっている、という意味。
     で、余談になるけれど『虚無への供物』においては、
     火災現場の遺体が入居者全員から生存者を引いた数より1多い、
     つまり、死体が一つ余る、という話。
     松野一夫画伯の挿画がお茶目(笑)

    「暗黒星」
     東京・麻布の洋館、伊志田邸で起きた事件に立ち向かう明智小五郎だったが、
     覆面の侵入者に狙撃され、入院を余儀なくされる。
     しかし、名探偵はベッドに横たわって思索するうち、ある重大な「鍵」を見出す――
     といったところまで読んで、
     この作品が「何者」とカップリングされた理由を理解した(笑)
     タイトルの意味は明智のセリフによって「光のない星」「邪悪の星」と説明され、
     これが連続殺人の真犯人を指している。
     小林少年も、ちょっとだけ登場。

     いずれも乱歩作品にしては猟奇色のない真っ当な推理小説なので、
     若干物足りなくはあるが、これはこれで非常に面白い。

  • この作者らしからぬ(本人もそう言っている)本格もの。

  • 「何者」「暗黒星」2編を収録。
    「何者」は既読でした。途中まで気付かず読んでいたけど、井戸からの足跡あたりで、あ、読んだことあると気付きました。NHKの満島ひかりが明智小五郎役を演じていたドラマが記憶に新しい。(あのシリーズもっとやってほしい)明智小五郎が正体を明かすシーンが皮肉っぽくてとても好き。乱歩作品は既読のものでも読むたびに新鮮に面白い。
    「暗黒星」こちらは初読み。
    明智小五郎って初期?の頃は変装苦手っていう設定だったんだ…?と意外でした。明智小五郎といえば変装の名手というイメージだったので、この明智小五郎は偽物ではないのかと疑って読んだりしてました。
    スクリーン上に映し出された顔が焼け爛れていくというシーンや、かけてある洋服に混ざって覆面の犯人が潜んでいたという演出がいちいち不気味でとても良い。たまらん。創元推理文庫のこのシリーズは連載時の挿絵があるのがいいですね。
    ラストまで読むと、この2編がどういうコンセプトでチョイスされたのかが分かりました。

  • 無名時代、習作時代と言ってもいいかもしれないその頃の短編集。トリックも軽々しい、登場人物も粗削り。乱歩にはこの頃から巨人と言われるまでの間に大きなカタストロフィックな転機があったような気がしていている。

  • このシリーズは、雑誌連載時の挿絵が復刻してあり、昔の雰囲気で味わい深く読めるのがとてもよい。
    ==============================
    『何者』
    冒頭の文はどういう意図のものなのだろう。なぜ素直に「わたしは」で始まってはいけないのだろう。
    『暗黒星』
    子供のころ読んで、なんとなく内容は覚えていたものの、犯人は忘れていた。なんか女の人だったような気がしていたので、その記憶違いにも助けられて面白く読めた。

  • 本格推理小説とスリラー小説のがそれぞれ一遍ずつ収録。
    やはり「何者」が面白い。初期の江戸川乱歩の短編を飛んでから予備知識無しで読むことをお勧めしたい。

  • 何者/暗黒星の二編。
    暗黒星は明智のカッコ良さを堪能できる作品だと思う。
    序盤の不気味さも良い。

  • 暗黒星が面白い
    覆面が怖い

  • 同名の朝井リョウ作に釣られて、bookoffで手に入れた
    文庫本で江戸川乱歩を読むのは初めてだと思う。

    ストーリーの流れ等から、昔児童文庫やテレビで見た「怪人二十面相」を思い出した。が、
    そのうち、それを見たり読んだりしていた子供の当時が蘇った。

  • 犯人の想定していたトリックが決まりきらなかったがゆえに謎が深まり、かつそこが糸口となって一分の隙もなく解明される『何者』。策士策に溺れる、というやつですね。そして後半に収録された『暗黒星』。サービス精神旺盛な犯人が繰り出してくれる外連味と時代感たっぷりのネタの数々が、今となっては微笑ましい。最後はちょっとあっけなかったけど、それよりなにより挿絵が素敵。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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