空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (創元推理文庫 M き 3-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413019

作品紹介・あらすじ

女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。爽快な論理展開の妙と心暖まる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「円紫さんと私シリーズ」とゆう全6冊のリリースがあるようなんですが、先回何気に借りた本が「太宰治の辞書」でシリーズ最後の本だったようです。小学生の子供を持つ母親になってたのですが、1作目は17年まえの女子大2年生の「私」が主人公。「私」が日常で出会った謎を語り、円紫師匠が謎を解くとゆうミステリー。
    文学部の学生の「私」は映画演劇文学に落語と相当詳しく感心するのですが私にはt対等に話ができる知識が不足しているので共感できずに面白くない。
    日常の謎が解けたところでモヤモヤがスッキリするくらいで成程なあって思っても好きになれませんでした。繊細な表情を読み取って満足げなんでしょうが性に合わなくって途中で挫折しましたorz

  • 「おれもばかだが、おまえもばかだね。
     そうやって浮世のつらさを笑い飛ばす。それが落語なんです」
    これは大好きな落語家、立川談春さんの高座で聴いた言葉。

    幼い頃たまに家族で連れ立っていく親戚の家が、まあ退屈で。
    それで、年の離れたいとこの姉ちゃんの部屋にもぐり込んで、隠れて『少女フレンド』を読むのが唯一の楽しみ。
    いまとなっては時代を感じさせる、白地にオレンジのトランプのスート柄の壁紙。そしてたくさんのぬいぐるみやファンシーグッズの数々。くまさんやうさぎちゃんに埋もれながら『はいからさんが通る』や『生徒諸君!』を読み耽る幸せ。
    まあ、表面上は「しょうがなく読んでやってる」ポーズを取っていたけど。

    北村薫さんの連作短編ミステリ『空飛ぶ馬』を読み始めた時、そんな懐かしさや若干のこそばゆさが蘇ってきた。

    主人公の女子大生「私」(あっ、この印象的な女の子の表紙イラストは高野文子さんなんだ!)と探偵役の噺家春桜亭円紫師匠との洒落たやり取りと謎解きが面白い、いわゆる「日常の謎」系ミステリ。

    しかし「日常の謎」系、などと簡単に言ってしまったが、北村薫さんの『空飛ぶ馬』こそ日本におけるこのジャンルのエポックメイキングな存在なのだろう。
    「日常の謎」というと、人が死なないミステリ=ライトで軽いミステリを想像してしまいがちだが、殺人事件がないからといって明るく楽しいばかりでもない。いや、むしろ人が生きているからこその仄暗さというものもある。

    『織部の霊』で薄ら感じた蔵の雰囲気。
    『砂糖合戦』で象徴的に引用されるマクベス。
    のどかで能天気な日常にときおり影が差す。

    『胡桃の中の鳥』では、あっと言わされた。
    それにしても円紫師匠、いや北村薫先生のやさしさ。
    つらい浮世を噛みしめながらも、それをまるごと包み込むような温かさ。
    キラキラしたお仕着せのハッピーエンドではない、不安な夜道を照らす蕎麦屋の提灯のような丸く柔らかいともしび。

    そしてそんな蕎麦屋にやられたのが『赤頭巾』。秀逸。

    学食でカレーライスを食べていたら、ふっと左の下の歯が浮くような感じになった。
    こんな「まくら」から、歯医者の待合での世間話へ。
    蕎麦屋の明るい提灯に誘われ、ふらふらと屋台へと吸い込まれる。
    コミカルな『時そば』を注文して「いま何刻だい?」なんて言おうと思ったら、店の親爺がつるりと顔をなでて「おまえさんが見たのはこれかい?」とのっぺらぼうの顔をだす。
    背筋がひんやりする転調。
    人物造形が素晴らしく、ビジュアルイメージも鮮烈で切れ味鋭い「落ち」は見事。

    表題作『空飛ぶ馬』はラストに相応しい。美しい締めくくり。

    短編どれもが粒ぞろいの逸品だが、通して読んでいっそうふくらむ豊かな作品世界。
    架空の存在であるはずの円紫師匠の襲名の縁起や芸談がとても興味深く、話(噺)をもっと聴きたくなる。
    それから今作を含め五作ある、シリーズでの「私」の成長をもっと見守りたくなる(表紙イラストの変化も気になるところ)。

    いちばんの謎はやっぱり人間。
    織部嫌いも砂糖の大量摂取もあれが無くなるのも赤頭巾の出現も。
    そして空飛ぶ馬も。
    えっ、そんな理由でわざわざ? いや、そんな理由だからこそ。

    「おれもばかだが、おまえもばかだね。
    だから浮世は面白いし、人間ってぇのは愛おしいもんだね」

    • 円軌道の外さん

      お疲れ様です!
      いつも沢山のお気に入りポチやコメント感謝感激です(^O^)

      他の人にも書いてるけど
      原因不明の発熱が
      ずっと...

      お疲れ様です!
      いつも沢山のお気に入りポチやコメント感謝感激です(^O^)

      他の人にも書いてるけど
      原因不明の発熱が
      ずっと続いてて
      ちょっと体調崩してました(汗)

      お返事遅くなってすいません!


      てかてか、80年代の香り漂う
      いとこのお姉さんの部屋の描写に
      あまちゃんの春子の部屋を
      瞬時に思い出しましたよ(笑)

      しかも男の部屋でなく
      お姉ちゃんの部屋ってところに
      なんとも言えないリアリティがあるし(笑)

      小学生の低学年くらいまでの頃って
      性の違いを意識しつつも
      まだ女の子と変な下心なしで遊べた
      今から思えば貴重な時期でしたよね(笑)

      自分は施設で育ったので
      普通にいろんな歳の女の子と話したり
      ままごとやおはじきで遊んだり、
      kwosaさんと同じく
      少女漫画も分け隔てることなく
      普通に読んでたし、

      今の自分の雑多な趣味嗜好の方向性も
      その頃の環境が影響していることは
      間違いないと思います。


      しかしkwosaさんの
      その気にさせるレビューは
      いつ読んでも素晴らしい。

      粋で人情味に溢れた落語が聴きたくなったし、
      無性に屋台の蕎麦が食べたくなってきましたよ(笑)(>_<)
      (この小説は前々から気になってたのでリストに書いてたんやけど、この機会に探してみようかな)


      2013/06/26
    • kwosaさん
      まろんさん!

      >実際の私は、たぶん、「私」から文学的素養を9割引き、
      浮世離れ度を5割増し、ミーハー度を3倍くらいにした感じですが

      あは...
      まろんさん!

      >実際の私は、たぶん、「私」から文学的素養を9割引き、
      浮世離れ度を5割増し、ミーハー度を3倍くらいにした感じですが

      あはは。
      それはそれで充分魅力的でございます。

      週末は岐阜ですか。
      お気をつけて。天候に恵まれますように。
      2013/06/28
    • kwosaさん
      円軌道の外さん!

      体調を崩されているなかコメントをありがとうございます。
      あまりご無理なさいませんように。

      『あまちゃん』の春子さんの部...
      円軌道の外さん!

      体調を崩されているなかコメントをありがとうございます。
      あまりご無理なさいませんように。

      『あまちゃん』の春子さんの部屋もリアリティありますよね。
      まあ『あまちゃん』はリアリティの塊みたいなところはありますが(笑)

      『空飛ぶ馬』は、まろんさんに教えて頂きました。いいですよ。
      このシリーズはこれからも追いかけていこうと思っています。

      なんか最近、自分のなかでじわじわと少女漫画ブームが来ているのですが、実はあんまり読んだことないんですよね。
      でも円軌道の外さんとお話ししていると、俄然読みたくなってきました。

      そして僕も無性に蕎麦が食べたい!
      とりあえず『マルちゃん 正麺 醤油味』で我慢します。
      では、いざ台所へ!
      2013/06/28
  • 北村薫のデビュー作にして、女子大生の"私"・噺家"円紫"コンビのシリーズ第一作。「織部の霊」、「砂糖合戦」、「胡桃の中の鳥」、「赤頭巾」、「空飛ぶ馬」の5篇収録。

    文学&落語好きな女子大生の日常を描いた私小説であり、日常に起こる不思議の謎を解くミステリーでもある。謎解き役は、神のごとき洞察力を持つ円紫さん。

    ミステリーとしては、「赤頭巾」と「空飛ぶ馬」はなるほどと納得。でも、全体的にどうもしっくりこない。座りが悪いというか強引というか。

    女子大生の落ち着いた日常がとてもいい雰囲気で、それにまた落語ワールドがいい薬味になっている。久しぶりに落語を聴きたくなった。YouTubeで探してみるかな。

  • 日常系ミステリー短編集。
    主人公の女子大生と探偵役の落語家さんも自己主張せず控えめで、派手さは無いが奥ゆかしさや上品さを感じた。
    古典的名作文学や落語など知的で美しさをを感じる作品だった。
    心温まる作品が多い中、少し毒気のある「胡桃の中の鳥」、「赤頭巾」が短編集を引き締めるのに効果的だなと思った。

  • 不思議なタイトルと、高野文子先生のイラストに引かれ、初めて本書を手にしてから二十数年。何度目かの再読を終えた。読むたびに、ふぅと息をつきたくなるような充足感を覚える。

    主人公の《私》は、これを書いている私よりもやや上の世代。当時大学生だった私は、《私》にシンパシーを覚えながら読み、新刊が出るのを首を長くして待ち続けた。青春時代に共にあった作品なのだ。だからこそ後日、北村薫先生に本書にサインをして貰えたとき、飛び上がるように嬉しかった。

    円紫さんと私シリーズは、いわゆる日常の謎の嚆矢とされる。殺人事件や派手なアクションはない。むしろ、日常の中にこそ謎が満ちているという気づきは、人生を豊かなものにしてくれた。

    本シリーズの探偵役は、噺家の春桜亭円紫。今回、再読をするにあたり、作中に登場する落語の演目を聴きながら読むということをやってみた。初読時には考えられなかったことだが、ネットに動画が氾濫している昨今、そんなことも可能になった。これが意外に面白い。お時間があればお試しあれ。

    やはり今の北村先生の筆致よりはどこか「若い」感じがするデビュー作。本書の作品で私が一番印象に残っているのは「砂糖合戦」だ。舞台設定や小道具が今となっては古いので、あまりピンとこない読者もいそうだが、喫茶店好きの私はお店に入るたびにこの話を思い出していた。今でも何かの折にふと思い出す。日常の謎はホンワカしたものばかりではない。さっきまで笑っていた普通の人が突然、悪魔の表情を見せることがある。その冷たい悪意に、ぞっとさせられるものも少なくない。これはそういうお話だ。

    もちろん、そこは北村薫。最終話の「空飛ぶ馬」は、人間の温かい一面を見せて、幕を下ろす。本書は短編集だが、一冊を読み終えたときに、さらに大きな満足感が得られるようになっている。それは保証できる。

  • 女子大生の「私 」と落語家円紫の5編の日常生活ミステリー。
    各作品とも終盤近くになって登場する円紫によっていともあっさりと謎解きがされてしまう。
    これらの作品はミステリーとその謎解きがメインではなく女子大生「私」のごく普通の日常を描くことが主眼であるように感じられる。
    「胡桃の中の鳥」にいたっては女子大生の3人旅日記で終えるのではないかと思ったほどだった。
    主人公「私」は国文科の学生ということもあり、とても文学、文芸、芸術に詳しい。
    円紫さんとのその種の深い話もスムーズにこなす。
    では実際の大学生で自分の専攻にキチンと詳しい学生はどれほどいるだろう?
    大学に入る事で目的を果たしたつもりになって、その後に意欲をなくし、大学生という存在である事だけを拠り所に日々を漫然と面白おかしく過ごしてしまう人々が多いのではないだろうか。
    作品の感想とはかけ離れてしまったけれど、自分のモラトリアム学生時代を振り返り今更ながらの反省。

  • 円紫さんシリーズの第一作。未読だったので読んでみた。期待を裏切らないなぁ。

  • 女子大生と落語家が日常に潜む謎を解く。落語や文学、演劇など多岐にわたる話題が興味深い。初々しい女子大生の心理描写もいい。心が温かくなる。

  • 北村薫さんの文章は、どうしてこうも愉快でかわいらしくて、追いかけたくなるんだろう

    魅力的な物語を書く方はたくさんいても、
    こんなに魅力的な文章を書く方にはなかなか出会えません

    日常ミステリーとでも言うのでしょうか
    切ないシーンや人間の醜さが出るシーンも少しありましたが、
    それが尾を引かない、全体的に優しい雰囲気がすっぽり包んでくれている感じがして安心できます。

    シリーズもののようなので、他の作品も読みたいです☺︎

    • moboyokohamaさん
      女子大生の「私」がキチンと大学生として学んでいて知識がある事に感心して自分の学生時代を反省、後悔した作品です。
      女子大生の「私」がキチンと大学生として学んでいて知識がある事に感心して自分の学生時代を反省、後悔した作品です。
      2021/10/19
  • 北村さんの小説は最近のものから少し読んでいて、面白いなぁとハマりつつある。そんな折に目立つ帯に惹かれてデビュー作を遅まきながら読んだ。
    語り手が女子大生ということもあり、とても瑞々しい。太陽のように溌溂というよりは、五月の風のように青く若々しい感じ・・・日なたから月夜まで吹きわたるような。
    そんな印象とは裏腹に人の心の暗いところを覗き見る『砂糖合戦』や『赤頭巾』が鮮烈に感じられて良かった。

  • 恥ずかしながら北村薫さんを読むのは本作が初めて。
    ミステリーと言えば、殺人事件が起きて、謎に挑む刑事ないしは探偵が出てきて…というお話を想像しますが、全然そんなことはありません。
    日常生活の中で起こり得る(起こらないけど)不思議な出来事を描き、その謎を解いていく「日常ミステリー」なんです。
    主人公は女子大生、探偵役は春桜亭円紫さんです。
    女子大生は変に女女していなくて、そこが逆にとてもリアル(北村薫は当初は覆面作家で、本物の女子大生が書いているのだと勘違いした人が続出したそう。さもありなん)。
    それに何と言っても円紫さんです。
    個人的に落語が大好きですから、この設定は堪りません。
    本筋とは関係ないですが、円紫さんの高座や落語に関して薀蓄を傾ける場面が、私としては読みどころでした。
    たとえば、「鼠穴」という演目があります(私は談志のしか聴いたことがありません)。
    田舎から兄を頼って出て来た弟が、たった3文の銭を渡されて、そこから身を立てていく噺。
    3文を6文にし、6文を12文にして…と財産を増やしていくわけですが、円紫さんは「その間にだって食べるものは食べるだろう。別に金があるなら、三文から始める必要もない」と疑問を挟みます。
    いや、言われてみれば、なるほど、その通りです。
    落語ファンには、いろいろ気付かされることが多いのではないでしょうか。
    もちろん、謎が提示されて、それを快刀乱麻で解決し、大団円に至るというミステリーの醍醐味は十分に味わえます。
    パターンは概ね同じでも、1話ごとに趣が異なるのも魅力。
    たとえば、「赤頭巾」はシリアスで読後感も重いですが、表題作「空飛ぶ馬」は気持ちが晴れやかになる快作です。
    個人的には、「砂糖合戦」が気に入りました。
    冒頭にカッコ書きで「起こらないけど」などと書きましたが、これは十分に起こり得る日常ミステリー。
    卑小な人間の些細な悪意について書いていて、「あるある」といちいち得心しながら読みました。
    いろんな愉しみ方が出来る、実にお得なミステリーと言えましょう。

  • ほとんど純文学を読んでいるかのような心地だった。

    主人公の19歳の文学少女(敢えてそう呼ぼう)の、大人になりきる少し手前の繊細な感性が、淀みない文章で丁寧に表現されてゆく。
    日常のふとした出来事で、彼女の中にこれまで読んできた物語の一節が思い起こされ、重ねられていく。主人公が趣味で見に行く落語の物語も、日常の諸処でいろいろなことを教えてくれる。
    最も感動的だったのは、主人公が友達と夏の蔵王に旅行した際、深緑の山を見ながらまだ見ぬ錦秋の頃を想像し、かつて読んだ本の中にその風景を見いだし、疑似体験をする場面。
    物語は知らない風景だって見せてくれるのだ。
    読書はこうも人生を豊かにするのだ。
    主人公と同じくらいの時にこの本に出会いたかった。そうすれば若い頃もっと読書したのに!

    …で、矛盾するようだけど、私は純文学にちょっと苦手意識があって、この本も読むたびに居住まいを正さなければならない気分になって、引き込まれるように読むのとは違った関わり方をした本だった。
    でも、一度読んで終わりにするのは勿体無い。再読することで気づかなかった発見がある本だと思う。

    落語家の円紫さんが、類い稀なる洞察力で、日常に起こる謎な出来事を、状況を聞いただけで解決しちゃうライトミステリです、本来は。

  • 再読。落語、小説、推理。好きな要素がてんこ盛りの作品。久しぶりに読むと毒にやられてしまった。星新一のショートショートを毒を糖衣カプセルに包み込んだような作品と思ったが、こちらも負けず劣らず優しさの中に毒毒しさが包み隠されていた。

  • ドキドキするようなフレーズが随所に散りばめられている、さすがはデビュー作である。
    きっとこのナイーブな優しさ、しなやかな強さの雰囲気にころりとまいった乙女心というか。
    人気のあった訳がわかろうというもの。

    書き手「私」の名前が最後まで出てこないので、つまり作者「北村薫」さんも覆面の作家で性別も判然としないところで、ミステリーが秘密の情緒をいや増すにさせていたのだ。

    ところどころのドキドキするようなすっごいいい言葉はしかし、こんな私でも(乙女でない)夢中にさせてくれる。ということは普遍的ということ。

    その捉えて話さない魅力とはこのヒロインのボーイッシュな「私」にある。
    それはヒロイン「私」と仲良し3人のやりとりのなかに出てくる場面でわかる。

    本ばかり沢山読んで知識はあれどうぶな「私」がからかわれて、あかくなり口をとがらせたところを、
    『可愛いなー、膨れたその顔が可愛い。ボクが男ならほっとかないよ』なんて女友達にいわれてしまう。
    しかし、そのすぐ後で鏡をのぞいて少年のような顔をしげしげと…哀しくなる乙女チック。うまいよ。


    さて、あらすじは、女子大生である「私」の日常、通学生活でのささいな出来事の中にひそむ謎を、あれ?と思う。それをひょんなことで知り合った落語家の「円紫師匠」が謎解きをしてくれるのだ。

    「私」がぶつける相手「円紫師匠」の神通力がすごいのだ。人の心理の奥襞にはいりこめるのだろう。
    また、その師匠との「私」の掛け合いが何ともほのぼのとしていいのだ。

    ハッとさせられる真理もある。

    P194の「円紫師匠」が噺を誰に向かってするのかと聞かれて、聴いてくださっているお客さんだけじゃなくて「自分に向かってだ」と答えた。すなわち落語を一生の仕事にしようと決心した、大師匠の噺を聴いていた純な中学生の自分に向かって。

    今行っている行動は誰に向かってするのか、それは自分が相手、しかも若い時の、こうありたい自分というものに向かっている、絶対ごまかせない。うーんここはいい言葉だった。

    ここでこの質問をしたのが「私」の友人の「正ちゃん」だから「正ちゃん」のキャラクターもいいのだ。随所で光ってる。

    この「円紫師匠」シリーズ(「夜の蝉」など次々と出ている)は、なにげない日常に潜む謎ときと、「私」と「円紫師匠」の人生観を楽しむ事が出来るのではないか。

    なにげない心理の謎はアガサクリスティも書いているが、北村薫さんらしさが迸っているこれもいいなーと思う。ういういしい若さの輝きがここにはある。

    「織部の霊」
    「砂糖合戦」
    「胡桃の中の鳥」
    「赤頭巾」
    「空飛ぶと馬」

    の5編。私は「赤頭巾」一番良かった。

    書き忘れた。ここにもおびただしい本の山。それも魅力だ。

  • 日常に潜む謎を解く、円柴さんの観察眼と柔らかさ。決して柔らかいだけでない話の数々。
    絡み合うものを紐解きつつ、ただただ「在る」みたいなあり方の「私」と円柴さん。

    「胡桃の中の鳥」からの。「赤頭巾」にショックを受けている私。でも赤頭巾が最も色彩鮮やかに浮かぶ筆致だった。シュールな面白さも表現される「砂糖合戦」も良かった。

    逆転の発想や観察眼。日常に潜む謎を解く円紫さん。
    さまざまな色合いの短編集、ラストはほんとにホッとする読み心地。多くの人に愛されるシリーズだということに頷く読後である。

  • 女性作家の筆としか思えぬ、ヒロインの女子大生の細やかな心情表現で、噺家・春桜亭円紫(しゅんおうてい えんし)と日常の身近な謎を解き明かしていく、爽やかでミステリアスな5篇の短編小説です。表題作の『空飛ぶ馬』『胡桃の中の鳥』『赤頭巾』など、繊細な人の心の襞に触れ合える作品です。

  • 図書館で読んだおぼえがある。
    内容はまったくおぼえていない。
    いまひとつだった気がする。

  • 北村薫のデビュー作。「人が死なないミステリ」の代表格とも言える(思い込みに基づく断定)作品です。

    どろどろとしたサスペンスとは無縁の、暖かな作品群…ってあれ、この本ってこんなに黒かったんでしたっけ?(汗)
    久々に再読してみて、ちょっとだけビックリしました。多分、加納朋子とイメージ混同してます(苦笑)。円紫さんの軽妙さに惑わされた面もあるかもしれませんね。

    改めて今更思うのは、ああこのシリーズって「私」の成長記録なんだなあと。「赤頭巾」を読んだ時に、「山眠る」(「朝霧」所収)をしみじみと思い出しました。

    「父の心が本当にそれを~」のくだりでゾクッとしました。北村さんって、時々何食わぬ顔で物凄い球を放ってきますよね…。

  • 数年前に知り合いからもらって半分ほど読みかけになっていたものを読みました。

    日常の中にある謎解きなので心穏やかに読めるのがいいです。

    落語にいってみたいなと思うほど、円紫さんが素敵です。

  • 北村薫先生…大ファンになりました。
    すっっっごく読みやすい。ミステリ作家って凄いなあ。確かな描写力。日常のしょうもない出来事、人の心の些細な機微までしっかり伝わってくる。ミステリとしての中核の部分である謎も大仰でもなくあり得なくも無いのでスッと頭に入ってくる。何より北村薫先生の知識量!とんでもない読書家なんだろう。この一冊を読んだだけで次に読みたい本が増えていく。
    まずはシリーズ読破!!

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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