- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488425036
感想・レビュー・書評
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エリート一家4人惨殺事件が発生。被害者を知る関係者たちへインタビュー形式でリレーされていき、徐々に被害者夫婦の本性や過去の愚行など、明らかにされていくミステリー。
慟哭・プリズムに続き、貫井徳郎連読3連発。
そうだ。私はどうやらハマってしまったのだ。
物語は、インタビューされる側の語りで展開していくのだが、兄妹の会話らしい妹のみの語りが各インタビューの合間に挟まれている。これが謎めいているのだが、事件の重要な要素となっている。
そして読み終わってみて、改めて表題名に納得。
しかし人間とは比較と言う行為を通じて、優劣をつけたがる生き物だと、つくづく感じさせられた。
無論、かくいう私もそのクチだ。
そうして安心したり、不安になったりして、バランスをとりながら生きている。
個人個人が、心の中だけで折り合いをつけてやっていければ良いのだが、バランスが不安側へと傾いたとき、そうはいかないのも人間。
内で芽生える卑しさ、醜さ、汚さ、情けなさ。
外に向けて発する妬み、嫉み、羨み、恨み。
そう、正に本作品は人間の愚行の記録であり、読後感にしっくりきてしまった私も、この愚行録を完成させる要素の1人だったのかもしれない。
解説でも語られていた言葉がしっくりきたので最後に記しておく。
『他人を評価し他人を語ることは、自分を評価し自分を語ることに他ならない。』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私のダークな人格を呼び出した罪深い作品です。笑
いつか読み直して、レビューを書き直すその日まで。 -
一気読み。面白かった。
そして怖くなった。
こんな凄い人がなんで仲良くしてくれるんだろう?なんて経験があったし、ある。その人の真意は?周りはどう見られてる?
過信して馬鹿をみるのも、勘繰って疑うのも、自分は公平で正しいと思ってペラペラ語るのも、愚行。そもそも人であれば愚行は免れないんじゃないかな?
なんだかなぁ〜モヤモヤ。 -
2006年作品。著者の作品は「乱反射」に続いて2作目です。今作品の映像化は、かなり前に視聴しました。一家4人殺害事件の犯人探しが主題です。物語はルポライターが被害者に関係のある友人や隣人にインタビューをすると言う形で進んで行きます。ただしインタビューを受ける関係者の一人語りで進行します。登場人物のほぼ全てが愚かな行為行動言動を犯します。夫婦の意外な面が炙り出されます。物語の展開は「乱反射」に通じるものがあるように感じました。作者は人間の嫌な部分を表現することに長けています。読後感が、あまり良くないです。でも、引き込まれて読みました。
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貫井徳郎さんのヒット作、『慟哭』があまりにも面白かったため、別作品も購入しました。
冒頭では、ネグレクトで3歳児を死亡させた母親逮捕の新聞記事から始まります。
そして、田向一家(妻と夫、そして子供2人の計4人)が、突然家族丸ごと惨殺される事件に関するインタビューで物語は進みます。
本編では被害者夫妻の人柄について、近所の人から同級生、会社の同僚などからのインタビューによって明らかになっていきます。
また、幼少期から虐待を受けて育った謎の女性が、自らの思い出を語るパートが、モノローグと各章の終わりにセットになっています。
犯人は誰なのか、なぜ田向一家は殺されなければならなかったのか、そして度々登場する謎の女性の正体は一体何なのか。
田向夫妻のみならず、インタビューを受けた人から発せられた、人の奥に潜む闇が生々しく表現されている。まさにタイトル通りの内容となっています。
やはり最後には衝撃の展開が待ち受けていました。
「慟哭」とはまた違ったテイストのミステリー小説。
読んで後悔はしないと思います。 -
人それぞれがもつ僻みやコンプレックスが他人の暗部を語るときにチラ見えしてくる…そんな語りから再構成される人物像が本当に恐ろしい。
渚かなえの『白ゆき姫殺人事件』や黒澤明の『羅生門』のような人のナラティブに怖さを感じる作品が好きな人にはオススメ。
事件の真相よりも語りの深層に慄く読後感でした。 -
面白かった
これまた別な意味での「いやミス」な物語。
一家4人の惨殺事件について、関連する人たちへのインタビュー形式で、その事件と被害者を語っていく形式。
理想の家族に見えた一家はなぜ殺されてしまったのか?
犯人はだれなのか?
インタビューのエピソードから明らかになっていきます。
が、最後まで犯人が分からなかった。
とくに、各インタビューの後に語られる兄弟の会話(手紙?)がどう絡むのかが最後まで引っ張られました。
結局、そんな形なの?って拍子抜けしましたが。
んで、なにが「いやミス」というと、インタビュー形式で明らかになってくるこの夫婦!
さらにインタビューされる人たち。
出てくる人たち、語られる人たちみんな嫌い(笑)
本書は解説も含めて一つの物語と思います。
「他人を語るとは自分を語ることに他ならない」
「他人を語るというのは、諸刃の剣なのだ」
おすすめ -
深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家四人が惨殺された。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。物語は一家殺害事件の被害者についてのインタビュー形式で構成されている。隣人、友人らは何を語るのだろうか…。
インタビュー形式なのでとにかく読みやすい。
読んでいくうちにどんどんこの夫婦の事が嫌いなる。だけど、ふたりは愚かとは違う気がする。ならば、愚かなのは誰か。それはインタビューをされている人たち。田向夫婦を語りながら自分の愚かさをさらけ出している。その姿が滑稽でありこの小説の醍醐味だと思う。
5番目の彼女は愚かすぎる。それで本当にいいんだろうか。
映画を観ようと思って読んでみたけど、章の間に入る兄妹の会話がちょっと苦手分野の話で。俳優陣が好きな人ばかりなので観に行くかもしれない。 -
証言で浮かび上がる人間性。人間臭さが際立った作品でした。
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解説に「他人を語るとは自分を語ることに他ならない」とある。
一家惨殺事件をライターが、殺された家族の関係者にインタヴュー(取材)の形で話を聞き、その過程で、少しずつ事件の真相が浮き彫りになる形式は、自分にはかなり新鮮だった。複数の人が語る事件、あるいは殺された家族の人となりはさまざまであり、話もそれゆえに紆余曲折する。
やがて最後まで読めば、当然事件の真相は明らかになるわけだが、解説に書かれていたように、我々はそのインタヴューを通して、それぞれの語り手がどんな人物であるかを同時に知ることになるのだ。しかし、そのことを知ったのは、解説を読み、その指摘によって「ああ、そうなのか」と述懐した次第である。
事件の真相を知りたくて読み、作者の趣向に関心させられるも、人間の愚かさが語られていることに気づけなかったおのが読力の浅薄さにうなだれてしまった。同時に、深遠なテーマが横たわっていることを知ってしまった今、しばしこの気持ちを熟成させたうえで、もう一度この物語を読んでみたいという衝動にかられる。
また、各章末では、妹が兄に語るモノローグが挿入されている。その内容に、読む側の胸中はざわつくだろう。こうしたストーリーテラーぶりも、貫井徳郎の面目躍如である。
氏の小説は『慟哭』以来、ひさしぶりだが、またもやられてしまった。