スペース (創元推理文庫) (創元推理文庫 M か 3-4)

著者 :
  • 東京創元社
3.93
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488426040

感想・レビュー・書評

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  • 駒子ちゃんシリーズ第三弾

  • 前半80ページ程延々と近況報告を綴った手紙が続くのにはちょっと退屈したけれど、思いがけない真相に再び読み返してしまいました。
    前二作とはまた違った趣向の今作、第三者目線で見る駒子と瀬尾さんが新鮮。友人のお話がメインになるのでふたりの出番は少なめでさみしいですが今まで描かれなかった時間の姿が見られて良かった。
    そして駒子の友人愛ちゃんの別の人から見た一面も描かれるのですが、あとがきの「どちらが正しいという問題ではなく、『駒子は世界をそんなふうに見ることを選ぶ人である』ということなのでしょう」という言葉が印象的。駒子のように良いところに惹きつけられるように世界に飛び込んでいけたらいいなあ。

  • この本を手に取ってくださった皆様、どうもありがとうございます。本作品は、『ななつのこ』『魔法飛行』(共に創元推理文庫)に続くシリーズ第三作にあたります。私が『ななつのこ』でデビューしたのが一九九二年、その続編が出たのが翌九三年のことですから、「続きはまだ?」というありがたいお声を耳にしつつ、お待たせすること十年以上……もう誰一人待ってくださってなんかいないのでは、と怯えつつ、ようやく『スペース』を上梓することができました。スローテンポにも程があると、我ながら呆れてしまいます。
    そういう、なんとも間延びした間抜けなシリーズなので、この上お願いするのはあまりに厚かましくて気が引けるのですが、できましたら『スペース』単体ではなく、『ななつのこ』『魔法飛行』と順番に読んでいただけたらなあ……と。 もちろん、本作品だけでも完結したひとつのお話としてお読みいただくことはできます。ですから私のこのお願いは作者の単なるわがまま、もしくは「冷めないうちに食べてね」という、おかあさんの台詞のようなものとして、お心に留め置いていただけましたら幸いです。 (著者からのコメント『スペース』巻頭より)

    駒子さんシリーズ第3弾。
    うわあ、うれしい!
    と思ったんですが、第2弾の魔法飛行が2年半前、第1弾のななつのこは4年前に読んだので、さっぱり覚えていない。
    駒子さんや瀬尾さんのことは記憶にありますが、どんな出来事があったのか忘れちゃってました。

    読んでいて気になって仕方なかったいろんな矛盾に「うふふ、こんなコトに気づくなんて私って結構やるでしょ」なんていい気になっていたんですが、なんのこっちゃない、それは作者さんの計算された伏線でした。
    あー恥ずかしい(笑)。

    駒子さんシリーズは、最後の最後できれいにつながるところが醍醐味ですよね。
    あーすっきり!って感じ。
    ちょっと胸きゅんでした~。

  • びっくりしました、物語の真相に。そして、このお話の素敵さに。本作含めこの三冊のシリーズは、形式は少し違えどまるで一冊の本みたい。こころがぽっかぽか。また好きな作家さんが一人増えました。

  • ★3.5
    「スペース」「バックスペース」の二作品が入った駒子シリーズ第三弾。
    いつもの駒子シリーズとはひと味違って、少し遠い目線からの駒子達を見ることができ新鮮だった。
    何より「バックスペース」がすごく好き。
    この物語の主人公の始まりでもあり、またもう少し枠を広げて見たとき、きっと大きな始まりの物語であることに気付くはず。
    読み終わった後、悩みながら、遠回りしながら今の自分も“落ち着く場所”を探していると思うとちょっと明日が待ち遠しいような幸せな気持ちになる。
    穏やかで温かい気持ちにさせてくれる一冊です。

  • 表題作と、対になる一編「バック・スペース」が収録された一冊。
    「バック・スペース」は女の子にとって結構理想的というか、憧れるというか一つの理想的な恋愛の形だと思う。
    たった一人の大切な人と出会ったことで世界が変わり、全てうまく回り出す、こう書くといかにも陳腐だが、そうは思わせない暖かな読後感を得られるのは作者の確かな筆力の賜物。

  • 「駒子シリーズ」の三作目。
    「ななつのこ」はおもしろかったけど、なんだか作り物めいていて(まあ小説なんだけど)、読後感はいいものの。。って感じ。もちろんおもしろいんだけれども。
    「魔法飛行」は一作目のそういう部分を感じさせない、たくさんの伏線とその回収が清清しい作品。
    この「スペース」はうーんなんだろう、僕はすごい好みでした。今回は瀬尾さんあんまり活躍しなかったけど、細かい伏線をちゃんと読み飛ばさずに考えれるってのはすごい。
    ここがよかったってのが書けないのが推理小説のつらいところ。あえていうなら崇徳院。
    加納さんの話はとてもドラマチックで、感動的で、またいつか読み返したくなるだろうから、そしたら三冊まとめて買ってしまうんだろうなあ。

  • お話しは前後ふたつに構成されています。それぞれ別の主人公なのですが、ふたつの話は視点を変えて語られているだけで、深く関連しているのが読んでいると分かってきます。この辺りのからくりは加納朋子の得意とする部分でもあります。

    シリーズにもなっている入江駒子とおなじみの謎の男性、瀬尾さんが登場する手紙を巡ってのやりとりは、タイトルにある"スペース"すなわち空白の部分の謎解きです。
    語られないことや省略されていることなど空白に見える部分に何もないことはない、とは瀬尾さんの言葉。
    駒子とお友達の駒井さん、どちらも思わぬところで出逢った人により空白の部分が見えてきます。いいですねえ、結局のところ、こんな些細なことが人生の醍醐味なのでしょう。

  • 後追い読者であるワタクシは、幸か不幸か、
    『ななつのこ』および『魔法飛行』から
    『スペース』までの長い長い時間を感じずに、本書を手にしている。

    加納作品については、『モノレールねこ』、『ななつのこ』、
    『ななつのこものがたり』、『魔法飛行』、本書の順に読んでいる。

    新しいものから最初に戻り、行き過ぎて、戻って、ここに来た。

    他のミステリーもほとんど読んでいない。

    だから、彼女の作品が誰に似ているとか、立ち位置とか、
    『魔法飛行』から本書までの変遷とかそういうこともまったく知らない。

    私が書くものは、
    そんな背景知識がまるでない者のコメントになってしまう。

    きちんとした背景知識がある方の評は、ハードカバーに対して
    投稿されているのでご参照いただければと思う。

    『ななつのこ』と『魔法飛行』の間は、
    本の中の時間では半年、
    実際の2冊の出版時期の差は1年ぐらいなので、
    それほどの違いはないだろう。

    だが、『魔法飛行』と『スペース』の間は、
    本の中の時間は1週間、
    実際の2冊の出版時期の差は11年である。

    リアルタイムで読んでいれば、
    最初の2冊のときは同世代だったワタクシだが、
    ハードカバー出版時でもう30代になっている。

    本書の時間は1週間後、さらに、ちょっと戻ったりもするので、
    『ななつのこ』や『魔法飛行』と同じ時間とも言える。

    それを11年後の著者が書いて、
    止まっていた時間を再び動かしても、
    まるで違和感がないのは見事である。

    私は、個人的なこだわりのため、
    『魔法飛行』以降11年も待っていては
    具合が悪くなっていただろう。

    なんでよなんでよなんでよ・・・と
    コワイ顔でつぶやき続ける物の怪になっていたかもしれない?

    間髪入れずに読めて幸せだった。

    花は枯れずに外界の時間とは関係なく
    美しいまま冷凍保存されていて、
    解凍しても生きていたのだ。

    それにしても、本に流れる時間は実に不思議だ。

    こうやって、流行から大きく遅れて今頃会いにきた、
    私のような人間にも
    「今」という名の同じ時間を与えてくれるのだから。

    本書は、今までの謎掛けがあって謎解きがあってというリズムが
    振り子を揺らすように交互にやってくるあれとは違う。

    「スペース」と「バック・スペース」の2部構成だ。

    途中から、手紙手紙手紙手紙手紙・・・。

    枚数分書いてやろうと思ったけど、あぁ、疲れた。

    といった具合で、これがまた往復じゃなくて、
    往信ばっかりの手紙の山。

    これが、「スペース」の中央を占めるのだけど、
    これを全部読んで謎解きをした瀬尾さんを、私は尊敬する。

    私は正直、途中からブチ切れそうだった。

    そして、悟った。

    私は、「本読み」ではなくて、最初から「本語り」だったのだ。

    聞き上手じゃなくて、
    本を片手に自分を語りたいタイプだったのだと。

    おかげで、手紙の中から大事なヒントを読み解くという作業が
    途中からできなくなっていた。

    手紙は、過去2作の復習をさせるため? 

    なんでこんなに長いんだ?

    そのため、『モノレールねこ』の表題作や『ななつのこ』では、
    完璧ではないまでも、
    名前の秘密はなんとなく途中でわかったのだが、
    今回は、すこーんとやられてしまったクチである。

    似ているのは、双子だけではなかった、ということである。

    そして、「タイトル」、「章タイトル」、
    「名前」にも深い意味があり、
    語られないことには語られないなりの理由があったのだと、
    わかったことが嬉しかった。

    これは、途中投げ出さずに、
    最後まで読んだら、嬉しくなってしまう作品なのだと思った。

    4つの作品(長編の完結編を構想中らしいので最終的には5作?)は、
    実は、1つのスコアで書かれていた1つの曲で、各楽器(登場人物)は、
    それぞれに、メロディーやハーモニーを奏でながら、
    みんなつながっていたのだ。

    今、『スペース』までようやっと追いつき、
    『ななつのこ』読了のときの、
    リアルタイム読者じゃなくて悔しかったという思いが、
    1週間のうちに一気に4冊読めてよかったという思いに変わっている。

    『魔法飛行』を読了した瞬間の、
    どーしてこんなことするのぉという勝手な被害妄想が氷解している。

    職業倫理の大切さは絶対に譲らないけど、
    再読したらもう少し余裕を持って読める、もっと周りも見える、自信はある。

    1つのスコアで書かれている1つの楽曲の中にいる登場人物たちは、
    とても縁がある者たちだ。

    手紙でつながっているだけではなくて、
    現実世界でもきちんとつながっている。

    何度も不思議なところで邂逅するだけでいては、
    その縁は、ちょっとした偶然の、弱いものだったのかもしれない。

    それを「縁」として、結んでいくのは、本人達の行動である。

    手紙の世界から駒子達は踏み出した。

    勇気を出して。

    時代が変わり、新しい媒体や方法が出てきても、
    どんな媒体を使おうと、どんな方法を使おうと、
    人が求めるのは、コミュニケーションである。

    私たちは、どこまでも、
    わかりたくて、
    わかってほしくて、
    わかりあいたい生き物なのだと思った。

  • 収録内容は以下の通り。

    スペース
    バック•スペース
    光原百合: 解説

    イラストは菊池健、デザインは柳川貴代。

    「スペース」の内容に対して「バック•スペース」というタイトルの付け方が洒落ていて好きだと思った。また、推理小説ではありながら、宮沢賢治記念館や高村光太郎記念館の描写など、その他の要素が詳しく説明されているのが良かった。時々挟まる「女の子っていやだ」というセリフから、女子同士のやり取りが部分的に好きでない様子などが伺われて、これまでとは一風変わった捉え方が新鮮だった。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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