人魚と金魚鉢 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 107
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488441128

作品紹介・あらすじ

音楽学科の学生選抜コンサートの会場となるはずだった、大ホールのステージを泡だらけにした犯人は誰か? そしてその理由とは? 爽やかな余韻が残る表題作ほか、聴き屋だからこそ真相に気づけなかったエピソードを描く「恋の仮病」、美少年タレントの謎の行動の理由を探る「世迷い子と」、文芸サークル第三部〈ザ・フール〉のメンバーが熾烈なかくれんぼを繰り広げるシリーズ・キャラクター総登場の「愚者は春に隠れる」など全五編。生まれながらの聴き屋体質にして名探偵の柏木君と、彼を取り巻く愉快な面々が推理を繰り広げる連作第二弾!

感想・レビュー・書評

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  • 続編は出るのかなー出てほしいなあ。お願いします

  • 今まで何回も読み返しているお気に入りの本の一冊。5話の短編のお話し。特人魚と金魚鉢が好き。どのミステリーも最後には驚きホッとする。次は1弾を読み直したい。

  • 生まれながらの聴き屋体質にして名探偵の柏木と、彼を取り巻く愉快で風変わりなT大学芸術学部の面々が推理を繰り広げる連作集。

    「聴き屋」シリーズ第2弾。

    相談に乗るのではなく、ただ人の愚痴や悩みを聞くだけという聞き上手の柏木が、結果的に謎解きを行い悩みを解決するというシリーズの短編集です。
    ただ、聴き屋という属性がうまく発揮されていない話もあり、芸術系大学生が主人公の日常ミステリもの、という体裁の話になっています。

    いずれも人のささいな言葉や行動を深堀りし、豊かな想像力に根差した論理的思考により推理していく手法を取っています。
    その他人への深い洞察が明らかにする人の機微の細かさが見事で、静かな感動をおぼえます。
    また、読み手の固定概念をひっくり返される展開に毎回気持ちよくだまされました。

    印象に残ったのは、子役の少年の謎の行動の理由を探る「世迷い子と」というお話。
    有名子役の良介はロケの撮影中に突然何かに怯えて池に飛び込み、撮影中止となってしまう。
    良介は怯えた理由を言おうとせず、聴き屋の柏木がそれを探ることに。

    変わり者として孤立感を抱えた良介の心に寄り添い、丁寧に解きほぐしていく柏木の優しさが沁み入ります。
    自分の価値観に合わない、共感できないことに対して「あなたって変わってるよね」と決めつけすぐ排除しようとする人、どこにでもいますよね。
    私も何百回も同じ目に遭っているので、その孤独感、わかります・・・。
    生き辛さを覚える<変人>に対する柏木の眼差しがあたたかく、何だか嬉しくなりました。
    <変>というのも一つの個性なのだと多様な価値観を提示してくれ、物語の奥行きがぐっと広がったように思いました。

    次巻も楽しみ。早く出てほしい!

  • 前作よりザ・フールの活躍よりも主人公が話の中心に。毎回出てくるおばけのような先輩がご愛嬌。収録最終作には考えさせられた。個人的には、ショタ少年が出てくる話が好き。

  • 相変わらずの、さわやかな読後感。こういう小説、好きなんです。
    芸大を舞台にした連作短編集で、身の回りに起こるちょっとした事件に、聴き屋たる主人公が巻き込まれて、解決する。
    この小説の、なにがそんなに好きなんだろうと考えてみると、まずは、悪意のある人がほとんどでてこないということがあげられます。登場人物はみんな個性的で生き生き描かれていて、楽しそう。本作中「少しくらい変でもいいから、平凡でいるより個性的でいなさい」という言葉が掲げられていますが、登場人物すべてにそれがいきわたっているように感じられます。
    また、作品全体からも悪意のようなものが感じられないこと。ミステリーって、犯人の悪意とか、トリックをうまく作ってやったぜ的な作者のドヤ顔とかが目立ちやすいんですよね。もちろんこの本でも話の構成に工夫がなされているんですが別にこれみよがしでもなければ、ズルをするような仕掛けもない。そういったところで、作者のさわやかな姿勢を感じるんです。これと対照的なのは、東野圭吾はじめじめしてる、重松清はあざとくてドヤ顔したり顔、宮部みゆきは優等生のおしつけが垣間見える…そんなところでしょうか(もちろんこれは個人の主観的印象です)。
    そして、文章は短く端的で無駄がないこと。
    最後に、もっと読みたいなと引き続き思えたこと。同じ設定での2冊目を読んで、この感想をもったというところが重要なんです。単なる同じことの繰り返しなら「またこれか」と飽き飽きしてしまいますし、突拍子もなく別の展開ばかりをしてしまうともともとの良さが消えて「期待外れ」になってしまいますし、世界観に底が見えてきたら「これ以上は期待しても無駄そうだな」と思ってしまいますが、この作品についてはそういうことはありませんでした。
    余談ですが、『ダンジョン飯』は、モンスターを調理する意外性と作品全体のユーモアが楽しかったのが、話が進むにつれて、なんとも歯切れの悪いファンタジー要素ばかりが目立ってきて楽しくなくなってしまいましたし、『響』は、個性的な主人公を軸に据えた物語で最初こそおもしろかったのですが、要素を深堀することなく大仰な設定ばかり投入してきて、設定は新しくなってもパターンは同じという状況になって興味が失われました。そういうのと対比しても、2冊目を読んで、期待外れでもなく、引き続きこの先に期待できて、読んでよかったなあと思いました。
    この連休は風邪をひきこんで非常にもったいないことをしているんですが、この本を楽しく読めたのは、ひとつの肯定的な要素でした。(2018年5月5日読了)

  • 聴き屋体質の学生が日常の謎的な話を推理するお話。
    派手さはないが、ほんわかする話が良い。

  • 解説にも書かれてるけど、時間をかけてかっちりと構成してるって感じがある。読みやすく、読み応えがある。
    巻頭のおじいさんの話が良かったな。

  • 「青鬼の涙」★★
    「恋の仮病」★★
    「世迷い子と」★★
    「愚者は春に隠れる」★★★★
    「人魚と金魚鉢」★★

    日常の謎系は苦手なのだが、ユーモアミステリということで読んでみた。
    結果、大した解決がなく面白くなかった。

    そして何より文章が、なぜかとても読みにくい。
    楽しい話のはずなのに、読みにくいせいで、あまり楽しく感じないのが残念だった。
    先輩や川瀬のキャラは良いので、そういう意味では楽しいのだが・・・。

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