夜の国のクーパー【新装版】 (創元推理文庫 M い 4-2)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488464035

作品紹介・あらすじ

目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。胸にはトムと名乗る灰色の猫が座り、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と言うものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きて」猫は摩訶不思議な隣国との戦争と「クーパー」について語り始める――。新たなカバーで贈る、伊坂ミステリの到達点。

感想・レビュー・書評

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  • 異国の戦争と語り継がれる伝説、猫とネズミの対話。ファンタジーとしてのおもしろさにのめり込んでいたら、なんとこれは「世界の秘密」の前章に過ぎなかった。
    無条件に信じてしまうことの危うさを感じる。

  • 人語を操り解する猫というファンタジー設定。
    序盤は物語を咀嚼するのに時間がかかったが、中盤以降は尻上がりに面白くなった!
    現代の寓話を読んでいる様で楽しかった。

  • 伊坂幸太郎なので手に取って読み始めたものの最初は、ファンタジーな感じに慣れなくてなかなか読み進められなかったが猫のトムが[私]に話をする設定や鼠がトムにお願いをするところ、猫同士の会話が面白くて良かった。猫が好きなので完読できた感じはある。

  • ただの、妻に浮気された、情けない男が、目覚めると、見覚えのない土地の草むらで、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっている。胸の上には、灰色の猫が座っていて、

    「ぼくの住む国では、ばたばたといろんなことが起きた」

    と、摩訶不思議な物語を語り始めるから驚きが頭を突き抜けた。そう、これは「猫と戦争」そして「世界の秘密」についてのお話。

    「疑うのをやめて、信じてみるのも一つのやり方だ」

    デビュー作「オーデュボンの祈り」に似た世界観。「オーデュボンの祈り」がすきなぼくにはドストライク。

    舞台はとある国。長らく続いていた戦争に敗戦し、街から平穏な日常が奪われてしまう。

    いや、どうなっちゃうのよ。この先。ってかクーパーってなんなのよ。クーパーって。気になる展開。相も変わらず、テンポ良くて、読みやすい。徐々に明らかになっていく真相。伏線回収が秀逸。唸る。

    決して交わることのない国同士の争い。お互いに意識を変えなければ関係は平行線のまま。ほんのわずかでも相手に寄り添おうと向きを変えれば、二つの線はいずれ、どこかで交わるかもしれない。

    また、伊坂さんの作品から大事なことを学んだ気がする。摩訶不思議なお話ですが、きっと、みなさん楽しく読めると思います。興味があれぜひ、手に取ってみてくださいね。

  • 伊坂幸太郎の長編小説。最初は退屈だったが、中盤から物語が大きく動き、続きが気になり一気に読みきることができた。序盤は猫のトムが、異世界に迷い混んできた主人公に今までの状況を説明する、という形式で、場面転換が多く登場人物に肩入れしにくかったのが退屈に感じた原因だと思う。元ネタがある影響か、登場人物の名前がパッと読みづらいのもやや難点。よくも悪くも「伊坂幸太郎」らしくない一作。

  • 大好きな伊坂さんの書き下ろし長編。

    物語は主に、某国に暮らす猫のトムの目線で描かれています。
    他の方のレビューにもありますが、オーデュポンに似た、ファンタジーっぽい雰囲気があります。
    オーデュポンより、もっとずっとその色合いが濃く、新境地を拓いたのかな、とも思います。

    トムの暮らす国には、かつて、毎年、杉の木が変化して暴れるクーパーを倒すための兵を送り出す習慣がありました。
    クーパーと戦った兵士は透明になり、国が危険になったら助けに来てくれる、という言い伝えを残して。
    クーパーがいなくなった現在、戦争相手だった隣国・鉄の国に敗れ、鉄の国の兵士が統治のため、トムの暮らす国へやってきて、国民が慕う国王・冠人を殺害してしまいます。

    人々は驚き、怒ると同時に恐れます。

    そんな様子を欠伸しながら、横目に見ているトムをはじめとする猫たち。
    人間の戦争は他人事、世間話のネタ程度のものだったのですが、自分たち猫にも危害が加わるかも!と分かって…

    そのタイミングでトムと出会った人間の「わたし」。
    猫と会話ができることに驚きながらも、一通り話を聞いた「わたし」が行動に移ります。
    そして一気に結末へと、物語は動きだすのですが。

    伊坂さんの幾つかの作品に共通して見られる、「自分の目で見て、自分で考えろ」といったテーマが窺える仕上がり。
    全てを疑え、先入観にとらわれるな。
    このテーマは個人的に大好きで、これをテーマにした伊坂作品は大抵、☆4~5つなのですが、今回は期待外れ。

    「あるキング」以来、久しぶりに肩透かしを喰らいました。
    平坦で先が読め、特に唸るような箇所もなく、伊坂さんじゃなくてもよいのでは?という感じ。

    もちろん、所々に伊坂さんらしいウィットに富んだ台詞回しはあるのですが、全体的な満足度は低かったです。

    次回に期待。

  • 戦争ものかと思ったらやっぱり伊坂さん!
    占領しにきた人たちが、元クーパーの戦士だなんて。
    クーパーも架空の敵で国王が統治しやすいように作り上げたもので、結局杉の森に現れる普通の人?のことだったのかな。そしてミニチュアみたいな世界だったとは。初めからまた読むと違った見方ができそう。
    でも、戦争に負けた国のその後は何もかも奪われる、何をされても文句は言えない、というのが初見だとリアリティがあって怖くなった。伊坂さん自身北朝鮮のミサイル問題でこの本を書いているし、身近というか案外空想の世界と思っていたこともすぐそばにあるのかもしれないな。

  • 1年弱ぶりのレビューです!
    読了後、数ヶ月かけてちまちま読んだせいかこの世界から離れるのが寂しくなりました。
    クーパーはいるのかいないのか?…いなかったかぁ〜と正直少しショックでしたが、見えない支配が描かれていたのだと分かると、伊坂幸太郎らしいなとも思いました。
    現実と地続きのファンタジーで、無力だと思っていた自分が役に立てた、さて目の前の現実に向かおう、というラストが心地良くて良かったです。

  • 作者の憂いが伝わってくる…。

  • あらすじで猫が出てきたので、温かいお話かなと思い、手に取りました。
    実際は戦争の話とシンクしているので、ただ温かいお話だけではありませんでした。

    話は3シーンに分かれて展開されます。猫と妻に浮気された公務員の会話、猫が住む国で起きている話、猫が住む国の「クーパーの兵士」の話。

    話が代わる代わる展開され、タイムラインがどうなってるのか分からないまま進みますが、最後に全て回収、読みやすかったです。

    猫とネズミの交渉が、きっと人間界で起こっていることなんだろうなと想像ができました。進撃の巨人のように、自分たちが敵だったという話かなとも思いました。

    しかし、すでに戦争は集結し、鉄国の支配下にあるということ、攻めてきた鉄国の兵士が、実は自国の兵士(クーパーの兵士)であることは想像できませんでした。

    話していた公務員が彼らにとって巨人であることも想像できませんでした。

    鉄国の兵士の暴漢、兵士殺害の濡れ衣を着せられるなど、どうなってしまうのかとハラハラする場面がありましたが、最後は期待通り心温まる話でよかったです。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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