白の祝宴 (逸文紫式部日記) (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488482039

作品紹介・あらすじ

親王誕生の祝宴に影を落とす、盗賊と呪符の謎。紫式部の勘がますます冴える! 平安時代を舞台に、第13回鮎川哲也賞受賞作家が描きだす雅な王朝推理絵巻、待望の第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 最近の「探偵もの」は予想も付かない人物を探偵に据える。
    この本を手に取るまで、まさか紫式部が探偵役になるとは思ってもいなかった。
    そもそも私は、(非常にどうでもいい話ではあるが)紫式部という人物を好ましく思っていなかった。清少納言のほうが好きだし、和泉式部も紫式部よりは好きだ。なんとなく「一の字も書けない振りをするいけ好かない女」というイメージが先行してしまう。和歌でも、機転の利く清少納言や感情を揺り動かすような和泉式部、そして品があり優雅な赤染衛門のほうがいい。もちろんこの3人も登場する。

    式部の君(紫式部)は道長の娘彰子の女房の一人として宮仕えをすることになる。時期としては清少納言の仕えた定子は亡くなっており、彰子がまさに帝の子を出産するというころ。女房たちの様子を日記として纏め上げる役を式部の君は与えられる。源氏物語も世に出ており、文才を買われてのことだった。そんな中、都に盗賊が現れる。その盗賊は、式部の君のいる邸宅に忍び込んだ。しかし彰子の出産のため、人が多く出入りし宴が催されるなか誰にも見られずに姿を消したらしい。道長からの依頼もあり、この謎を追いかけるが…。

    平安貴族って面倒くさいんだな、と思えるような回りくどい話し方。さりげなく何気なく引き出した言葉から真実を突き止めていくというのはかなり新鮮だった。
    しかし時代設定もあるが、かなりグレーな落としどころになっている。ほんのりもやもや。

    赤染衛門はとても嫌な女性だったが、和泉式部や清少納言の描き方は好ましかった。意外と紫式部と仲良くしているので「あれ、紫式部日記と書いてること違う」と思ったら、そうかなるほど、というオチがあった。この発想は単純にすごい。女房たちそれぞれの日記を繋げて「紫式部日記」となっているのね…。なるほどでした。

    でもミステリーとしては個人的にはもうひとつかなあ。
    天上人の雅やかな世界は九州の雑な人間からしたらまどろっこしいや…。

  • 1巻が面白かったのですぐ次が読みたくなって購入。
    しかし読み終わって呆然でした…前回とは違ってなんと生々しく陰鬱な事件であることか。最後に謎解きされた後、何やら重いものが心に残りました。心の奥の闇を感じた。人の言動や事件の動機は一筋縄ではいかない。ゆかりの君、小仲、姫宮。そして人は多面性がある。道長も彰子中宮も式部も。いろんな面を選んで見せている。
    それでも阿手木と義清の夫婦関係がじっくり読めたことは嬉しかったし、義清の出世ぶりにも驚いた。無事に子どもが生まれてよかったね。

    実は前巻の終わり方が式部の死後だったので、続編は蛇足になるんじゃないだろうかと疑っていました。そんなことは全くなかったです。ごめんなさい。今度は上手く紫式部日記が題材になるとはすごいなと感嘆させられました。複数の女房が日記を書いた。そして子孫がそれを写していった。という描き方、なるほど。

  •  心に食い込んでくる源氏物語の力、というものを、思い知らされました。本を読むのは好きなほうですので共感できなくもないですが、残そうという強い気持ちを掻き立てられる作品なければ、こうして伝えられて来たかどうか。
     それが現代でも、スピンオフ作品と言える物語を生み出す、すごいと思います。なにせ千年ですからね。
     と言いつつ、単純にそれだけではないとも思います。忘れたくないのは、今、ここにいる人間に、前作に続けて「購入」させて「読ませる」ているのは、疑いなく作者の力なのだということ。それも意識していたいし、物語を作ってくれた存在には、感謝をしたいものです。それが千年前のひとでも、現代のひとでも。
     

  • このシリーズ分厚いけど、面白いからサクサク読めてしまう!

    阿手木と義清についに子供が出来た!良かった~。
    なかなか出来ないなとは少し気になっていたところでもあったからホッとしたわ。
    義清と途中ギクシャクしてしまったときはハラハラしたけど、無事解決して良かった。
    香りの原因の人物は予想したとおり、姫宮様だった。
    義清が普段接触して香りが移りそうな可能性が高いのは姫宮様だもんな。

    理由は分からないけど、なんとなく犯人は小仲かなぁと予想していたけれど、まさか本当に小仲だったとは。
    小仲が庇っていた相手が紫ことゆかりの君だとは分からなかったから、分かったときはおおお!となった。
    そして、そのゆかりの君が定子中宮の従姉妹だとはねぇ。
    それは中宮も庇うわ。
    中宮が庇ったのだろうなということは途中で薄々感づいたけど、ゆかりの君だったんだな。
    日記の執筆者から外したことだけを心苦しく思っていたのかと思ったけど、そこで繋がってたとはなぁ。

    紫式部が道長の子を産んでたとは驚いた。
    でも、早くに亡くなってしまったんだな…。もしも、すくすく成長して大きくなっていたら、今頃道長ともっと親密になってたのかな。
    二人の関係性はきっと今と同じ様なものではなかったのだろうなぁ。

  • 2015年7月25日購入。

  • 探偵・紫式部第二弾。こちらは紫式部日記のでき方をベースにした物語。

    物語の本筋の推理もおもしろいけど、
    紫式部の周辺を取り巻く部分もびっくり。
    綺麗に張られた伏線が見事に回収されててすっきりした。

    そしてやっぱり道長は憎らしい。

  • 源氏物語を書いた背景の1巻と続けて読みましたが、紫式部日記を背景にしたこちらも面白かったです。謎そのものの不思議も良いのですが、式部はもちろん端役まで登場人物の人柄や間変え方、人間関係が実に生き生きとしてます。上つ方々の悩み、下々の悩みが今の世界とそう変わりなく身近に思えます。3巻も楽しみです。

  • 一作目の存在を知らず、こちらを先に読んでしまいましたが、これはこれで完成している話でしたので問題なく楽しめました。でも人物関係などを楽しみたいのであれば、順番通りに読んでいたらよかったのかも。

  • 時は平安。人々の注目を集めるひとりの女性がいた──その名は紫式部。かの『源氏物語』の著者だ。実は彼女は都に潜む謎を鮮やかに解く名探偵でもあった。折しも、帝が寵愛する女性が待望の親王を出産、それを祝う白一色の華やかな宴のさなかに怪盗が忍びこみ、姿を消した。式部は執筆のかたわら怪盗の正体と行方に得意の推理をめぐらすが……。鮎川賞受賞作家による王朝推理絵巻。著者あとがき=森谷明子/解説=細谷正充

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著者プロフィール

1969年静岡県生まれ。日本画家・屏風作家。筑波大学大学院芸術研究科美術専攻日本画分野修了。渦巻きをモチーフにした屏風制作を行う傍ら、神社、寺院,協会への奉納絵画をライフワークとして続ける。 主な奉納・収蔵作品大徳寺聚光院伊東別院 墨筆による「千利休座像」軸一幅/駿河総社静岡浅間神社四曲一双屏風「神富士と山桜」。主な出版物 絵本『おかあさんはね、』(ポプラ社)/絵本『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)/絵本『サクラの絵本』(農文協)/詩画集『国褒めの歌巻一』(牧羊舎) 
自身の日本画制作に加え、寺社奉納絵画、絵本制作、コラム等の執筆、講演会等を行う。人と人、人と自然、人と宇宙が穏やかに調和する日本文化の特質を生かし、新しい世界に向けたパラダイムシフトを呼びかけている。静岡ユネスコ協会常任理事。

「2020年 『ジャポニスム ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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