ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F ス 2-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488541026

感想・レビュー・書評

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  • 地球最後の大陸、ゾティークを舞台にした連作短編集。未来の話なのに、人々の生活は古代化し、さらに古代の呪術が復権し魔術師が暗躍する世界。頽廃的雰囲気と世紀末感がたっぷりの、非常に好みの話ばかりでした。淡々としていながら荘厳さをうかがわせる文体もよいです。ゾティークの地図がついていると嬉しかったかも。サンティアゴ・カルーゾが描くような絵で、たくさん挿絵が載った豪華本が出たりしたら、喜んでまた買っちゃいます。

    余談だけどサンティアゴ・カルーゾは日本で画集がおそらくまだ出ていないのですが、去年発行の「テリブル・ダークネス」というカルト系画家紹介を兼ねた画集の表紙絵がカルーゾの絵だというのが先日偶然分かったので、ちらっと見てみたい。

  • 死にゆく赫く翳る太陽
    不毛の砂漠と廃墟と化した城
    降霊術に操られた屍体に傅かれた饗宴
    突如碧空を遮り暗黒の潮流へと翻弄する海
    茉莉花色の肌で幻惑する、異形の者へと変容する魔女

    作者のクラーク・アシュトン・スミスは詩人だそうで。
    そのせいか映像がありありと思い浮かぶような文章。
    そして、描かれているものは残酷だったりグロテスクだったりするのに不思議と美しい。

  •  遥か未来――。
     太陽は衰えて弱まり、物質文明、技術、宗教は衰退して、精神文明、魔術、新たなる宗教に取って代わられた。
     大陸は水没して、残った陸地は群島となり、その中で最も規模の大きい群島の地域はゾティークと呼ばれていた。
     本書は地球最後の大陸ゾティークを舞台に、魔術や降霊術が横行し、妖術師らが術を競う話が集められた連作短編集である。後にクトゥルフ神話に取り込まれることになる、食屍鬼の神が登場する『死体安置所の神』や彗星に乗って地球外からやって来た魔物が登場する『墓の落し子』など、17篇を収録。
     グロテスクながらも詩的な描写。予言や神々、運命に抗いながらも翻弄され、哀れな最期を遂げる登場人物たち。淡々と、しかし肝心な所は無駄なく克明に綴られる物語。ハイ・ファンタジーが好きな人ならきっと気にいるだろう。

  • クラーク・A・スミスの本が久々に出版!

    読み始めたら引き込まれ、一気に読んでしまいました。
    今までたくさんのラヴクラフトの著書やクトゥルー系書籍を翻訳している大瀧 啓裕さんの翻訳なので、世界観の描き方はいいですね。
    短編集なので、気楽に読めますし、SFファンにもお薦めです。

  • 地球最後の大陸、ゾティーク。
    降霊術士や占星術師、地獄の王や食屍鬼など幻想的で妖しい世界を存分に堪能できました。
    重厚で流麗な文体に想像力を刺激され、じっくりと浸る楽しさが味わえます。
    原文だときっともっと美しいのでしょうね。
    ストーリーが好きだったのは『死体安置所の神』。
    世界観が好きなのは『クセートゥラ』。
    洞窟を抜けた先が明るい庭園という設定が好きです。
    解説も興味深く、詩人であり小説も手掛け、絵も描けば彫刻にも手を伸ばすスミスの、表現をする喜びが窺えます。

  • 太陽の衰えた未来の大陸、ゾーディークを舞台とする連作短編ファンタジー。雰囲気は抜群だが「アイディアとプロットだけが偏重される現代」に読むと、雰囲気は良いんだけど……という感想が無いわけでもない。

  • 詩人でもあり、名文家としても知られるクラーク・アシュトン・
    スミスによる、未来の終末期の地球にある大陸ゾティークを舞台と
    した幻想短編集。

    ラブクラフトとの親交からクトゥルフ神話に関係して語られること
    の多いように思うC.A.スミスだが、この短編集を読む限りクトゥルフ
    神話とはまるで違う作品だと思う。おぼろげに恐怖が浮かび上がり
    それが描写できないからこそ恐ろしいラブクラフトの小説とは
    異なり、あらゆる場面においてその映像が目の前に浮かぶように
    感じるほどイメージ喚起力が強いのが実に印象的。スミスが描こう
    としたのは恐怖ではなく幻想であり、読後にまで心にどこか引っか
    かるようなクトゥルフ神話とは違い、読んでいる間だけ異世界に
    トリップさせてくれる上質な童話、そんな感じである。

    時期を空けずに他の短編集も読みたいと思っている。

  • 幻想に相応しい一冊。思い浮かぶ光景が美しく、良い訳だった。しかし、この世界観は凄い。実際にある神話と勘違いしそうです

  • 太陽が老い、死に瀕した地球最後の大陸ゾティーク。幻想怪奇の美しい悪夢。

  • 一日一編くらいをちまちまと読む。
    『イルーニュの巨人』の時にも感じた言葉の巧みさ、退廃した妖しい世界を綴る修飾語の数々は、もともと詩人として世に出た経歴から成っているんだな。この雰囲気がホントに素晴らしい。だいたいはバッドエンドな話なのだが、たまにコミカルな話や、これってある意味ハッピーエンド?みたいな話もあって面白い。

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著者プロフィール

1893年、米国カリフォルニア州に生まれる。若くしてその詩作が注目され、18歳で詩人ジョージ・スターリングと親交をはじめ、彼を介しアンブローズ・ビアスに評価される。1922年にH・P・ラヴクラフトの知己を得、彼の勧めで「ウィアード・テールズ」誌に寄稿。29年から同誌を中心に、独自の幻想世界を描いた物語を精力的に発表。代表作に「魔術師の帝国《1 ゾシーク篇》」「魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》」(アトリエサード)などがある。1961年歿。

「2020年 『魔術師の帝国《3 アヴェロワーニュ篇》』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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