ムーンチャイルド (創元推理文庫 552-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488552015

感想・レビュー・書評

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  • 世界的なダンサーであるラヴィニア・キングのロンドン公演に付き添ってきた友人のリーザは、その晩、偶然紹介されたシリル・グレイという男に一目で惹かれる。シリルは若き魔術師で、ある目的のためにリーザを必要としていた。リーザはやがて、シリルの属する魔術組織≪白き友愛団≫と、悪の魔術師の組織≪ブラック・ロッジ≫の戦いに巻き込まれ、シリルのために≪ムーン・チャイルド≫を誕生させる儀式に参加させられることになり…。

    なんともトンチキ極まりないオカルト小説。さすがアレイスター・クロウリー。登場人物がほぼ実在の人物をモデルにしているので、そのへんの事情に詳しければもっと楽しめるのかもしれない。知らなくてもまあ面白いといえば面白かったですが。

    若き魔術師シリル・グレイと、その師匠になるサイモン・イフという老人は、クロウリー自身。冒頭のみの登場だが世界的ダンサーのラヴィニア・キングのモデルはイサドラ・ダンカン、クロウリーと彼女は面識があり、彼女の付き添い女性メアリー(※リーザのモデル)とクロウリーが恋愛関係になったのも実話らしい。

    敵対組織≪ブラック・ロッジ≫の首領ダグラスのモデルは、クロウリー自身がかつて在籍していた秘密結社≪黄金の夜明け団≫で彼と仲違いしたマグレガー・マサース。その他の≪ブラック・ロッジ≫の所属メンバーにもことごとくモデルがいて、小説にかこつけてクロウリーは彼らの悪口を書き放題、あげく無惨に殺される役を割り振っている。

    詩人で画家の≪ブラック・ロッジ≫団員ゲイツのモデルはお馴染みクロウリーと不仲のイエイツ。『黒魔術の娘』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4488552021)でもイエイツをモデルにした人物を登場させて対立していたが、今回も悪口を書きまくり、魔術対決に負けてあっさり殺され、しかもその死体を甦らせる実験に使わせたりしていて、なんというか私情を交えまくり(笑)

    ちょっと気になったのは以下の記述↓
    「≪ブラック・ロッジ≫は支配下の団員に対して、定期的に残虐と悪意の業を実行させていた。ギイ・ド・モーパッサンはかつてないほど胸糞悪くなる小説を二本書いている。一本は馬を憎んた少年の話であり、もう一本は保護をまかされた盲目の親類を拷問する農夫たちの話である。大芸術家の神聖な手で綴られた悪行は、この場に再録するも忌まわしいほどである。(335頁)」

    クロウリーを嫌っていたサマセット・モームがクロウリーをモデルに『魔術師』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4480030085)を書いたのは知っていたけれど、モーパッサンがまるで怪しげな魔術秘密結社のメンバーだったかのような話は初耳、真相は謎。ちょっと検索してみたけどそんな話は出てこなかった。モーパッサンが沢山の怪奇小説を書いていることは事実ではありますが。

    閑話休題。前半は、シリルやサイモンの話す魔術についての専門的な話は難解ながら、白魔術組織と黒魔術組織の魔術対決的な展開で、敵の送り込んできた使い魔を撃退したり、かけられた呪いを返したり、特撮ヒーローもの的なワクワク感がちょっとありました。

    解説で翻訳者がクロウリーによるホムンクルス製造方法を掲載してくれているのだけれど、それを読むと、小説内でわかりにくかった≪ムーン・チャイルド≫計画の概要が少しは理解できるかも。シリル(クロウリー)は、ホムンクルスの作り方として、『ファウスト』がやったような方法のほかに、人間の胎内で普通に受精する方法を発見、胎児は3ヶ月までは器のみで魂が入っていないので、その3ヶ月のうちに、任意の魂を呼び寄せて胎児に宿らせることで特別なホムンクルスが誕生するらしい。リーザはシリルとの行為で妊娠したのち≪月の女神≫の召喚儀式をおこない、そうすることで誕生するのは特別なホムンクルス≪ムーン・チャイルド≫になるという理論。

    ≪白き友愛団≫メンバーは、妊娠したリーザを守るために、邪魔してくる≪ブラック・ロッジ≫と戦っているのだけど、後半思いがけないどんでん返しがあり拍子抜け。よくわからなかったけど、結局リーザは「おとり」=陽動作戦に使われただけで、本物のムーンチャイルドは姉妹キュベレーが別の場所で産んでいたということ?リーザはトルコ人アブドゥル・ベイと駆け落ち、子供を産み落とすも魔術師老婆に始末をまかせて自由に生きることを選ぶ。わりと最低。

    終盤は第一次世界大戦中に軍隊で諜報活動をするシリルの話になりなんだかよくわからなかった。解説読むとクロウリーは当時英国の諜報員になりたかったが、小説内と違い現実では門前払いを喰らい、しょんぼりして引きこもっているうちにこの小説を書いたらしい。なんとも。そんなわけで小説としての完成度は微妙ながら、背景にある実際の魔術師たちの歴史をふまえると、ある意味とても興味深い内容ではありました。

  • おおお、『ムーンチャイルド』復刊されてる!!?

  • 20世紀最大の魔術師アレイスター・クロウリーの異色の魔術師小説。クロウリーの魔術教義に則り、ムーンチャイルドを生み出す、という壮大な物語。随所に散りばめられた実在の人物(多くがクロウリーと敵対した人物)に対する風刺、というよりもほとんど悪口も面白い。結局のところムーンチャイルドが何を意味するのか、何のために生む出すのかは、最後までよくわからないけれど、それはそれとしてなかなか面白かった。クロウリーの著作では「法の書」「トートの書」も持っているがそっちはもっとわからないので…。

  • 難しい。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA83050666

  •  意味不明なものを想像していたのだが、読んでみると読者サービスとも身内のじゃれ合いとも取れる描写もあったので楽しめた。
     専門用語やら哲学的なパート・会話も意味はわからんが面白い、という感じで著者の多才さに舌を巻いた。
     旧<黄金の夜明け団>関係者をモデルにした登場人物とそれに対する悪口が続出するのと、著者が自身を主人公シリルとその老師のモデルに採用して善なる魔術師として描写するのが(世間への弁明のようで)笑えた。ことにシリルの剽軽さが自分の知る限りのクロウリーの印象と違うのも興味深かった。それでいてダグラスの死骸を見てシリルが涙したのには感動を覚えた。なんだかんだで慕ってたんだなぁ……。
     物語もさることながら偉大な魔術師である著者による数々の魔術の理論と実践が作中に描かれているのは流石と言うべきか。
     愛すべきオカルト冒険中二病小説。

  • 復刊であった子を拾ってきた
    図書館で前読んだだけだから懐かしいw

    【BGM:Philia/Versailles】http://youtu.be/SGJ4FQrLCzM?hd=1


    10/15追記。

    昨日は歴史と魔法書関連のデータを掘り出しお勉強w
    再度、本日挑戦し読了
    難しいですよねぇ
    面白いんだけど、読むのが大変。
    知識がないと読めない本って何(°Д°≡°Д°)
    いえ、この子は注釈あるから注釈確認しながらなら読めるんだけどね
    注釈確認しながらじゃ楽しめないじゃないか
    ところでこれ、ジャンルって何になるんですか?
    その他にしといたけど……

  • ちょっと読んでみたい…

  • ある意味面白かったっす。そもそもクロウリーってのが注目どころだし、キャラクターとしてどこかで見たような名前やら何やら出てくるし。見たような、と思わなくても注釈見てモデルが誰、とか書いてあると、あー、関係者にそんな名前の人がいたよな、とか思うし。<BR />
    ということで、ゴールデン・ドーン関連とかに興味のある人は、ある意味面白いのではないかな。ただ小説としては読みにくい部類です。注釈は多いし(時事ネタもふんだんに取り入れているためか?)、文章も固いので。<BR />
    ストーリーは普通かなあ。ああ、でも最後のどんでん返しはなかなかでした。可哀相なキャラクターはいるけどね…。
    <BR />[2005/03/25読了]

  • 20世紀最大の魔術師アレイスター・クロウリーの作品。クロウリー自身の魔術的知識がふんだんに盛り込まれている。よって難解な作品に。

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著者プロフィール

1875年~1947年。イギリスの神秘主義者、魔術師。 ケンブリッジ大学在学中に「黄金の夜明け団」に入団。その後世界各国遍歴の旅に出、神秘主義結社を開設して数多くのオカルティズム文献を著述した。

「2022年 『法の書 〔増補新訳〕 【普及版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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