街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488555047

作品紹介・あらすじ

江戸川乱歩の造語である〈奇妙な味〉は、ミステリにもSFにも怪奇小説にも分類不能の、異様な読後感を残す小説を指す。本書には、翻訳アンソロジーの名手が精選した作品──異色作家の埋もれた名作、スタインベックら大家によるユーモア譚、SF界の鬼才の本邦初訳作など18篇を収めた。ひねりの利いたアイデアストーリーから一風変わった幻想譚まで、多彩な味をご賞味あれ。編者あとがき=中村融

感想・レビュー・書評

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  • 確かに奇妙な味ばかり。主に1950年代あたりの作品多め。『肥満翼賛クラブ』『アルフレッドの箱舟』『赤い心臓と青い薔薇』『試金石』『M街七番地の出来事』『旅の途中で』が印象に残った。

  • 昨年読んだ「奇妙な味」アンソロジー『夜の夢見の川』
    https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4488555055
    が、面白かったので、
    順序が逆になったが、先に出ていたこの本も購入、読了。
    英米の何だかちょっと変な短編集、全18編。
    但し、カバー画の雰囲気に釣られて手を出すと
    期待外れに終わる可能性大――と、申し上げておきましょう。
    あんな雰囲気の兄さんは登場しない(笑)。
    以下、特に印象的な作品について。

    ■ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」
     原題は「Gladys's Gregory」=「グラディスのグレゴリー」。
     ある町の伝統的なイベントに参加する夫婦たちの
     涙ぐましい奮闘に、黒い笑いが込み上げる。
     詳述を憚られるお下劣奇談。
     これを読んで眉をひそめる読者もいれば
     ケラケラ笑う読者もいると思うが、
     私は後者の皆さんの仲間(笑)。
     ともあれ、素晴らしい超・意訳邦題に拍手!

    ■ロナルド・ダンカン「姉の夫」
     原題は「consanguinity」
     =「血族」あるいは「密接な結び付き」。
     第二次世界大戦中のイギリス。
     休暇を得て帰省する列車で
     同じコンパートメントに座った大尉と少佐。
     大尉は少佐を自宅に招き、姉に引き合わせる。
     弟のサポートにのみ喜びを見出してきた姉は
     初めて外部から訪れた男性に好感を抱き、
     少佐と結婚。
     しかし、弟も同行する新婚旅行の途中で……。
     英国怪奇小説の伝統に則った朦朧法による怪異譚。

    ■ケイト・ウィルヘルム「遭遇」
     妻と口論して先にスキー場から引き揚げた
     保険外交員ランドルフ・クレインは、
     大雪のためバスターミナルで足止めを食う。
     待合室で寒さに震えながら、
     たまたま居合わせた女性と共に
     暖房器具を調節しようと試みたが……。
     主人公の暗黒面が徐々に暴かれていく展開だが、
     ラストの解釈が難しい。
     一理ありげな意見をネット上で発見したが、
     それは編者の言う「SF的な解釈」には
     相当しそうにないので、悩みは深まる。
     しかし、そこが何とも面白い。

    ■ネルスン・ボンド「街角の書店」
     煮詰まった小説家が、
     心臓発作で亡くなった詩人が訪れていた街角の書店へ
     向かうと、
     そこには様々な有名作家の未発表作と共に、
     詩人が刊行するつもりで果たせなかった詩集が並び、
     しかも……。
     オチはありきたりだが、
     創作に携わる者の苦悩と願望と惑乱が、
     切なく、悲しい。

  • す、す、スタインベックー!!!
    こんな話も書くんですねー?!
    ちょっと笑えるものからぞっとするものまで、どれも面白かった。
    でもやっぱり、スタインベックが?!というギャップも含め、『M街七番地の出来事』がお気に入り。

  • 丹地陽子さんの絵に惹かれて手に取った
    邦訳ミステリ・ホラー・SF等短編集。
    ショートショートと云っても良い位の物も。
    どれも小粒ながら面白い!
    よくこれだけ揃えたなあと脱帽ものです。
    『ディケンズを愛した男』『お告げ』『姉の夫』あたりが
    好みでした。

  • ☆4.0

    とても素敵なアンソロジー。しっかり考えて掴みたい作品も、"考えるな、感じろ!"な作品もあって大変満足な18編。それぞれに軽く一言を。

    ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」
    すごい品評会だ。グラディスのグレゴリーが如何にコンテストで優勝を掻っ攫うに至ったかがあまりにストイック!そしてラストにざわざわ。

    イーヴリン・ウォー「ディケンズを愛した男」
    怖い。怖すぎる。一番現実的怖さかも。愛し過ぎるが故なのか。

    シャーリイ・ジャクスン「お告げ」
    私の中のシャーリイ・ジャクスンのイメージになかった感じのキュートなコメディ。特におばあちゃんが可愛い。

    ジャック・ヴァンス「アルフレッドの方舟」
    落語みたいな話だった気がする。滑稽さが卓出。神様が"人間ってほんと馬鹿ね"って言ってそう。

    ハーヴィー・ジェイコブズ「おもちゃ」
    穏やかノスタルジックになると思いきや。最後の一言を告げたときのハリーの気持ちを思うとちょっと張り裂けそう。

    ミルドレット・クリンガーマン「赤い心臓と青い薔薇」
    ゾッとした。とりあえず意味不明な執着って本当に怖い。恐怖と嫌悪のミックスしんどそう。

    ロナルド・ダンカン「姉の夫」
    やっぱりそうなの?そういうことなの?人は自分の望むもの(自覚するしないに関わらず)しか見ないのかもしれない。

    ケイト・ウィルヘルム「遭遇」これは解釈どうしたらいいの。教えて、識者!何度も読み返してる。是が非でも解き明かしたいと思わせる引力を持つ一編。

    カート・クラーク「ナックルズ」
    サンタクロースの対になる存在って今まで見たことない発想だった。新たなクリスマスホラーとして巷で活躍してほしい。

    テリー・カー「試金石」
    一体何を見極められていたんでしょうね。作品に呑み込まれてしまいそうでなんだか少しゾッとした。

    チャド・オリヴァー「お隣の男の子」
    最後、ジミーくんが一体何に青い瞳を期待で輝かせていたのか考えるとえらい怖いですね。

    フレドリック・ブラウン「古屋敷」
    どんなことを考えていたらこんな話を書けるようになるのかしらと思う。自分の核を守るものすべてが剥がれ落ちた瞬間ってこうなるのね。

    ジョン・スタインベック「M街七番地の出来事」
    末っ子ジョン、めちゃくちゃ怖かったろうな。これ近所にどんな噂として話が漏れ出してたのかすごく気になる。

    ロジャー・ゼラズニイ「ボルジアの手」
    あれですね?これはアイツですね?本作はとても短いながら、イメージが記憶に鮮烈に残る強めの一編。

    フリッツ・ライバー「アダムズ氏の邪悪の園」
    徹頭徹尾明らかに気持ち悪い感じでとても良いですね。才能のあるお金持ちの変態なんだろうなぁ。

    ハリー・ハリスン「大瀑布」
    なんか少し神話っぽさを感じる。外側の世界。滝の上の世界。でも彼らにとっても実は未知の世界。

    ブリット・シュヴァイツァー「旅の途中で」
    これはすごい。無条件で好き!って気持ちになった。手に汗握る大冒険ですよ、間違いなくこれは。

    ネルスン・ボンド「街角の書店」
    この作品が最後置かれているのがすごく琴線に触れる。そうなの。きっとこんな叫びが数多世界には漂っているの。真理を見た。

  • 素直に面白かった。18編とけっこうな数が収録されているが、まさに「奇妙な味」。どれもよかったが、特に印象に残ったのが『肥満翼賛クラブ』『おもちゃ』『赤い心臓と青い薔薇』『遭遇』『ナックルズ』『試金石』『M街七番地の出来事』『ボルジアの手』『旅の途中で』『街角の書店』……あらら、特にと言いながらほとんどになってしまった(笑)。

    <収録>
    『肥満翼賛クラブ』ジョン・アンソニー・ウェスト、『ディケンズを愛した男』イーヴリン・ウォー、『お告げ』シャーリイ・ジャクスン、『アルフレッドの方舟』ジャック・ヴァンス、『おもちゃ』ハーヴィー・ジェイコブズ、『赤い心臓と青い薔薇』ミルドレッド・クリンガーマン、『姉の夫』ロナルド・ダンカン、『遭遇』ケイト・ウィルヘルム、『ナックルズ』カート・クラーク、『試金石』テリー・カー、『お隣の男の子』チャド・オリヴァー、『古屋敷』フレドリック・ブラウン、『M街七番地の出来事』ジョン・スタインベック、『ボルジアの手』ロジャー・ゼラズニイ、『アダムズ氏の邪悪の園』フリッツ・ライバー、『大瀑布』ハリー・ハリスン、『旅の途中で』ブリット・シュヴァイツァー、『街角の書店』ネルスン・ボンド

  • 新刊情報で気になって買ってみた。

    江戸川乱歩が「奇妙な味」と称した、SFにもミステリーにも分類不可能な読後感を残す短篇小説ばかり18篇を集めたアンソロジー。すっきりと今ふうにキャッチーな装丁だけれど、収録作品のラインナップを見てみると、なかなか一筋縄ではいかないトラップ感をたたえている。

    披露される「味」はさまざま。実際の味覚に訴えかける作品だったり、言葉にならない恐怖感、嫌な感じ、あるいは意外にもキレのよい読後感だったりと、「味」は揃っているようで揃っていなくて、やっぱり「奇妙な味」としか言いようがない。

    個人的には、前半の9篇くらいで「奇妙な味」のエッセンスを十分に味わえると思う。嫌な味方面では、ジョン・アンソニー・ウェスト『肥満翼賛クラブ』の生脂身の味が舌にじわっとくる感触に、ミルドレッド・クリンガーマン『赤い心臓と青い薔薇』の、言葉にならない空恐ろしさがなかなか強烈。イーヴリン・ウォー『ディケンズを愛した男』は安定の底意地の悪さ(賛辞です)。からりとキュートでユーモラスな味方面は、シャーリィ・ジャクスン『お告げ』。それに、ジャック・ヴァンス『アルフレッドの方舟』は超ダサい『蜘蛛の糸』として愉しい。

    後半に入ると、結末の切り返しのパターンなど、自分が学習しつつあるのがわかるので、味に耐性ができてくるような気がする。でもそれはそれで、ひとつひとつの巧みさをじっくり読むようになってくるので、結果的には「奇妙な味」が増幅する仕掛けになっている。ブリット・シュヴァイツァー『旅の途中で』がプロフィールのあいまいな作品ということもあいまって「奇妙な味」度が高く、最後のジョークっぽいキレもいい。表題作のネルスン・ボンド『街角の書店』は途中で展開が読めちゃうかもしれないけど、すぱっと収まりのよいラスト。

    予想以上の高密度な「奇妙な味」の競演に、正直な話、読んでいる間じゅう(特に寝入りばなに読むと)、次の日の目覚めが非常に悪かった。そんな精神衛生上よろしくない短篇小説たちですが、珍味というか、妙な美食倶楽部に迷い込んだような読書で、とても楽しかった!

  • 「ミステリともSFとも幻想怪奇小説ともつかない」奇妙な味の物語を18編収めたアンソロジー。バランス良く様々なテイストの作が並んでいます。「肥満翼賛クラブ」は夫を肥満に仕立てる物語。この作品の描写とても奇妙で良いです。

  • 『二壜の調味料』以来、奇妙な味にハマったので。何とも言いようのない味わいがたまらない。本邦初訳や作者の詳細不明など、よく集めてくれたと感謝したい。

    『肥満翼賛クラブ』ずっとおかしな事態になっていて、異世界に迷い込んだかのよう。自分の知らない常識を語られているのが怖い。
    『ディケンズを愛した男』ずっっっとしてた嫌な予感がそのまま当たって絶望する。わざとでしょ!?と疑いたくなる。無限ループって怖くね?
    『お告げ』シャーリイ・ジャクスンにしてはほんわか。くじみたいな展開になったらどうしようかと思った。何とも愛らしいおばあちゃん。
    『アルフレッドの方舟』ラストにドリフのあの音が聞こえる。
    『赤い心臓と青い薔薇』ダントツ怖かったし嫌だった。「どうぞそうではありませんように」と心から思う。
    『古屋敷』短いのに情景が目に浮かぶ。短編映画を見てるみたい。
    『M街七番地の出来事』馬鹿馬鹿しいが故におぞましい。B級ホラーだったら増殖とかしそうで嫌だ。
    『ボルジアの手』ラスト、あいつか!という快感もありつつ、解説で説明しすぎでは。「万歳」と言えばあの人だな、と思った矢先の事だったので。
    『大瀑布』身近にあるかもしれない異世界に思いを馳せていたら、そっち!?突然見知らぬ土地に取り残されたみたいで呆然とする。
    『旅の途中で』馬鹿馬鹿しいその2。特に理由も説明されない。みんなも気をつけてね、と言わんばかり。淡々としすぎていて面白い。
    『街角の書店』切なく悲しく、けれど本好きならやっぱり行ってみたくなる。中学の頃書いた小説とかあったら悶絶しながら読みたい。

    やっぱり、奇妙な味はたまらん。

  • <奇妙な味>の英米短篇が18篇。シャーリイ・ジャクスンの「お告げ」では、どんな邪悪なお話かと身構えていたのに素敵に裏切られました。全体的にくっきりしたオチのある話が多い中で、ケイト・ウィルヘルムの「遭遇」は多義的に開かれていてちょっと別格。読み終えてもずっと気になっている。他には、薄気味悪いロナルド・ダンカン「姉の夫」、ユーモア成分ゼロのフレドリック・ブラウン「古屋敷」、ロジャー・ゼラズニイ「ボルジアの手」などが良かった。

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著者プロフィール

フレドリック・ウィリアム・ブラウンは、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティ生まれの小説家、SF作家、推理作家。ユーモアあふれるショートショート作品で知られている。

フレドリック・ブラウンの作品

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