ほんものの魔法使 (創元推理文庫 F キ 3-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488560027

作品紹介・あらすじ

魔術の都マジェイアにやってきた若者アダムは魔術師名匠組合への加入を希望する。マジェイアでは手品の技術を盗まれないよう人々の出入りを禁じ、厳重な試験によって認定されてはじめて市の一員となれるシステムをとっていた。アダムは少女ジェインを自分の助手とし、試験で大魔術を披露して喝采を浴びるが……寓話的メルヘンを通して想像力の大切さを描く、ギャリコ一流の大人のためのおとぎ話。

感想・レビュー・書評

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  • 魔法の都とよばれる都市マジェイアにストレーン山脈を越えてグリモアからアダムという青年がやってきます。
    アダムはマジェイアの手品師や奇術師が加入する魔術師名匠組合に加入する試験を受けるつもりでした。
    百人の魔術師が受けて合格するのは3名のみ。

    そこでアダムはマジェイアの市長にして魔術師の統領のロベールの娘で11歳のジェインと知り合い仲良くなります。
    ロベールは息子のピーターを後継ぎにしようと可愛がりジェインのことは放っておいていました。
    そしてアダムは無二無双ニニアンという下手くそな魔術師を助けてやります。
    その時の魔術があまりにも鮮やかでロベールはアダムに手品の種を教えて欲しいと言い出します。
    しかしアダムがやっているのは、魔術(手品)ではなく、どうも本物の魔法使いではないかという噂になってきます。

    アダムはジェインとニニアンとものいう犬のモプシーとピクニックに出掛けてジェインに語ります。
    「わからないかいジェイン。われわれのまわりには魔法がみちみちてるってことが。(中略)牝牛はこれをミルクに変えることができるんだ。そのミルクからクリームやバターやチーズができて、われわれがそれを食べたり飲んだりして大きくなるんだ」
    「にわとりは偉大な手品師だよ。割った卵をもとへ戻すことならぼくにもできるがね。しかし卵を一つでも生み出すことはできやしない」
    「それからまだひとつ、のこっているものがある」
    「それはきみの魔法だ」
    「眼をつむってごらん」
    「さあ、どこか他の場所のことを考えるんだ。ーまえに行ったことのある、楽しかったところをいってごらん」
    「海辺だわ!とてもよかった」
    「きみはいま海辺にいる。そうだろう?」
    「そうよ」
    「じゃあ、眼をあけろ!」
    「さあ、もうこうしてここにいる。けれどもたったいま、何百マイルも旅行に行ってきたんだ」
    「何もかもこの中につまっているんだよ」
    アダムは長い指で彼女の額にそっとふれた。

    このシーンが一番、印象的でした。

    以下、ネタバレですが、試験日に天井から金貨を降らせて悪い魔術師の手から逃れてそのままモプシーとともにいなくなってしまったアダム。
    13歳になったジェインはばったり出会ったニニアンとともにアダムを探しにいこうとしますが、ジェインはあのピクニックの日の魔法を思い出しいくのを思いとどまります。

  • 1966年の作品。
    魔術師の街にやってきた青年アダムと、もの言う犬モプシー。展開の面白さにぐいぐい引き込まれました。生き生きした翻訳がまた素晴らしい!

  •  魔法使いのアダムは魔術師の街マジュイヤへ、物言う犬のモプシーと共にやってくる。

     そこにはありとあらゆる魔術師がいるのだが、アダムは本物の魔法使。

     彼がこの町で出会ったジェインとニニアン。二人にもたらした奇跡の物語。

     ああああ! 好きだー! ギャリコ!!

  • 祝復刊!

    Kurahashirei – Hakoniwa
    http://kurahashirei.com/

    ほんものの魔法使 - ポール・ギャリコ/矢川澄子 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488560027

    • まことさん
      猫丸さん。
      ご紹介ありがとうございました。
      すっかりギャリコのファンになってしまいました。
      余韻のある終わりでよかったと思います。
      猫丸さん。
      ご紹介ありがとうございました。
      すっかりギャリコのファンになってしまいました。
      余韻のある終わりでよかったと思います。
      2021/05/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      猫が次に再読したいと思っているギャリコ作品は(「ほんものの魔法使い」も未だだけど)「ズー・ギャング」です、、、

      乱読クライム・...
      まことさん
      猫が次に再読したいと思っているギャリコ作品は(「ほんものの魔法使い」も未だだけど)「ズー・ギャング」です、、、

      乱読クライム・ノヴェル第二十二回 ポール・ギャリコ『ズー・ギャング』(執筆者:小野家由佳) | 翻訳ミステリー大賞シンジケート
      http://honyakumystery.jp/12725
      2021/05/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      宝塚歌劇の舞台公演でも話題! ポール・ギャリコの傑作ファンタジイ『ほんものの魔法使』が大反響につき続々重版決定!|株式会社 東京創元社のプレ...
      宝塚歌劇の舞台公演でも話題! ポール・ギャリコの傑作ファンタジイ『ほんものの魔法使』が大反響につき続々重版決定!|株式会社 東京創元社のプレスリリース
      https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000009527.html
      2021/05/26

  • あたりまえの まほう


  • ちょっと前に図書館で借りて読んだけど、本屋さんで好きなスターさんの帯がついて売られていたのを見て気付いたらレジに持って行っていた…でも買ってよかった何度も読み返したい名作。宝塚がきっかけで再版されたんだとしたらこんなうれしいことはない!
    どこかで、この話は「まれびと殺し」の話だと書かれていたのを読んで、なるほどその通りだなと思いました。手品師の村にやってきたほんものの魔法使のアダム。種も仕掛けもないほんものの魔法を目にした手品師たちは、自分たちの地位が脅かされるとアダムを排除しにかかる。アダムは魔術師の村に多くの富をもたらして消えてしまう。夢のあるファンタジーでもあり、悲しい物語でもある。
    結局チケットは取れなかったけど配信やってくれるからよかった。舞台も楽しみです。

  • かわいくて、あたたかいお話でした。
    ほんものの、魔法、、、、
    世の中は魔法に満ちている。
    そして、私たちはみな、思うことを全てかなえられる。

  • むかしにも一度読んだはずで、ただそのときは「ギャリコらしい甘くて切ない説教くささだな」とさらっと流したのはたぶんジェインの歳によほど近いくらいの年齢だったからなような気がする。
    アダムが「ほんものの魔法」を告げるピクニックのシーンでボロリと泣いてしまったのは、無から有を生む命のようなものがその後の人生でずいぶん好きになったからかもしれない。
    魔法は想像力だ、としばしば言われるのはこの本にもあらわされていたなぁ。

  • おもしろかった!訳に使われている言葉は古いけれど、それが物語全体の不思議な面白さを活かしていた。
    子どもから大人まで楽しめると思う。

    当たり前だと思っていることの不思議さ。「できる」と「やってみせる」の力。

  • 翻訳物は最後まで読めないものが多い中、気くばりのある訳で最後まで読めました。

    アダムと喋る犬モプシーの冒険をもっと読みたいものですが、もう作者はなくなっているのですね。

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著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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