- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488663049
感想・レビュー・書評
-
量子物理学ではないK物理という概念のもと、粒子のスピンが止まると、物質は見えなくなり消滅し、また動き始めると見えるようになる。有から無が生じ、逆に無から有が生じるという理論を作り上げたクリフォード。しかしACREという、国の軍事に関わる研究機関であったため、理論/基礎研究の意味合いが理解されず、実用性がないと一蹴される。しかし、その理論が正しいことが解ってき始めると、政府の役人はコロッと態度を改めるが、クリフォードは不満しか無く、ACREを辞職してしまう。時を同じくして、応用物理分野のオーブと合流し…。
最初の数十ページかは、「ハードな物理学は苦手だわ…」と思ってしまうのだが、訳もいい加減というか、書かれているとおりに単語を訳しているだけということに気づくと、さほど重要でないということがわかり安心する。
そこからは、ブラッド(クリフォード)、オーブとの交互の快進撃が始まるし、始まってしまえば物理学は他所に置かれてしまうので、かなりわかりやすい作品ということになろう。
ラストの盛り上がり部分は、あれだけ盛り上げておいた物理学は影も形もなくなり、見事にエンターテインメント作品として昇華されている。まあでも、この作品の一番成功しているところは、K理論という仮想の物理学をぶちあげ、それをあたかも見たかのように書き上げているところにあり、こういうスタイル(仮想理論系?)というのを見たのが新鮮であった。
奇しくも「ドリーム(Hidden Figures)」の映画を見たところで、能力の有るものが、政府の建前なり州法の建前の元で全く活かされず、影に生きるところからの快進撃、という見方ができたので、非常に面白かった。
こちとら科学者の端くれなもんで、「科学というのは、建築物と違う。立てた計画通りに結果が出るわけではない」みたいな話の部分は身にしみる。
オチは小松左京の「明日泥棒」を思い出したんで、読んでない方はそちらもどうぞ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりにホーガンの作品を読了。やっぱストーリーテリング力がすごいね
-
若き天才科学者が発見する究極の理論。『星を継ぐもの』のホーガンによる、科学者の夢を描いたハードSF。
「科学の力って すげー!」
某ゲームに毎回登場するというセリフを、架空の理論によって巧みに実感させるホーガンの面目躍如たる一作。
組織での軋轢のなかで苦闘する前半から、世界の政治情勢を一変させるという大きな話に広がっていく後半まで、一貫して描かれるのはホーガン流の創作理論と科学者としての矜持を持つキャラクターの魅力。そして「こうきたか……!」と唸らせるセンス・オブ・ワンダーなラスト。創世記ってそういうことか!やっぱホーガンってすげぇな、とハードSFの面白さを再認識。K理論の内容についてのわかるようなわからないような説明も雰囲気で楽しめた。 -
相変わらず科学と科学者が好きなんだなあという平和な一冊。タイトル回収もなかなかのもの。しかし作中が2005年とか2007年であることに気づいたときは面白かった。作中の人物がテレビ電話の前にいることを約束させられたり高官が手書きでメモを取ったりしているのも、書かれた時代を感じさせる。
-
やっぱり、ホーガンはハードSFっぽい要素が強い方が面白い。
-
ホーガンが謎理論書いてるときってすごく楽しそうで筆が乗ってる感じがするし、あのギッシリ感がとても好き。
-
タイトルからすると、新しい世界をつくる機械、新しい世の中を作る機械、という感じがするので機械が主人公なのかと思った。
ところがそうではなく、未来の地球での科学者のお話である。
K理論という、わたしには理解もつかない難しい理論をうちたてた科学者と、それを実現化する装置を完成させた科学者は、その当時の社会情勢が交戦モードになっていることに違和感を覚え、政府機関での研究をやめてしまう。
ある自由機関で彼らの研究を行っていくが、政府が彼らに圧力をかけ始め、結局は政府からお金を引き出させて研究を続けることになる。
最終的に主人公のクリフォード博士が作り上げた装置は、衛星からピンポイントで爆撃できるもののK理論版。それがなぜ「創世記機械」なのか。わたしにはうまく説明できないので(^^;、興味のある方はぜひ読んでみてください。
この作品は1981年に日本で発売されているので、作者が執筆していたのは1970年代であろうと想像されます。つまり、1970年代の世界情勢を色濃く反映されているものになっています。
そう考えて読むと、当時のアメリカ人は「自由主義陣営」対「共産主義陣営」というまさしく「冷戦」が将来はもっと激化して、陣営ごとで戦争が起こると予想していたようです。
中国はインドへ侵攻するし、ソビエトは西と東で分裂して戦っているし、なかなか「未来予想図」として面白いものになっているので、そういう方面として読んでみても面白いですよ。
相変わらず日本はいまいち君として描かれているのが悲しいですが。 -
さすがホーガン
先にホーガンの没落を嘆いたが、今回は面目躍如。
話の筋には大きく影響しない部分だろうが、仮説となる統一場理論の記述が最高にいい。
科学者が政治家に利用されているふりをしながら戦争の終結策を自身が開発した科学機械で実行するという筋そのものよりもこっちが感動もの。
主人公たる科学者は統一場理論を基にして新しい理論を展開する。要約すると、人工