連環宇宙 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488706067

作品紹介・あらすじ

時間封鎖を乗り越え繁栄を謳歌する地球人類。精神科医サンドラが担当する謎めいた少年が持つノートには、一万年後の未来に復活した人々の手記が綴られていた。サンドラは巡査ボースと協力して少年とノートの謎を追うが、不自然な妨害に遭う。一方、手記中の未来世界では、十二個の惑星を連結した〈連環世界〉を旅する移動都市国家が“仮定体”の謎を解き明かすべく、荒れ果てた地球をめざしていた。

《時間封鎖》三部作、遂に完結。

感想・レビュー・書評

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  • ネタバレ注意:面白いよ~最後の壮大さももう目が眩みそう・・・仮定体の機械的ネットワークの集合知という正体も凄いですね。小さな蝶となりヴォックスを食い尽くす場面もいいな~。ヴォックスの人体にノードを埋め込んだネットワーク社会の空恐ろしさも面白かった。悠久の時の流れに思いを馳せることができました。世界の流れに立会いたいという願望が少し満たされる体験ができる本でした。三部作通して傑作だと思う。これで2013年版SFが読みたい海外編ベスト10中9冊読んだ。あとは「心のナイフ」なんだけど・・読んだ方が良いですか?

  • 大期待の三部作完結編。

     最初の「時間封鎖」はかなりはまってしまい、これはすげぇと思ったのだが、続く「無限記憶」は人間ドラマ臭さが鼻につき意気消沈。そこでこの完結編の登場を待望していたわけ。

     結論から言うと、「時間封鎖」の感動はないものの、謎に包まれていた「治世体」のひとつの会社がなされたことが一番の収穫だろう。クラークらが書くオーバーロードやオーバーマインド、最近ではバクスターが書く魁種族とは違ったアプローチだ。かといって、イーガンの世界でもない、なんか悪く言えば中途半端な、うまく言えば絶妙のバランスにたつ知性体像かな。

     本シリーズにおいては、ある意味で知性体は存在しない。単なる科学技術の末裔。自意識を持つことはない。それを知性体とは呼ばないという方向の道筋。その解釈好きだなぁ。大風呂敷っぽく時間のコントロールとかが四次元の行き来などが出てくるのが少し幼稚な感じがするのだが、それでも機械は機械で知性体ではないというスタンスが好きだ。

     長い本だが、1日で久しぶりに読みきったことからも、物語としてはかなり読みやすくテンポも良い。登場人物が少ないから筋が理解しやすいし、傑作とはいえないにしても読んで損はないと思う。

  • 「時間封鎖」から連なる3部作、完結篇。2作目「無限記憶」が少し食い足りない印象でしたが、これは本作につながるちょっと(だいぶ)長めの前日譚だったのですね。仮定体の目的はなんなのかという謎に、一万年後の手記がなぜ現代にあるのかというミステリーが加わり、その全ての答えが示される本書。「時間封鎖同様にワクワクする物語でした。

  • 第三部。リングで結びつけられた星の連合に生きるヴォックスという人口島帝国。すべての人の頸椎にネットワークへのインターフェースが組み込まれた未来世界。その世界に生きるトレイヤは古代人との通訳療法士である。その古代人は第二部で仮定体によって暫定リングに絡めとられ、未来の世界で再生されたタークである。この世界でいよいよ仮定体の姿が明らかになるのだろうか。面白かったなあ!

  • 壮大な時間旅行でした。

  • 時間封鎖三部作の完結編。物語は、スピンが解除された時代の地球と、一万年後の地球で人類が生活するヴォックスという移動都市の二つが交互に組み合わされている。二つの世界を結ぶノートがあり、それが媒体となって二つの世界が融合していく。時間SFのようなストーリー展開だ。一方で人間ドラマもしっかりしており、ロマンチックでもある。最後は壮大な話になるが、無理な展開でもなく、素直に情景を楽しめる。仮定体の正体もとりあえず特定され、これだったら続篇もありえるのではないかと思った。スピンだけにスピンオフ作品が出てもいいだろう。少し期待したい。

  • お腹いっぱいの三部作完結編。まだ続くけど…。

  •  『時間封鎖』三部作の第三部。

     正体不明の知性体である仮定体により時間の流れを減速する障壁で覆われ、40億年後に障壁が解除されるとともに、他の星系の居住可能な惑星に通じるゲートが開かれた地球。『時間封鎖』の結末から30年後、『無限記憶』の舞台よりは前の時代。
     ホームレスの精神障害者を保護する施設の精神科医サンドラのもとに、警官ボースによって連れ込まれた少年オーリン。彼は奇妙な手記を持っていた。それは仮定体の暫定ゲートに飲み込まれ、1万年後に再生させられた男の手記である。そんなとんでもない内容の手記を少年が自分で書いたというのだ。あたかも未来からの通信を受信したかのように。

     1万年後の男とは『無限記憶』の主人公タークである。彼はそこで幾多の惑星がゲートによって連環された世界の中、地球を目指して進む都市国家ヴォックスに保護される。ヴォックスの人々は地球に行けば仮定体と合一できるという宗教のようなものを持っている。そしてまた人々は脳とコンピュータを直接接続するネットワークによる民主主義を実現している。しかし皮質系を結ぶ皮質系民主主義者と辺縁系を結ぶ辺縁系民主主義者とは対立しており、ヴォックスは攻撃を受ける。しかも彼らの目指す地球は環境汚染ですでに人の住めない惑星になっているという話もある。

     他方、サンドラはオーリンの担当をすぐに外されてしまう。サンドラの上司はオーリンの扱いについて何かの利害を持っていてサンドラを遠ざけようとしているように見える。オーリンに対して関心を抱くボースは味方のように思えるが、彼も何か隠された意図を持っているらしい。

     話は1万年を隔てたカットバックで進む。仮定体に翻弄される人類の行く末が大きな物語。1万年のあっちとこっちで、集団と個人の対立が描かれているのが、小さな物語。SF的にはコンピュータに接続された民主主義というディストピアが現代的な問題意識を孕んでいて面白いが、仮定体の正体はおおむね『時間閉鎖』で推測されており、どんでん返しがあるわけではない。終盤向けて話を大きくしていくのも、似たような話があったなあという感じ。1万年を隔てた物語がどのように絡んでいくのかだんだん見えてくるとともに、双方の時間軸で事態が緊迫性をましていくというプロットのうまさで読ませるのではあるが。

  • 時間封鎖・無限記憶 からつづく三部作の最終巻。

    宇宙の創造とは何を意味するものなのか?どのような恩寵なのか?全てを識ることを翹望する末にたどり着いた応えは、正にその裏返しのような羨望でしかなく無限に続く意識の探求でしかありえなかった…。
    しかしそれを知覚できるのは正に1個の知性であり、またそれにちいさな波紋を残せるのも1個の良心なのだろう…納得できる終わり方でした。

  • 仮定体三部作の完結編。とはいえ前二作についてはほとんど覚えてない。でも十分楽しめた。最後のほうの辻褄合わせは別に無くてもよかったかなとは思ったけど。

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