超動く家にて (創元SF文庫 み 2-3)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488747039

感想・レビュー・書評

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  • しょうもない(褒め言葉です)物語から、しっとりする物語まで、幅の広い作品が多く楽しめました。ちょっと期待しすぎた感じもありますが。。

  • 『トランジスタ技術の圧縮』(20240203読了)
    面白かった。不条理でとてもいい。
    一番心にきた不条理は結末なのですが、つまり不条理は人生につきもの、てか人生そのものだ。


    『文学部のこと』(20240206読了)
    わかるようなわからないような、でも大学での学びってこういうものかもしれんよなぁというか。実学系でなければ、こんなものかもねと思う私は、小説書きたいから経済学部に行ったのよー。


    『アニマとエーファ』(20240208読了)
    作者の意図が奈辺にあるかは措いておいて。

    そうなんだよなと思う。
    小説をはじめ、芸術方面の作品というものは、「鏡」なのだと思っている。「鏡」にしかなりえない。

    そんなことを思いつつ、野阿梓の小説に出てきた「存在の鏡」ってどんな概念だったっけと思いを巡らせる。記憶の淵に沈みすぎていてもはや、あやふやになっているのだけど。読んだ当時、納得感にあふれたのだよな。
    記憶として取り出せないけど、私のどこかに埋まっていて、確かに私の骨肉となっている。あの感銘なしにいまの私は存在していないのだ。

    物語を読むというのは、そういうものだ。これが私の信念。あるいは、信仰。


    『今日泥棒』(20240304読了)
    まったく! ぎすぎすした仲のいい家族だなぁ! 終始どうでもいい会話を、どうでもよくつづけ、どうでもよくない食事をとる(家事を担うお母さんリスペクト)。
    ちょい、トゲトゲした気持ちのときに読み始めたけど、心が笑顔を取り戻した。ありがとう。


    『エターナル·レガシー』(20240304読了)
    SFというよりはファンタジーかしらと思わせておいて、硬派なSFかもしれない。
    日進月歩の世界で、技術を日夜研鑽する人間の物語。矜持に痺れた。


    『超動く家にて』(20240306読了)
    いろいろツッコミどころがあるんだけど、というか寧ろツッコミどころばかりなんだけど、軽く読めてよかった。次々に現われる新事実。新事実がドミノ倒しのように、次の新事実を招いてくる。
    それ先に言えって!
    とエラリイに感情移入しながら読みました。
    個人の好みの問題として、叙述トリックは好きじゃないんだけど、楽しかった!
    この流れで最後を日常階層のハッピーエンド(だよね??)に持っていく、その力技。辣腕です。


    『夜間飛行』(20240306読了)
    途中で仕掛けには気づいたんだけど、叙述トリックは(くり返しになるが)好きじゃなくて、その手のミステリは避けてる読者なもので、気づいたタイミングはきっとミステリファンのかたがたからすれば遅いのだろう。
    それはともかく、こんな感じのロマンスは好き。というか異類婚姻譚が好物です。
    オチがお洒落だなと思いました。お洒落かな?


    『弥生の鯨』(20240306読了)
    あまりにも異なる存在だから釣りあわず、釣りあわないからぎりぎり均衡する。そういうカップリングがとても好きなのです。異類婚姻譚もそういう好きのかたちなのですたぶん。
    そんな性癖に響く作品でした。


    『法則』(20240307読了)
    語る言葉がない。足りない。因果応報もまた(この世界を厳然と支配する例の法則ほどでなくとも)法則なのか。
    目には目を。歯には歯を。裏切りには裏切りで、死には死で。
    それは健全。正義だし。罪は裁かれて然るべきだし。でもどこかで「報われない」ことを期待していた自分がいた。愚かなり感情移入。人間の未熟だよなぁ。


    『ゲーマーズ·ゴースト』(20240309読了)
    小ネタににやにやしながら読みました(クリニックの待合だったので多少なりとも不審人物だった自信がある)。
    無敵だった過去よりも、無敵ではなくなった現在のほうが、きっと無敵なのだろうと思いながらの小気味いい読後感。
    未来は晴れている。時々雨が降っても、晴れるのでしょう。


    『犬か猫か?』(20240309読了)
    可愛いお話。
    個人的にKinKi Kidsがシングル「シュレーディンガー」を出してすぐに読んだということで、ちょっと特別な好感がある笑。
    山本弘氏ってスチャラカ冒険隊のGMだったかたかしら? 氏の「アリスへの決別」読んでみたくなりました。


    『スモーク·オン·ザ·ウォーター』(20240314読了)
    宇宙からの異生命体が隕石とともに地球に降り立つ。
    SF物語がそんな事件から始まれば、侵略、脅威、惨事、そんな展開を覚悟する。ところが…。
    すっきりと爽やかな、まさに冒頭の「夏蜜柑の葉の爽やかな香り」が最後まで漂ってくるようだ。いや、最後には煙草の味わい深い香りが相応しいか?(喫煙者だった私としては、断煙後も煙草に悪印象はない)
    人間が活動を地球外にまで拡げようとするならば、こうして入り込む異生命体との遭遇も予測しなくてはならないのだろう。
    或いは逆に、我々が侵入者となるパターンもあろう。そのとき私たちは果たしてこのような平和的で理性的な、よき友となれるのだろうか。いまの国同士の諍いを、それどころか国内での煽りあいを、顧みるだに残念ながら怪しい気がする。


    『エラリー・クイーン数』(20240316読了)
    余興というか悪ふざけというか戯れというか?
    広く認知されているフォーマットにアイディアを落とし込んで自分の創作にしてみたいという気持ちはわかるような気がする。
    たとえば、SCP財団だったり。世界観を共有しルールに則るという意味ではTRPG、特に原作の影響色濃い「クトゥルフの呼び声」とか「エルリック」だとか。
    この「エラリー・クイーン数」は、そこまで濃厚ではないけれど、Wikipediaの形式にパロディ精神を盛り込んだ感じ。
    そのパロディを楽しみながら読みました。


    『かぎ括弧のようなもの』(20240317読了)
    何について書いてあるのか。何が物語られているのか。よくわからないまま、大真面目に語られる謎を大真面目な顔で読む。
    まぁ、言葉ってものはそういうものなのかもしれない。バールのようなものが、真にバールであるのか、そもそも真のバールとは何なのか、わからないもんね?
    日本語でおk
    などと思いつつ拝読、読了。
    日本語ってそもそも何だ。


    『クローム再襲撃』(20240317読了)
    符号としての言葉が、符号としてのみ働いていて、言葉の役割を放棄している。現実を語らない。
    それは言葉なのだろうか。

    試みとしては、まあ面白いんだけど。
    やりすぎはつまらない。

    で、読後にあとがきで作者の解説読んでさ。
    自分の浅薄に気づいたわけですよ。浅薄と勘のよさに。
    私、ムラカミハルキ、嫌いなんだよね笑。
    やりすぎが面白かった!!


    『星間野球』(20240317読了)
    雲行きが怪しかった。
    シンプルに最高でした。

  • 「盤上の敵」と「ヨハネスブルクの天使たち」を読んだことがあって宮内悠介ってガチSFかと思ってたらこんなんも書いてるのね。何となく昔の清水義範っぽさを感じたり。
    「トランジスタ技術の圧縮」一発目にコレ、そう言う本なのねと言う方向性伝わる。「世にも奇妙な物語」でやったって聞いたけど、コレ映像化したところで小説で読むのに加わるところあるんかな?
    「文学部のこと」変な子が排除されずに何となく受け入れられるとか文学部あるあるかと思って読んでたらどこ行くん?いや、オモロいけど。
    「アニマとエーファ」ロシアなり中国なりっぽい革命史小説にロボット作家、要素盛りだくさん。
    「エターナル・レガシー」「盤上の敵」があるから囲碁小説と思って構えて読んでたらキレイに外された。
    「夜間飛行」飛行機の操縦とかナビとかが実は機械ってのはありがちやけど、そこからクルクルひっくり返してくれて気持ちいい。
    「弥生の鯨」これも見た感じの舞台に何を乗せてんの?と言う不思議なシロモノ。
    「クローム再襲撃」元ネタがドンピシャで一番分かりやすい。いや、春樹ネタなんてそれこそ掃いて捨てるほどあるし、その山の中で抜けてるかと言うと微妙と言うか、この枠で抜けるってどうしたらええのか分からんのやけど。
    「星間野球」この本の中で一番ドタバタSF。星新一とか初期の筒井康隆とか懐かしい感じもありつつ。

  • 世にも奇妙な物語で気になったので読んでみた。完全に理解できたのがトラ技と今日泥棒くらいしかなかったし、トラ技すら映像で一回見てたから理解できただけなのかもしれない…なんか全体的に難しく感じた。
    でも読み進めていけばわからないなりにグッとくる部分もあったし文学部、アニマとエーファ、エターナルレガシー、エラリー・クイーン数が特に好きだなと思った。
    作者の文学やミステリーやAIへの愛情みたいなものを漠然と感じられて良かった。
    わからないなりに伝わってくるものがあったし、そこに感慨があったので好きなタイプの小説でした。私が頭良くて尚且つ色んなこと知ってたらもっと楽しめたかもな。
    クローム再襲撃が一番入り込めずに終わったけど春樹のパン屋履修したら何かわかったりするのかな…

  • 「宮内悠介バカSF短編集」とも呼ばれるらしい。その名に恥じぬ内容である。表紙の「メロスは激怒した」にやられて読み始め、一気に読んだ。ただのパスティーシュとも違う。多様なバカさがすばらしい。
    「クローム再襲撃」はタイトルがすべてといっていい。ギブスンにしてムラカミ。80年代が込み上げてくる。
    「トランジスタ技術の圧縮」も懐かしい。トラ技ではないが、私は往年のMacLife誌を圧縮していた。QuickTime技術が発表され、adobeが後にPhotoshopとなるDigitalDarkroomというアプリを出していた頃だ。アイロン派だった。やがて圧縮するまでもない薄さになっていったのは広告メディアの興亡史そのものだったろう。

  • ナンセンスSFが多いが楽しめた。

    表題作や、トランジスタ技術の圧縮など、だから?と言われればそれまでの内容を軽い会話の応酬で面白く見せてくれる。
    ミステリ作品にありがちな間取り図、いいよね。

    長編読んだあとの箸休めとしてオススメ。

  • 最高!
    あとがき もいいね
    あのシリアスな作品を書く人が!と、まんまと思わされました

    クスっと笑えるところが満載で楽しい

  • 面白いSFミステリ。頭のいい人が真剣に巫山戯る。中表示のところのあらすじではない文章からして楽しい。この定型をここに。後世の人はこれもこの時代の文化(深い意味はまったくないが)だと何かで知るのだろうか。

  • 宮内悠介バカSF短編集。(解説より)
    いいえて妙だ。
    あっと驚く展開だったり、バカだなーっと苦笑したり。
    いろんな要素がてんこ盛りでおもしろかった。

  • バカSF系。
    『トランジスタ技術の圧縮』
    『法則』
    『スモーク・オン・ザ・ウオーター』
    『星間野球』
    が面白かった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。小説家。著書に『盤上の夜』『ヨハネルブルグの天使たち』など多数。

「2020年 『最初のテロリスト カラコーゾフ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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